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2019/2 Vol.122

【表紙の絵】
さがせ!タカラモノグラ
後藤 快 くん(当時7 歳)
タカラモノグラは化石や宝石をみつけるきかいです。
そうじゅうしているぼくは、きょうりゅうの化石やキラキラしている宝石をみつけようとわくわくしています。

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特集 二酸化炭素分離回収と貯留・固定および利用技術

パリ協定下におけるCCS・CCU技術の意義と課題

秋元 圭吾(地球環境産業技術研究機構)

はじめに

気候変動問題は国内外においてその対策の重要性が増してきている。二酸化炭素回収貯留(CCS)や二酸化炭素回収有効利用(CCU)技術(本稿では両者あわせて「CCUS」技術と呼ぶこととする)は気候変動緩和においてキーとなる技術として期待が寄せられている。一方で、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)がCCSに関する特別報告書(SRCCS)を発行したのが2005年であったが、その当時の盛り上がりに比べると、その後の進展は必ずしもスピード感のあるものとはなっていないように見受けられる。

本稿では、気候変動問題の国内外の動向を俯瞰したうえで、それがCCSにどのような影響、期待をもたらすのか、また、それを踏まえたうえで、各種経済的な分析がどのようにCCSを評価しているのか、経済分析と現実社会のギャップはどうして生じているのかなどについて記載する。CCUについても、あわせてその評価について述べる。

国際的な気候変動政策動向

パリ協定の概要

国際連合気候変動枠組条約(UNFCCC)は1994年に発効された。その後、1997年に開催された第3回締約国会議(COP3)において具体的な温室効果ガスの排出削減を定めた京都議定書が採択された(発効は2005年)。京都議定書では先進国(附属書I国)の排出削減を義務化する一方、途上国の排出削減は事実上行われない仕組みであった。2000年代に入った頃から附属書I国の排出は緩やかに低下する傾向となったが、一方で、非附属書I国の排出量が大幅に増大し、結果世界全体の排出量も2000年以降の方がむしろ増大のペースは早まった。世界全体の排出に占める非附属書I国の比率は2014年には3分の2を占めるに至った(1)

そのような中、京都議定書の第1約束期間と呼ばれる2008〜12年以降の国際枠組み・排出削減目標が議論された。2009年にコペンハーゲンで開催されたCOP15は多くの首脳が集まる重要な会議となったが、コペンハーゲン合意は何とか取りまとめたものの、全加盟国の合意とはならず、会議としては事実上決裂した。翌年のCOP16でようやく2020年に向けた取り組みとして、カンクン合意が成立したが不十分な内容となった。そして、2020年以降の新たな枠組みを構築すべく議論を重ね、2015年にパリで開催されたCOP21においてパリ協定が合意され、翌2016年に発効した。

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