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2018/2 Vol.121

【表紙の絵】
「エコな飛行機」
佐藤 想士 くん(当時10 歳)

地球から出たよごれた空気を吸う事で空を飛び、きれいな空気に変換して排出します。緑の少ない土地には種をまきます。
皆、この飛行機が大好きです!!

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ほっとカンパニー ~世界で活躍する元気な特別員を紹介~

澁谷工業(株) “無菌”を武器にボトリングシステムで“ダントツ製品”を生む

日本にはこんなすごい会社がある

“ダントツ製品づくり”──この言葉をスローガンに掲げる澁谷工業(株)(以下、シブヤ)は、その言葉通り、他にはない競争力の高い製品を生み続けているメーカーだ。特許は国内外含め、1700件。コア事業は、国内トップシェアを誇るボトリングシステムの製造。手がけるパッケージングプラントは、清涼飲料をはじめ、酒類、調味料、化粧品、薬品など、多岐にわたる。

1931年創業の同社は、53年に2本の一升瓶の内外を同時に洗浄できる「二連式瓶洗機」を開発。これを足がかりに、その2年後にボトリングシステムの市場に参入した。後発だった同社は、1台で複数種類のボトルに対応できる機械で他社にはない強みを発揮。80年頃には国内トップに躍り出た。現在、国内シェアは約60% 。シブヤ本社には、これまで手掛けたボトルの写真がずらりと載った一角があるが、誰もが目にしたことのある大手メーカーの知った製品が数え切れないほど見つかる。

このボトリングシステムの主力は、国内シェア90%以上を誇る無菌充填システム。無菌環境下で充填が行えるメリットは大きい。ボトルの加熱殺菌が不要となるため、製品の熱劣化が避けられ、ボトルそのものも軽量化できる。また、常温での輸送や保管や賞味期限の長期化を可能にし、ボトルデザインの自由度も上がった。93年以来、すでに世界各地で150システム以上の納入実績を持つ。滅菌の方式は大きく二つ。一つは、過酸化水素ボトル滅菌システム、もう一つがEB滅菌システムだ。

「僕たちがやってきたことが、やっと世界に認められた」

過酸化水素方式とは、ボトル内外に過酸化水素を均一に噴霧し、確実に滅菌が行える方法である。薬剤コストを抑え、滅菌条件によっては、水の使用量を削減することもできる。東南アジアや中国、韓国といったアジア圏に市場を広げ、中にはアメリカの食品医薬品局(FDA)認可を取得したシステムもある。海外に広がる契機になったのは、2010年にコストディストラクションを行ったことが大きいと、専務取締役の中俊明は振り返る。当時、アジアにはヨーロッパの充填システムが広がっており、シブヤの製品は価格が高いと言われていた。「そんな状況のなか『今後50年というスパンで見たら、価格を半分にするべきだ』という意見が出てきた。そこで海外向けのプロジェクトを立ち上げたのです」(中)。性能を維持しながら価格を半分に抑えるのは生半可な挑戦ではなく、技術面でのリスクも大きい。海外向けの難しさは、使用環境の違いにもあった。東南アジアは高温多湿。日本よりも菌が繁殖しやすい環境で稼働する滅菌技術が必要になる。ようやく形にできた頃、タイミングよく中国から引き合いが来た。以降は国内でもこのシステムを見たいという話が続き、爆発的に受注が増えていったという。

 

ボトリングシステム

EBボトル滅菌機

容器の形状や液の種類、生産能力に応じて各種タイプの機械がある。

 

電子線を使った新しい無菌充填システムへ

もう一方のEBボトル滅菌システムでは、電子線(Electron Beam)のエネルギーを利用してボトルを滅菌する。2006年に発表された製品だが、すでに2003〜04年から製品化の準備は進めていたという。「僕らの製品を実際に飲料メーカーで使用してもらうには、相当の安全・安心面でのお墨付きがいる。実は当時、あるユーザーさんにこの商品を紹介したのですが、結局は『今ある製品でいい』となってしまった。でも、その現場の方が覚えていてくれたんですね。1年くらい経ってから連絡が来て、開発を応援してくれた。実際に菌を使ってみて、滅菌できることが証明できました」(中)。EBによる滅菌そのものは新しい技術ではない。海外では食肉などの食品加工で使われているが、日本ではジャガイモの発芽防止以外では禁止されているという。「なぜか社長がその話を知っていまして、年頭の会議で『EB滅菌をやりたい』と言ったところ、あれよあれよと発表の日まで決められてしまった(笑)。この技術を飲料に使ったのはうちが初めてです」(中)。当時、EB滅菌はシブヤのみの技術だったが、2017年、ドイツ・ミュンヘンで開かれた国際飲料・液状食品技術専門見本市「ドリンクテック」で、ドイツのメーカーから同様の製品がようやく出てきたという。「『澁谷さんに敵が現れましたね!』なんて言われたけれども、僕はそう思わない。むしろ世界がようやくEBを認めたのだと感じてうれしいです」(中)

滅菌システムに加えて、これまでのボトリングシステムの経験を活かした生産管理システムもシブヤの製品の強みである。特にアジア圏では、ラインを一括して受注することが多く、製造ラインの稼働率向上や保守コスト削減のライン診断サービスも好評である。

第二の基幹事業としての再生医療分野

PETボトル飲料の生産ラインや医薬品の製造ラインなどでシブヤが培った自動化技術やGMP(医薬品等の製造管理基準)対応の無菌化技術は、新たな事業領域の開拓にもつながっている。そのなかでも、ゆくゆくは無菌充填システムに次ぐ基幹事業にすべく取り組んでいるのが、再生医療の分野だ。シブヤが取り組むのは、細胞培養・細胞調整システムの設計・製作。「細胞培養アイソレータ」は、再生医療(細胞培養)用途のために専用設計された世界初のアイソレータシステム。「ロボット細胞培養システム」は、自動化する画期的なシステムだ。現在、再生医療の現場では、熟練の培養士が手作業で培養を行っている。人件費のコストが大きく、人による作業は品質の安定性が約束されない分野。しかし、自動化によりコスト削減と品質の安定化につながることで、これまで以上の本格的普及を可能にできる。

これまで接点のなかった医師や培養士とのコミュニケーションは、新しい世界との出会い。刺激があり、面白いと中は語る。「これまで機械しかやってなかったから、再生医療分野への挑戦は僕にとってのエポックメイキングでもあります」(中)

また、2016年9月には、小型で高出力のテラヘルツ発振器の開発を発表した。これは、これまでの各種レーザー発振器の製作で培った技術を応用して、川瀬 晃道 教授(名古屋大学)との共同研究で開発された。テラヘルツ波とは、光と電波の中間にある電磁波で、物質への透過性と物質の種類を見分ける機能があり、空港のセキュリティゲートでの危険物検査や細胞内水分量の測定などへの活用が期待されている。このテラヘルツ発振器を細胞培養技術に応用できないか模索している。

さらなる“ダントツ製品”の開発に向けて、今後もシブヤは歩みを進める。

(取材・文 横田 直子)

Shibuya Platform Remote Monitoring System

 

細胞培養アイソレータ『CPi』

 

取材にご協力いただいた、中 俊明さん(左)と村中 志有さん(右)


澁谷工業株式会社

所在地 石川県金沢市

www.shibuya.co.jp

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