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2017/6 Vol.120

「オゾンホールの穴をうめて
地球温暖化STOP」
塚本 心汰くん(当時8 歳)
地球温暖化の原因ともなっているオゾンホールをうめて、もとのようなオゾン層を作る機械です。
太陽からのエネルギーをパネルで受けとめて動きます。
機械本体で作ったオゾンを、ホールに流し込みうめていく仕組みです。
地球を守るために、大活躍。

バックナンバー

特集「KAGRA ~時空のさざ波をとらえる~」

KAGRAの防振系

高橋 竜太郎(国立天文台)

防振系の必要性

干渉計を構成する反射鏡は防振する必要がある

KAGRA は3kmの基線長を持つマイケルソン干渉計型の重力波望遠鏡である。テストマスである反射鏡の間隔が、重力波による空間のひずみによって変化するのを検出しようとするものである。マイケルソン干渉計のそれぞれの腕に配置された二つの反射鏡の間を光が往復する時間の差を干渉した光の位相の変化として捉える。地球上で検出しようとしているのは10~1,000Hz の重力波であるが、年数回のイベントが期待できる200Mpc 程度の範囲の連星中性子性合体からの重力波による鏡の変位はスペクトル密度で表して実に 10-20m/Hz1/2 という量である(100Hzの場合)。このような微小変位を検出するためには鏡に充分な防振が必要である。日本の市街地における地面の常微動の大きさδxは周波数fの関数としてだいたい

δxf)~10-7m/Hz1/2( 1Hz/f2     (1)

で表せる。f=100Hz では10-11m/Hz1/2 となるので、重力波を検出するためには実に109以上の防振比が必要である。

重力波検出器における防振の目的は大きく分けて二つある。一つはすでに述べたように、重力波の観測帯域において地面振動による鏡の変位が重力波検出の雑音とならない
ようにすることである。これは鏡を多段振り子によって吊り下げることで実現できる。例えば共振周波数f0 を持つ振り子はquality factor(Q)が十分高い場合、n段で

H(f)~(f0/f2n     (2)

の減衰特性を持つ。H(f)は振り子の最上段の支点から最下段のマスへの伝達関数である。従ってf0=1Hz、f=100Hzでは2段で108 の防振比を得ることができる。

もう一つの目的は鏡のroot mean square (RMS)変位、あるいはRMS 速度を小さくすることである。干渉計を最適な状態に保つためには鏡の間隔を一定に保つ必要がある。これを「干渉計をロックする」と呼んでいる。干渉計をロックするためには鏡をアクチュエータで制御する必要がある。地面振動のRMS 変位は主に0.1~1Hz の成分で決まっていて数μm 程度である。アクチュエータのダイナミックレンジを大きくすれば大きなRMS でもロックできるが、アクチュエータ自身の持つ雑音や、大きな力を鏡に与えることによる非線形な効果によって観測帯域において雑音が導入される。このようなアクチュエータのダイナミックレンジの制限により、鏡のRMS 変位は0.1 μm 以下に抑える必要がある。これを実現する方法として1Hz 以下の共振周波数を持つ低周波振り子を使ったパッシブな方法と、センサ- アクチュエータを使ったアクティブな方法がある。KAGRAでは前者の方法を採用している。この部分の防振を担う装置を特にプレ・アイソレーターと呼ぶ。

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