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2025/9 Vol.128

表紙:経年変化してグラデーションに紙焼けをした古紙を材料にコラージュ作品を生み出す作家「余地|yoti」。
古い科学雑誌を素材にして、特集名に着想を受け、つくりおろしています。

デザイン SKG(株)
表紙絵 佐藤 洋美(余地|yoti)

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特集 逆問題解析研究を振り返る

逆問題の数値的手法のパラダイムシフトに向けて

藤原 宏志(京都大学)

逆問題の非適切性

逆問題の数値計算が困難で興味深い理由

逆問題は非破壊検査、非侵襲検査、医用イメージングやリモートセンシングなどに現れる。そこでは通常の偏微分方程式などの設定では解に相当する量を観測し、方程式の成立する領域、係数や初期値を求める問題として定式化される。背景や目的に応じて多様な設定がなされる逆問題であるが、普遍的な性質のひとつに、Hadamardの意味で非適切(ill-posed)(1)であることが挙げられる。数学的には、境界条件などの附帯データおよび解の集合を適当に設定した上で、解が「ただ一つ」「存在」して「附帯データに連続的に依存する」という条件をすべて満たすとき、この問題設定はHadamardの意味で適切(well-posed)と呼ばれる。ここで連続的に依存するとは、附帯データが摂動するときに解の変化が微小であることを意味し、安定であるとも呼ばれる。順問題の多くは Hadamardの意味で適切であり、モデル化や観測値の近似も考慮する安定性に依拠して、数値的手法はさまざまな知見の蓄積に寄与してきた。一方、非適切性は適切性の否定概念であり、特に種々の近似をもちいる数値的アプローチでは、不安定性による近似誤差の増大が顕在化する。標語的に言うと、対応する順問題が安定であればあるほど、その「逆向きの対応」を考える逆問題は、僅かな変化から大きな変化を見出したり、滑らかな情報から特異性を復元する必要があり、より不安定かつ困難となる。そのため逆問題の数値的手法では、安定性と滑らかさを前提とする順問題の手法、例えばスーパーコンピュータによる計算の「量の改善」では現象の所期の性質を近似できるとは限らず、計算手法の「質の改善」が求められる。

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