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2024/4 Vol.127

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Myメカライフ

私のモチベーション(暫定)と今後

佐藤 陽介〔(株)東芝〕

この度は、機械学会奨励賞(技術)をいただき、誠に名誉に思います。

今回の受賞は、大気圧非平衡プラズマに関する研究を評価していただいたもので、基礎的な現象の解明、微粒子集塵技術の実用化への貢献、新規応用としてのガス分解技術の基本的な実証を行いました。これらの研究成果は決して私ひとりだけのものではなく、チームで進めて得たものです。一緒に研究を進めたチームメンバーとお世話になった方々に、この場を借りて改めて感謝申し上げます。

私は2013年に就職し、いつの間にか社会人11年目に突入しました。これまで、企業の研究開発センター(いわゆる中央研)で、大気圧・低圧における非平衡プラズマの数値シミュレーションをメインに、必要に応じて少し実験も行ってきました。技術分野としては、学部・修士時代に行っていた超音速・圧縮性流体の数値シミュレーションを基盤として、プラズマ、熱、化学反応、と広がっています。また、さまざまな方に配慮いただき、社会人博士を取得しました。製品としては、主に家庭用エアコン、半導体メモリなどの開発に携わってきました。

ここでは、個人的にモチベーションになると感じていることを二つ述べたいと思います。

一つ目のモチベーションは、目に見える成果を得ることです。自分が関わった研究や技術を、製品やサービス、論文などとして世の中に送り出せたときに達成感を感じます。また、それにより何らかの評価・反応が得られたときに、少しでも社会に貢献できたと実感します。

社会人1年目から3年目にかけて、プラズマを使った微粒子集塵技術の研究開発を行い、家庭用エアコンの製品上市に貢献する機会に恵まれました。カタログや店頭にその製品が並んでいるのを見て、想像していた以上に嬉しかったことを覚えています。私はもともと現象解明などの基礎研究が好きなのですが、応用研究の楽しさも知りました。そのエアコンは実際に購入し、自宅で使用しています。同様の喜びを再び味わうべく、日々の研究開発を行っています。とはいえ、製品化・実用化まで到達できるかどうかには、各個人の努力だけではコントロールできない面があることも事実です。そこだけに固執するのではなく、自分の頑張りしだいで何とかなることの多い、社内での報告書やプレゼン、特許、論文などをしっかりと出すことを身近な目標として設定しています。

二つ目のモチベーションは最近発見したのですが、新しい知識を得ること、何か新しいことができるようになることです。私は旅行が好きで、きれいな景色を見たり、行ったことのない街を探検したりするのが好きなのですが、それに通ずるものがあるかもしれません。

現在、プラズマの研究開発を一時的に離れ、水素関連の研究開発に取り組んでいます。その中で、材料、電気化学などのこれまで扱ってこなかった技術分野の知識を習得していくのは楽しいです。また、実際の製品開発を通して、そもそも基盤技術だと思っていた流体力学についても、まだまだ勉強が必要だと実感しています。慣れた環境から飛び出すには不安な面もありましたが、一歩踏み出したことで、尊敬できる人にも出会うことができ、刺激的な日々を過ごしています。

研究に限らず、成長、達成、挑戦というのがモチベーションのキーワードになっているのかな、と現時点では自分のことを認識しています。また、中堅になり視点が少し変わってきて、若手との接し方、健全な組織・マネジメントとは何か、社会・世の中へどう貢献するか、なども重要なことだと考えるようになりました。

社会人1年目のときにメンターから聞いた話が印象に残っています。そのメンターも先輩から聞いたらしいのですが、「(会社)人生では大きな仕事をするチャンスが3回ある」とのこと。私は、今取り組んでいる水素関連のプロジェクトが、その一つ目だと思っています。順風満帆なことばかりではありませんが、周囲と協力し、少しでも成功に貢献したいと取り組んでいます。世の中には、自分が知らない研究、技術分野、製品などがまだまだたくさんあり、もっといろいろなもの、新しい景色に出会ってみたいと思っています。


<正員>

佐藤 陽介

◎(株)東芝 研究開発センター 知能化システム研究所 機械・システムラボラトリー スペシャリスト
(東芝エネルギーシステムズ(株)へ出向中)

◎専門:数値流体力学、非平衡プラズマシミュレーション

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