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2020/8 Vol.123

表紙の説明:これは、1925年頃に米国のヘンディー社で製造されたベルト掛け段車式普通旋盤の主軸台の換え歯車装置部分である。右下には3段の送り速度群変換装置を装備し、さらに奥には12段のノルトン式送り速度変換装置を装備する。2つのレバー操作で簡単に36段変速できる。
[日本工業大学工業技術博物館]

表紙写真 北原 一宏

バックナンバー

特集 2020年度年次大会

ニューノーマル時代の特別講演

実行委員長 酒井 康彦〔名古屋大学〕

新型コロナウイルス感染症の拡大により、学会活動でも「三密(密閉、密集、密接)」を避け、フィジカルディスタンス(身体的距離)の確保が求められています。このような状況下でどのような特別講演が可能か、実行委員会で検討した結果、特別講演も一般講演と同様に Web での参加を基本として、状況が許せば一部現地開催の方針が出されました。そのため、例年のように大講演室で多数の聴講者の前での講演会はできなくなりましたが、特別講演は年次大会の最も重要な行事ですので、Web配信の形でも大会テーマにふさわしく且つ開催地名古屋にも関連したインパクトのある内容のご講演をお願いできる方が良いということになりました。そのような思いを込めて次の2名の方にご講演をお願いしたところ、快くお引き受けいただきました。

特別講演1の天野浩先生は、2014年に青色LEDの開発研究の業績にてノーベル物理学賞を受賞されました。天野先生は電子工学科のご出身ですが、「20世紀中は困難」といわれておりました青色LED開発過程での機械系技術者の役割についてお話頂けることになりました。また、天野先生は現在名古屋大学未来エレクトロニクス集積研究センター長を務めておられますが、当該研究所での活動や人材教育について「未来」へつながる興味深いお話が伺えるものと思います。

特別講演2の福田敏男先生は、現在、名城大学教授でいらっしゃいますが、永く名古屋大学に所属され、ロボット工学の権威としてまさにグローバル時代にふさわしく世界各地の研究者と共に当該研究分野を牽引してこられました。福田先生は機械工学科のご出身ですが、その研究分野は機械工学の枠を越えて電気・電子、情報他、工学全般にわたっております。そのため現在は、日本人として初の米国電気電子協会(IEEE)会長&COEを務めておられます。福田先生のご研究の姿勢は「ヒューマンネットワーク」というキーワードに反映されているように思います。また、IEEE会長としての国際的視野にたち、私たちが所属する日本機械学会の将来像への提言をしていただけるものと思います。ぜひ皆様も福田先生のご講演に耳を傾けていただければと思います。

コロナ禍は人間の生活様式を一変させる可能性があります。しかしながら「苦境の中に居らば、周身みな鍼砭薬石」の言葉もあります。また日本人古来の教えに「三密(身密、口密、意密)」があります。上記お二人のご講演が私たち日本人のみならず世界の人々のニューノーマル(新常態)の形成のヒントになることを願いつつ、特別講演の開催を楽しみにしているところです。

2020年度年次大会 実行委員長 酒井 康彦


9月15日(火) 特別講演1

「機械と電気のコラボの重要性」

名古屋大学 教授(2014年ノーベル物理学賞)

天野 浩

<概要>自動運転や電気自動車の例を上げるまでもなく、機械と電気の融合は、ものつくり産業構築には欠かせない。私は電気の出身だが、青色LED創成期、その製造技術が構築されたのは、機械の方々の貢献による。本講演では、青色LED製造装置開発において機械出身の方々が果たした役割に加え、現在所属するセンターで取り組んでいる新しい半導体素子を用いた超低消費電力電気自動車、無線で電力を送る走行中給電、および『工学』全体に連携を広げた若手人材育成DIIの取り組みについて紹介する。

<略歴>
1960年 浜松市生まれ
1983年 名古屋大学電子工学科卒業
1985年 名古屋大学大学院博士前期課程修了
1988年 名古屋大学大学院博士後期課程 単位取得満期退学
1988年 名古屋大学工学部助手
1992年 名城大学理工学部講師、准教授
2002年 名城大学理工学部教授
2010年 名古屋大学大学院工学研究科教授
2014年 文化勲章、ノーベル物理学賞
2015年 名古屋大学未来材料・システム研究所 未来エレクトロニクス集積研究センター長・教授

9月15日(火) 特別講演2

「グローバル世界のヒューマンネットワークとロボット研究」

IEEE President 2020 and CEO、
名古屋大学 名誉教授、名城大学理工学部 教授

福田 敏男

<概要>教育・研究だけでなく国際プロジェクトや会議等を推進する際には、自分と相手と、その環境の三位一体が重要である。相手とのヒューマンネットワークを活かしてその環境を醸成することにより、スムーズに事を運ぶことができる。本講演では、グローバル世界においても、普段着のままのヒューマンネットワークを通じることの重要性を具体的な研究事例、交流事例を挙げて紹介する。また、IEEEの国際戦略を紹介し、今後さらに学会が重要と考える思いを述べる。

<略歴>
1948年 富山県生まれ
1971年 早稲田大学理工学部機械工学科卒業
1973年 東京大学大学院工学系研究科修士課程修了
1973年~75年 エール大学大学院留学
1977年 東京大学大学院工学系研究科博士課程修了
1977年 通商産業省工学技術院機械技術研究所研究員
1982年 東京理科大学工学部 講師・助教授
1989年 名古屋大学工学部 教授
1998年~99年 米国電気電子協会(IEEE)ロボティクス・オートメション学会会長(非米国人・史上最年少での就任)
2013年 名城大学理工学部教授、北京理工大学教授、名古屋大学名誉教授
2015年 紫綬褒章受章
2017年 中国科学技術院 外国籍院士会員
2020年 米国電気電子協会(IEEE)会長(アジア人で初の就任)

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