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2017/6 Vol.120

「オゾンホールの穴をうめて
地球温暖化STOP」
塚本 心汰くん(当時8 歳)
地球温暖化の原因ともなっているオゾンホールをうめて、もとのようなオゾン層を作る機械です。
太陽からのエネルギーをパネルで受けとめて動きます。
機械本体で作ったオゾンを、ホールに流し込みうめていく仕組みです。
地球を守るために、大活躍。

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ほっとカンパニー

(株)加藤製作所 唯一無二の開発力で未来を切り開く建設機械メーカー

日本にはこんなスゴイ会社がある

創業は1895年。加藤製作所(以下、KATO)は120年以上にわたり、さまざまな機械を造り続けてきた。2本柱は、移動式クレーンなどの「荷役機械」と、油圧ショベルなどの「建設機械」。その他、アースドリルなどの「基礎機械」、万能吸引車や道路清掃車等の「環境機械」も手がけ、そのフィールドは実に多岐にわたっている。

長い歴史の中での大きな出来事を尋ねると、開発管理部・部長の安藤正紀は「まさに今です」と答えた。理由は三つ。一つ目は、2016年からASEAN での拠点として、タイ工場の操業が始まったこと。二つ目は、IHIの子会社だったKATO HICOM(旧IHI 建機)をグループ会社に迎え入れてシナジー効果を目指すこと。三つ目が、開発中の新しい技術への期待だという。

KATOの特徴の一つに、オリジナリティを重視する社風がある。新しい技術を生み出す時も、他社との技術提携に依らず、必ず独自の方式を目指すという。「開発に時間が掛かることもありますが、将来的に安定した製品を供給できるのが強み。自社の権利を確立し、オリジナルの製品で付加価値を付けることもできます」と安藤。

国内最大のラフテレーンクレーン

主力のクレーンでは、16年に販売を開始した3軸50t 吊が好調を重ねる中、今年新たにラフテレーンクレーンとしては国内最大の吊上げ荷重を誇る4軸80t 吊もデビュー、「想定以上の受注を受けて、鋭意生産中です」。最近では、エンジンの排出ガス規制に合わせて新機種を開発するケースが多いという。その過程で、新型キャブや液晶クラスターメータなどの開発や、LED 灯火器類や無線式後方確認カメラなどの最新装備も採用してきた。「顧客ニーズでは、コンパクトでありながら高性能の製品が望まれ、省エネ対策や電動化も継続的に要求があります。近年は走行時の安全対策への要望も多く、将来的には自動車同様の走行制御安全機能が求められると考えています」。

4軸のラフテレーンクレーン(SL-850Rf)

マイナス40℃以下の環境下での挑戦

ほぼ9割を移動式クレーンと油圧ショベルが占めるなか、ユニークな製品として挙げられるのが基礎機械と清掃車だ。基礎機械の製造は、東京オリンピックに向けて首都高速道路の建設が急ピッチで進む昭和30年代半ばに始まった。昭和40年代になるとロシア(旧ソビエト連邦)からの引き合いが目立つようになったという。「特に4,300km 以上を結ぶバイカル・アムール鉄道(第二シベリア鉄道)の工事は、困難の連続だったそうです」と、設計第三部・部長の沢井秋司が語る。

バイカル湖の北岸・東岸は岩盤や永久凍土で覆われている。そこに基礎を造るために、白羽の矢が当たったのがKATO だった。冬場はマイナス40℃を下回るところもある土地だ。当初は日本の機械を持って行ったが、油が石鹸のように固まり、ゴムや金属も寒さですぐ脆くなってしまったという。油圧ショベルのバケットに使用していた刃先もすぐ摩耗する。寒さや磨耗に強い刃先を探し、アラスカの方まで足を運んだこともあった。岩盤採掘用のローラビットの材質や形状に改良を重ね、仕様に耐えうるものにしたという。

また、通常は採掘後の“ ズリ” を注水して取り除くが、すぐに水が凍ってしまう彼の地では不可能だ。「そのため、大型スイーパーの吸引装置を使って吸い上げる方法を採りました。おそらくKATO でしかやってないでしょう」(沢井)。日本では想像だにしない状況に、頭をひねってアイデアを出し合い、テストと改良を繰り返した日々だったようだ。基礎工事には油圧ショベル、そしてクレーンも必要になる。「当時、ロシアではクレーン車のこと『KATO』と呼んでいたほどだったそうです」。

当時は、まだ入社していなかった沢井も、諸先輩からロシアでの話をよく聞いたそうだ。多くのトライ&エラーが記された当時の作業日誌をめくりながら目を輝かせる沢井に、技術者としての好奇心と情熱を垣間見た気がした。

 厳寒の地で掘削を行う

改良を重ねたローラビットの形状

規制の多いスノースイーパーもアイデアで打破

もう一つのあまり知られていない機械が、路面清掃車やスノースイーパーなどの清掃車だ。特に後者は飛行場の滑走路で使われるため、さまざまな制限が伴う。例えば除雪用のブラシは、折れにくいものが必須。空港からの仕様に合った中で、できるだけ早く走って広く除雪する機械が求められる。トラックは除雪専用で前輪駆動もできる汎用車。その前方にブラシを取付ける。ブラシでかいた雪を、同時にブロワで飛ばしながら進んでいく。「滑走路の幅は45m から60m。4~ 5台を同時に動かし、短時間で雪を除いていきます」(沢井)。 空港側としては1回の除雪掃幅は可能な限り広い方がいい。ただ、トラック自体は幅2.5m の汎用車。車検との兼ね合いや車の耐荷重の制限もある。工夫を重ねて完成したのが、最大除雪掃幅6mの『S-580C』モデルです。3本のブラシで除雪掃幅を広げた。

「『ブラシの回転数をトラックの速度に合わせて調整し、ブラシの減りを遅らせられないか』という要望をいただいたときは、関係部門と連携して開発しました。今ではほぼ標準装備となっている技術です」。

最大除雪掃幅6mの『S-580C』

顧客の要望は技術者が直接聞く

KATO の理念のひとつに「優秀な製品による社会への貢献」を目指し、「『真にお客様が欲しい機械』を提供する」ことがある。開発を担当する技術者が直接客先を訪ね、要望を聞き、機械に反映していく。

KATO の礎を築いた現社長の祖父は、開発が心底大好きだったという。明治・大正という時代に、新しい技術を学びに海外へも足を運び、学んだことをヒントに新しい技術を開発したという。安藤と沢井、二人の話を聴きながら、その精神が今もKATO にしっかりと根を下ろし、未来に向かって伸びていると感じた。

今回取材に協力いただいた、
沢井さん(左)と安藤さん(右)


株式会社 加藤製作所  所在地 東京都品川区
http://www.kato-works.co.jp/


(取材・文 横田 直子)

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