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機械工学年鑑2020
-機械工学の最新動向-

12. 機械力学・計測制御

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章内目次


12.1 概論
 12.1.1 学術論文/12.1.2 講演会,講習会など
12.2 制御理論・応用
12.3 評価・診断・メンテナンス
 12.3.1 「自律」と「リモート」〜 under pandemic社会の維持管理/12.3.2 2019年度の動向
12.4 ダンピング
12.5 振動基礎
12.6 ロータダイナミクス
12.7 耐震・免震・制振
 12.7.1 耐震/12.3.2 免震/12.3.2 制振

 


12.1 概論

 機械工学は,研究および教育の面からも,材料力学,熱力学,流体力学,機械力学と呼ばれる「四力学」と制御工学を中心に分野が形成されている.機械力学計測制御部門(以下,本部門)は,その機械力学および制御工学,さらに制御に関連の深い計測分野も加えた分野を,活動の主な基盤としている.本部門の部門登録者数(第1位から第3位まで)は5289名(2020年1月末)で,流体工学部門に次ぐ大きさであり,これらの会員が中心となって,学術的な萌芽性のある基礎研究から実用化に近い応用研究まで,精力的に研究が行われている.その成果は主に,日本機械学会論文集(和文および英文),D&D (Dynamics and Design Conference)などの講演会等を通じて発表され,さらには講習会等では,成果が教材となり,多くの参加者に継承されている.これらの活動の概説を通じて,本部門の研究活動について紹介する.

12.1.1 学術論文

 2019年1月から12月に日本機械学会論文集に掲載された学術論文のうち,「機械力学計測自動制御,ロボティクス,メカトロニクス」のカテゴリーとして掲載された論文および5月に発刊された「機械力学計測制御分野特集号 2019」に掲載された論文(特集号挨拶除く)は合計で88編である.

 これは日本機械学会論文集に掲載された論文総数の28%(88編/総数310編(特集号挨拶除く))にあたる.なお「生体工学,スポーツ工学,人間工学」のカテゴリーおよび「交通・物流」のカテゴリーにも本部門に深く関連する論文はいくつか見られる.これらも含めれば論文数および割合ともにさらに増加する.次に,掲載された論文数および割合の推移について述べる.論文数は,この5年間では144編(2015年),124編(2016年),122編(2017年),108編(2018年),88編(2019年)と推移しており,ここ数年は減少傾向にあり,2019年は100編を大きく下回った.ただし,論文総数に対する割合については31%(2015年),31%(2016年),29%(2017年),30%(2018年)であり,2019年は例年よりも若干下回った同程度である.日本機械学会論文集に対する貢献度という意味では,高い値を維持しているといえる.発表の場が海外で発行される英文雑誌に移る傾向は避けられないが,国内向けの論文の数が単調に減少していることには注意が必要である.

 英文誌Mechanical Engineering JournalのDynamics & Control, Robotics & Mechatronicsカテゴリーに掲載された論文は,2019年は10編であった.特集号を含む本部門に関連するカテゴリーに掲載された論文数の推移は34編(2015年),22編(2016年),43編(2017年),8編(2018年)となっており,2018年よりも2編増えたことは明るい材料であるが,依然として少ない数である.2018年および2019年は本部門に関連する特集号がなかったことも論文数が少なかった原因の一つであるとは思われる.2020年は部門主催の国際会議が開催される予定であり,特集号等により投稿数の増加が期待されるが,それに頼らずに,定常的に,国内外に対して積極的な投稿を促す努力が必要であると考えられる.

12.1.2 講演会,講習会など

 毎年開催される部門講演会「Dynamics and Design Conference」(略称 D&D)は本部門活動の中心である.2019年の同講演会は総合テーマ「地球をめぐる海流のように」のもと,8月27日~30日の4日間にわたり,九州大学伊都キャンパスで開催された.発表件数は特別講演1件を含む305件,参加者数は552名であった.例年通り振動工学データベースフォーラム(v_BASE)も併催された.それ以外にも,国内会議5件,第31回「電磁力関連のダイナミクス」シンポジウム(SEAD31),LIFE2019,第62回自動制御連合講演会,第18回評価・診断に関するシンポジウム,第16回「運動と振動の制御」シンポジウム(MoViC2019),国際会議1件,第12回アジア制御会議(ASCC2019)が部門主催で行われた.

 部門主催の講習会としては,5月27日,28日に本会において「振動モード解析実用入門」(受講者51名),7月4日に東京大学生産技術研究所において「マルチボディシステム運動学の基礎」(受講者16名),5日に「マルチボディシステム動力学の基礎」(受講者14名),10月19日に工学院大学新宿キャンパスにおいて「振動分野の有限要素解析講習会(計算力学技術者2級認定試験対策講習会)」(受講者18名),12月20日に本会において「納得のロータ振動解析:講義+HIL実験」(受講者17名),2020年1月21日,22日に本会において「回転機械の振動」(受講者28名)が行われた.なお,関西地区で行う予定であった「振動分野の有限要素解析講習会(計算力学技術者2級認定試験対策講習会)」が台風の影響で中止になったことは残念であった.これらの講習会は毎年継続して行われているもので,いずれも一定の数の受講者を集めており,本部門に関連する知識や技術の教育,啓発に大きな役割を果たしている.

 講演会および講習会は,例年通り活発に行われており,本部門の活力を示す指標となっている.

〔中野 公彦 東京大学〕

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12.2 制御理論・応用

 制御理論・応用についての研究動向を機械力学・計測制御部門講演会のDynamics and Design Conference(D&D2019)と「運動と振動の制御」シンポジウム(MoViC2019),および,第62回自動制御自動制御連合講演会の発表状況により概観する.D&D2019では「領域7 ダイナミクスと制御」においてオーガナイズドセッション「運動と振動制御」,「マルチボディダイナミクス」,「磁気浮上磁気軸受と関連技術」が企画された.これらのオーガナイズドセッションでは,運動の制御振動制御,アクティブコントロール,運動解析と制御位置決めなどをキーワードとして53件の研究発表があった. MoViC2019では,「宇宙機・宇宙ロボットのダイナミクスと制御」,「フルードパワーの基礎と応用」,「スマート構造システム」,「磁気浮上磁気軸受制御」,「非線形制御理論とその応用」,「自律知能ビークルの運動と制御」,「ロボットおよび人間のダイナミクスと制御」,「生体の計測モデリング制御」のオーガナイズドセッションが企画され,「建設構造物の耐震・免震制振論」,「ビークルの運動と制御」,「ロボティクス」,「同定・推定」,「振動問題と振動制御」,「制御応用・産業応用」の一般セッションがあった.第62回自動制御自動制御連合講演会の幹事学会は日本機械学会であり,「運動と振動制御」,「スマート構造システム」,「磁気浮上磁気軸受モータ関連技術」などのオーガナイズドセッションが企画された.

 日本機械学会論文集では,クライオポンプによって誘起される低周波数振動を能動型動吸振器により低減させる制御の提案(1),空気圧シリンダにおいて排気側のバルブ開度操作と圧力フィードバック制御により圧力応答および位置決め応答の改善(2)入力の極性によって入力無駄時間が異なる系に対して制御入力に極性制約を有する2入力システムとみなしてモデル予測制御を適用する方法(3),ホバークラフトを制御対象の例として制御自由度よりも操作量が一つ多い制御対象運動制御において複数の二次計画法を含む最適化問題の定式化により実時間最適化が可能な制御配分手法の提案(4)などの論文が発表されている.Mechanical Engineering Journalでは,モデル予測制御において同時摂動確率近似を用いた評価関数の重み係数決定方法についての研究がある(5)

 制御理論・応用に関する国際会議であるAsian Control Conference(ASCC2019) は,2019年6月9日~12日に北九州国際会議場において,アジア制御協会(ACA)と日本機械学会が主催で開催された.ASCCは1994年に第1回会議が日本で開催されてから25年ぶりに日本開催となった.ASCC2019では「Modeling, Control and Economical Methods for Distributed Energy Management」「Case Studies on Motion and Vibration Control」「Novel Controllers for Mechanical Systems」「Recent Advances on Control Technologies towards Realizing Society 5.0」などのセッションがあり,機械系の運動と振動制御から分散型エネルギー管理やSociety 5.0までの幅広いテーマで研究発表があった.また,ワークショップとして「Real-Time Algorithms and Applications of Nonlinear Model Predictive Control」と「Reinforcement Learning and Control」が企画され,モデル予測制御や学習を用いた制御への関心の高さがうかがえる.2019年に掲載された国外の論文においても,モデル予測制御に関する研究では,非線形モデル予測制御においてニュートン法と等価なbackward correction methodにより並列化高速計算を実現する方法(6)や自律型無人潜水機(AUV)の経路追従問題に多目的モデル予測制御を適用した研究(7)などがあり,学習を用いた制御に関する研究では,強化学習を利用した柔軟マニピュレータ制御(8)や永久磁石同期モータの角度追従において繰り返し学習制御法を利用する研究(9)などがある.

〔成川 輝真 埼玉大学〕

参考文献

(1)水野 毅, 飯田 隆仁, 石野 裕二, 髙﨑 正也, 原 正之, 山口 大介, 加納 竹志,アクティブ動吸振器を利用したクライオポンプを対象とする振動制御,日本機械学会論文集, Vol. 85, No. 873 (2019), DOI:10.1299/transjsme.18-00461
(2)石井 浩貴, 涌井 伸二,空圧ステージを駆動する空気圧シリンダの圧力応答を考慮した制御系の適用,日本機械学会論文集, Vol. 85, No. 874 (2019), DOI:10.1299/transjsme.18-00335
(3)Eunji HONG, 種村 昌也, 熊田 賢, 千田 有一,入力極性に制約を有する系のモデル予測制御と空圧式除振台への応用,日本機械学会論文集, Vol. 85, No. 876 (2019), DOI:10.1299/transjsme.18-00471
(4)今村 直樹, 阪口 亮, 西山 岳宏,複数の二次計画法による制御配分問題の定式化と運動制御への応用,日本機械学会論文集, Vol. 85, No. 880 (2019), DOI:10.1299/transjsme.19-00269
(5)Cho, S., Otsuki, M. and Kubota, T.,A new weight selection algorithm using SPSA for model predictive control,Mechanical Engineering Journal, Vol. 6, No. 5 (2019), DOI:10.1299/mej.19-00053
(6)Deng, H. and Ohtsuka, T., A parallel Newton-type method for nonlinear model predictive control, Automatica, Vol.109 (2019), DOI:10.1016/j.automatica.2019.108560
(7)Shen, C., Shi, Y. and Buckham, B., Path-following control of an AUV: A multiobjective model predictive control approach, IEEE Transactions on Control Systems Technology, Vol.27, No.3 (2019), DOI:10.1109/TCST.2018.2789440
(8)Thuruthel, T. G., Falotico, E., Renda, F. and Laschi, C., Model-based reinforcement learning for closed-loop dynamic control of soft robotic manipulators, IEEE Transactions on Robotics, Vol.35, No.1 (2019), DOI:10.1109/TRO.2018.2878318
(9)Mandra, S., Galkowski, K., Rogers, E., Rauh, A. and Aschemann, H., Performance-enhanced robust iterative learning control with experimental application to PMSM position tracking, IEEE Transactions on Control Systems Technology, Vol.27, No.4 (2019), DOI:10.1109/TCST.2018.2816906

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12.3 評価・診断・メンテナンス

12.3.1 「自律」と「リモート」〜 under pandemic社会の維持管理

 少子化による労働人口の急激な減少により,わが国の社会を支えるインフラ構造物や産業設備の持続的な管理保全が社会的課題として認識されて久しい.これに加えて,奇しくもこの原稿の執筆時点(2020年4月初旬)において全世界で猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は,われわれが作り上げてきた先進的な社会の基盤維持に対する労働集約的・属人的なアプローチの脆弱性を直接的な形で露呈させつつある.2020年度以降,長ければ数年間は,このパンデミックという環境下でいわゆるsocial distancingを行いながら産業を含む社会基盤システムを維持していかなければならない.そこでは「自律」であることと「リモート」であることが大きな意味を持つ.自律であることとはシステムの維持管理に対する労働集約的・属人的なアプローチからの脱却を意味する.リモートであることとは,システムの維持管理に際して人の移動を要求しないということである.

 幸いなことにこの数年で, IoTデバイスによる生産設備のリアルタイム監視制御に基づく生産の抜本的効率化が国力を左右する最重要課題の一つであるとの認識が共有されており,情報通信技術の観点からも5G(第5世代移動通信システム)への移行がスタートするタイミングである.これまで機械力学分野においては,主にダイナミクスに基づく異常・損傷の検出や状態監視,評価・予測技術を基盤として,センシング技術,IT,AI,ロボット技術との融合領域が研究されてきたが,2020年度はこれらを基盤技術としつつ,under pandemic社会における維持管理システムへの刷新に向けて課題の再定義を行い,技術や管理体制のscrap and buildを迅速に行う必要があると考えられる.

12.3.2 2019年度の動向

 2019年度における当該分野の動向を主に機械力学分野の観点から振り返る.国内ではまず2019年8月のD&D2019でのOS「システムのモニタリング診断」において11件の研究発表があった.また,2019年12月には第18回評価・診断に関するシンポジウムが開催され,モデリング,センシング,IoT,超音波,トライボロジー,評価・診断,状態監視,ロボットなどをキーワードとする32件の研究発表があった.同シンポジウムでは例年1/3〜1/4が企業からの発表であり,この分野における産業界の関心の継続的な高さを反映している.また,2016年頃からの傾向として,IoTデバイスや機械学習に関連する発表が増加してきており,現場の知見とデータ分析・ITを繋ぐ取り組みが進んでいることが伺えた.

 研究会活動では,A-TS 10-39「診断・メンテナンス技術に関する研究会」を中心に,他学会(日本設備管理学会「最新設備診断技術の実用性に関する研究会」,日本トライボロジー学会「メンテナンス・トライボロジー研究会」)との連携を図った活動(メンテナンス分野合同研究会や上記シンポジウムの共催)が行われた.2019年のメンテナンス分野合同研究会は10月に開催され,診断・保守に関わる要素技術に加えてAI, IoTや企業での実践例までを含めた幅広い分野をカバーする9件の講演を行い,多数の参加者を得た.

 国外では,機械システムの診断と設備管理分野に関してCOMADEM (Condition Monitoring and Diagnostic Engineering Management)(1)が英国で行われ,9件の基調講演,131件の口頭発表,23件のポスター発表があった.その他,WCEAM (World Congress on Engineering Asset Management) (2)がインフラ構造物のレジリエンス分野および信頼性工学分野の国際会議との合同開催で,2019 WCRRAM (2019 World Congress on Reliability, Resilience and Asset Management)と銘打ってシンガポールで開催された.2019年4月にはIndustrie4.0のお膝元であるHANNOVER MESSE 2019が開催され,デジタルツイン,エッジAI, 5G, ロボットについて多くの技術展示があり,情報を扱うITと現場機器を扱うOT (Operational Technology)の境界が薄れ今後一体化していく未来が展望された(3).なお,2020年の同展示会はCOVID-19の世界的流行のために中止されている.スマート構造関連では,当分野最大級の国際会議であるSPIE SS/NDE (Smart Structures and Materials & Nondestructive Evaluation and Health Monitoring)が例年春に開催され,構造ヘルスモニタリングおよび非破壊評価に関する研究発表が多く行われるが,2020年はCOVID-19禍のために中止が決定され,同年4月下旬にオンラインフォーラムとして開催予定となっている(原稿執筆時点).ASMEのSMASIS (Conference on Smart Materials, Adaptive Structures and Intelligent Systems)(4)では,八つのシンポジウムのうちの一つが構造ヘルスモニタリングに割り当てられており,10件の発表があった.過去2年に比べると発表数が半分以下に減少しているが,これはこの会議で主に議論されるシーズ指向のトピックから関心が実応用にシフトしていることの表れと考えられる.構造ヘルスモニタリングに特化した国際会議としては,Stanford大学でのIWSHM (International Workshop on Structural Health Monitoring)(5) が隔年で開催されている.これらの国際会議は機械・航空宇宙・建築・土木など多様な分野における産学官の研究者が一堂に会する領域横断的で非常にアクティブな場となっているが,近年わが国からの参画が減少傾向にあることが懸念される.

 冒頭にも述べたように,under pandemicの時代においては,「自律」と「リモート」をキーワードとして,従来の価値基準にとらわれることなく課題の再定義を行い,ドラスティックな変革を伴う施策の実践が求められる.しかし同時に,これは労働人口の急減を目前にしたわが国において,いずれ達成しなければならなかった変革である.評価・診断・メンテナンス分野は学際領域であり,機械工学分野に加えて電子情報通信分野やAI,経営などを包摂した連携の場を共有しつつ,迅速なアクションに繋げていく必要がある.

〔増田 新 京都工芸繊維大学〕

参考文献

(1)Proceedings of the 32th International Congress on Condition Monitoring and Diagnostic Engineering (COMADEM 2017), Huddersfield, UK, (2019-9).
(2)Proceedings of the 2019 World Congress on Reliability, Resilience and Asset Management (2019 WCRRAM), Singapore, (2019-7).
(3)川合忠雄, 続 IoT 時代における設備診断, 潤滑経済, No.652 (2019), pp. 2-6.
(4)Proceedings of ASME 2019 Conference on Smart Materials, Adaptive Structures and Intelligent Systems (SMASIS 2019), Louisville, KY, USA, (2019-9).
(5)Proceedings of the 12th International Workshop on Structural Health Monitoring (IWSHM 2019), Stanford, CA, USA, (2019-9).

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12.4 ダンピング

 本会論文集においてダンピングに関連した論文は16件であった.この中で,動吸振器に関する論文が6件で,磁気減衰を利用した転動振り子動吸振器の開発(1)や可変剛性型動吸振器に関する検討(2)動吸振器によるモータ制振(3)などの応用研究の割合が多かった.次に除振・防振に関する論文は5件あり,免震装置固有振動を変化させる方法について検討した研究(4)振動伝達を抑制する支持方式の提案(5)などがあった.他にも電磁力を用いた衝撃吸収ダンパの開発(6)など新たなダンピング機構の開発や新材料のダンピングメカニズムの解析など,多岐に渡る研究,開発が発表されている.当分野の特集号としてVol. 85,No. 873に8件が掲載され,このうちダンピングに関連したものは2件であった.本部門の研究発表講演会については,2019年8月に開催されたD&D2019(九州大学)では,領域2の耐震・免振・制振・ダンピングにおいて38件の講演申込があり,そのうち18件がダンピングで,講演件数は例年並みであった.この中で耐震・免震制振と関連の深い講演は領域内でジョイントセッションとし,動吸振器制振防振・除振のトピックを設け,19件の講演があった(7).また,2019年9月に開催された年次大会においては,耐震・免震制振のセッションで30件の講演があり,減衰調整機構を有する空気ばね(8),電磁抵抗型ダンパ(9)に関する講演などがあった.

 海外の動向としては,Transactions of ASME,Journal of Vibration and Acousticsにおいて,ダンピングに関連する論文は14件あり,衝撃ダンパ慣性ダンパ,電磁シャントダンパなどの各種ダンパの応用研究が多く見られた.また,Transactions of ASME,Journal of Dynamic Systems, Measurement, and Controlにおいては,除振技術に関する論文が10件あった.Journal of Sound and Vibrationにおいては,28件の研究があり,特に粒状体ダンパやAcoustic black holeに関する論文が多く見られた.また,バイオミメティクスに基づく油圧ダンパの試作や軽量多孔質弾性材料の構造減衰など,分野間の融合や新材料の解析などダンピング技術に関する新たな試みも見られた.459巻には粒状体ダンパに関するレビュー記事(10)が掲載されており,当該ダンパの設計例,モデリング,定式化,実験例などがまとめられている.国際会議は,隔年で開催されるAsia Pacific Vibration Conferenceが2019年11月にオーストラリア,シドニーで開催された.本会議ではダンピングに関連して28件の発表があり,中でも防振・除振に関する発表が11件,特にQuasi-Zero-Stiffnessを用いた振動絶縁に関する発表が6件と多くみられた.

 本会の部門研究会として,ダンピング研究会(A-TS10-19)が設置されている.この研究会は,大学および企業の研究者による講演や研究報告を行っており,技術者間の研究交流が図られている.ダンピングは振動低減,エネルギー吸収など応用例や適用例が非常に多岐に渡る分野であり,新たな技術開発には分野を超えた連携が大きく貢献しているものも多い.今後もこのような分野間の連携,また新たな分野の開拓が進むものと予想される.

〔佐々木 卓実 北九州市立大学〕

参考文献

(1)伊東亮,相田安彦,磁気減衰を利用した転動振り子型動吸振器の開発,日本機械学会論文集,Vol.85,No.869 (2019),pp.1-16.
DOI: 10.1299/transjsme.18-00195
(2)河合竜平,小松崎俊彦,可変剛性型動吸振器の同調アルゴリズム検討,日本機械学会論文集,Vol.85,No.878 (2019),pp.1-13.
DOI: 10.1299/transjsme.19-00231
(3)南克樹,片原田浩之,吉武裕,串崎祐樹,森山皓太,山崎豪,動吸振器によるインバータモータの制振,日本機械学会論文集,Vol.85,No.872 (2019),pp.1-13.
DOI: 10.1299/transjsme.18-00307
(4)河村庄造,野村幸一,伊勢智彦,松原真己,長周期地震動に対応した免震装置の提案に関する研究(追加ばねによって免震装置の固有振動数を変化させる方法),日本機械学会論文集,Vol.85,No.871 (2019),pp.1-13.
DOI: 10.1299/transjsme.18-00336
(5)稲垣耕,盆子原康博,近藤孝広,圧縮機から冷蔵庫への振動伝達を抑制する五点支持方式の提案,日本機械学会論文集,Vol.85,No.876 (2019),pp.1-12.
DOI: 10.1299/transjsme.19-00006
(6)河田雅至,山田啓介,原進,宇津野秀夫,倉田純一,村上佳広,電磁力を用いた運動量交換型衝撃吸収ダンパによる衝撃振動の低減,日本機械学会論文集,Vol.85,No.872 (2019),pp.1-14.
DOI: 10.1299/transjsme.18-00485
(7)下地一真,佐伯暢人,粒状体の撹拌を用いた減衰に関する研究,日本機械学会D&D2019講演論文集,No.238,(2019)
DOI: 10.1299/jsmedmc.2019.238
(8)山本浩,根本英男,成川輝真,減衰調整機構を有する空気ばねの動特性,日本機械学会2019年度年次大会,J10313,(2019)
DOI: 10.1299/jsmemecj.2019.J10313
(9)中島遼,松岡太一,電磁抵抗型ダンパの発電機励振による立ち上がり時間改善,日本機械学会2019年度年次大会,J10320,(2019)
DOI: 10.1299/jsmemecj.2019.J10320P
(10)Louis Gagnon, Marco Morandini, Gian Luca Ghiringhelli, A review of particle damping modeling and testing, Journal of Sound and Vibration, Vol.459, pp. 1-37, (2019)

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12.5 振動基礎

 振動基礎は,振動解析,実験,振動利用,振動抑制,安定性・安定化,同定振動診断非線形振動カオス自励振動係数励振不規則振動,衝撃現象・衝突振動連続体振動,パターン形成,セルオートマトンといった,振動学の基礎を網羅した研究分野である.九州大学で開催されたD&D2019講演会では,「振動基礎」のほか,相互に関連する「機械・構造物における非線形振動とその応用」と「板・シェル構造の解析・設計の高度化」のOSと合同で「領域1:解析・設計の高度化と新展開」が設けられ,67件の講演があった.これらの講演から振動基礎が主体となるサブセッションが9セッション,機械・構造物における非線形振動振動基礎の合同セッションが2セッション編成され,活発な議論が行われた.また,本部門所属の振動基礎研究会(A-TS 10-12)も毎年開催されており,2019年も,海外文献購読,在外研究報告や研究・教育に関する情報交換企画など有意義な情報交換がなされた.

 振動基礎に関連する2019年の論文として,日本機械学会論文集では,微小減衰を持つ系に対するモード同定(1),2点吊り振子の主共振解析(2),鉄道レールにおけるパターン形成(3)(4),真直はりと曲がりはりで構成されるフレームを持つ平板の振動解析(5)動吸振器として利用できるように構造を変更して振動低減する手法(6)や多点弾性結合による連続体連成振動共振応答の抑制(7),および実際の機械への応用として,磁気浮上モータ共振回避(8)や冷蔵庫用圧縮機の振動伝達の抑制(9)が掲載されている.また,Journal of Sound and Vibrationでは主に振動基礎に関連するカテゴリーとして,1) Nonlinear aspects of sound and vibration, 2) Analytical methods and modeling for linear vibration and acoustics, 3) Signal processing for sound and vibration applications, including source/system identification and active controlの3つがあり,それぞれに対して 2019 年に 1) 86本,2) 54本,3) 39本の論文が掲載されている.これらの論文では多岐に渡る問題の解析や実験,シミュレーションが行われている一方で,調和バランス法(10)(11),平均法(12),Floquetの理論と標準形の方法(13),非線形ノーマルモード(14)といった基本的な解析法の研究も行われている.

 以上のように,様々な問題に対する研究が行われているのでトレンドを挙げるのは困難であるが,研究活動は活発であり,振動現象の基礎理論として振動基礎は今後も重要な研究分野であると考えられる.

〔田村 晋司 島根大学〕

参考文献

(1)松原真己, 田尻大樹, 竹原伸輔, 河村庄造, 周波数応答関数の実部と虚部を利用した直線フィットによるモード同定法 (重み付き最小二乗法による同定精度改善), 日本機械学会論文集, Vol.85, No.873 (2019), DOI: 10.1299/transjsme.18-00433.
(2)舟田敏雄, 2点吊り振子の3つの振動modeの非線形解析(1) (非線形振動問題の定式化と1自由度慣性力型非線形強制減衰振動系の主共振解析), 日本機械学会論文集, Vol.85, No.873 (2019), DOI: 10.1299/transjsme.18-00467.
(3)網干光雄, 田中博文, レール波状摩耗の成長機構に関する理論解析, 日本機械学会論文集, Vol.85, No.875 (2019), DOI: 10.1299/transjsme.18-00426.
(4)網干光雄, 田中博文, レール波状摩耗の進展過程に関するシミュレーション解析, 日本機械学会論文集, Vol.85, No.878 (2019), DOI: 10.1299/transjsme.19-00051.
(5)富岡隆弘, 瀧上唯夫, 秋山裕喜, 相田健一郎, 曲率を有する平板状構造物の面外・面内連成振動の簡易解析法 (真直はりと曲がりはりの接続系としての振動解析法の提案), 日本機械学会論文集, Vol.85, No.875 (2019), DOI: 10.1299/transjsme.18-00453.
(6)松原真己, 森川行生, 伊勢智彦, 河村庄造, 古屋耕平, 相互モード運動エネルギー分布に基づく構造変更部位特定と固有振動数の同調による振動低減効果, 日本機械学会論文集, Vol.85, No.875 (2019), DOI: 10.1299/transjsme.19-00062.
(7)駒田匡史, 松村雄一, 城戸一郎, 中津川英治, 結合ばねを介して連成する振動系の共振応答の抑制法, 日本機械学会論文集, Vol.85, No.879 (2019), DOI: 10.1299/transjsme.19-00171.
(8)森洸太郎, 朝間淳一,大岩孝彰, 鳥居 孝夫, 2自由度制御形磁気浮上モータにおけるd軸電流を用いた共振回避法, 日本機械学会論文集, Vol.85, No.872 (2019), DOI: 10.1299/transjsme.18-00417.
(9)稲垣耕, 盆子原康博, 近藤孝広, 圧縮機から冷蔵庫への振動伝達を抑制する五点支持方式の提案, 日本機械学会論文集, Vol.85, No. 876 (2019), DOI: 10.1299/transjsme.19-00006.
(10)F. Fontanela, A. Grolet, L. Salles and N. Hoffmann, Computation of quasi-periodic localised vibrations in nonlinear cyclic and symmetric structures using harmonic balance methods, Journal of Sound and Vibration, Vol.438 (2019), pp.54-65.
(11)L. Chen, B. Basu and S. R. K. Nielsen, Nonlinear periodic response analysis of mooring cables using harmonic balance method, Journal of Sound and Vibration, Vol.438 (2019), pp.402-418.
(12)V. S. Aslanov, Stability of a pendulum with a moving mass: The averaging method, Journal of Sound and Vibration, Vol.445 (2019), pp.261-269.
(13)D. J. G. Maldonado, A. Karev, P. Hagedorn, T. G. Ritto and R. Sampaio, Analysis of a rotordynamic system with anisotropy and nonlinearity using the Floquet theory and the method of normal forms, Journal of Sound and Vibration, Vol.453 (2019), pp.201-213.
(14)D. A. Ehrhardt, T. L. Hill and S. A. Neild, Experimentally measuring an isolated branch of Nonlinear normal modes, Journal of Sound and Vibration, Vol.457 (2019), pp.213-226.

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12.6 ロータダイナミクス

 国内では,2019年5月の電磁力関連のダイナミクスシンポジウム(SEAD31)で13件,8月のD&D2019(九州大)においてOS「ロータダイナミクス」を中心に計10件の研究が報告された. 11月に開催された国際ガスタービン会議(IGTC2019東京)では計18件の研究が発表された.また,日本機械学会論文集には,英文ジャーナルの3件を含めて,合計10件の論文が掲載された.

 海外では,6月にTurbo Expo 2019(フェニックス)で113件,8月にASME IDETC/CIE2019(アナハイム)で9件の研究が発表された.ASMEジャーナルでは,Journal of Vibration and Acoustics, Journal of Engineering for Gas Turbines and Power, Journal of Turbomachinery に計85件の論文が掲載された.また,12月にはロータダイナミクスセミナー研究会(A-TS 10-04)で36件の論文抄録を作成し,討論会が行われた.ロータダイナミクスの論文は,シールや軸受を含めたロータ振動に関連する論文と,フラッタなども含めた翼振動に関連する論文とに大別できる.以下に,関連技術ごとに,概要を述べる.

 ロータ振動に関しては,様々な力学的特性を有するロータを適切な手法でモデル化し,振動特性を解析している論文が多い.具体的には,モード合成法を利用した翼・軸連成ねじり振動の解析(1)非対称ロータ安定性解析(2),異方性支持を有するクラックロータの有限要素解析(3),スピンドルボルトのコンタクト剛性を考慮したロータ振動解析や最適化(4)-(6),ファンブレード飛散時の非線形振動解析(7),ベベルギアで結合された軸系の振動解析(8)などが報告された.

 軸受に関しては,数値解析を利用して動特性の解析を行い実験と比較した論文,あるいは巧妙な計測手法を利用して軸受の特性を調査した論文が多い.具体的には,円弧バネ型ダンパロータダイナミクス係数の実験的同定(9),コンタクト部分の非線形性(摩擦や隙間)を考慮したバンプフォイル軸受の解析(10),油膜への気泡の混入を考慮したスクィーズフィルムダンパ軸受の解析(11)(12),ティルティングパッド軸受の動特性周波数依存性の解析(13),パッドやライナーの材料がティルティングパッド軸受の特性に及ぼす影響の解析(14)などが報告された.

 シールに関しては,バルクフロー理論やCFDを利用して様々なシールの動特性を解析し実験と比較した論文,あるいはシールの動特性に及ぼす二層流などの影響を実験的に調査した論文が多い.具体的には,部分ネジ溝付き液膜環状シールの動特性の解析と実験(15),バルクフロー理論によるポケットダンパシールの動特性の解析と実験(16)(17),遠心圧縮機のラビリンスシールの動特性に及ぼす偏心の影響の解析と実験(18)(19),ポンプ用アニュラーシールの動特性に及ぼす予旋回流の影響の実験的検証(20),ハニカムシールの動特性に及ぼす二層流の影響の実験的検証(21)(22)などが報告された.この他にも,プレートシール(23),溝付きシール(24)(25),ホールパターンシール(26)(27)など,様々なシールの動特性の解析結果や計測結果が報告された.

 振動の研究は,ミスチューン現象の解析,ダンパ翼などの非線形振動の解析,非定常流体力による応答解析(フラッタを含む)に大別できる.ミスチューン現象の解析モデルは年々緻密になっており,低次元モデルを利用したターボチャージャ用動翼のミスチューン現象の解析(28),大規模な幾何学的ミスチューンを考慮した解析(29),異方性翼(シュラウド翼)に対して結晶方向の変動と摩擦減衰の変動を同時に考慮した解析(30)(31)加振試験結果からミスチューンを同定する方法(32),インテンショナルミスチューンによる応答低減(33)などが報告された.非線形振動の解析では従来通り摩擦減衰や大変形解析を取り扱った論文が多く,大規模な幾何学的非線形性を取り扱った解析(34)(35),プラットフォーム型ダンパ翼の最適設計(36)(37)などが報告された.非定常流体力による応答解析では,CFDとFEM(またはその低次元モデル)を利用して共振応答や空力減衰を解析した結果(38)-(40)や蒸気の非平衡凝縮現象を考慮した安定性解析(41)などが報告された.特に文献(40)では,摩擦減衰を有する翼構造ではフラッタ発生時に複数のモードのリミットサイクルが生じることを大規模なモデルで初めて検証している.

 ロータダイナミクスの研究テーマは,最新の回転機械の開発に直接結びつく研究テーマが多く,今後も機械力学分野の重要な研究になると思われる.

〔金子 康智 龍谷大学〕

参考文献

(1)中村弘毅,山崎徹,笠原和則,長沼寛樹,松下修己,縦振動連成を加味した翼軸ねじり振動計算の高精度化,日本機械学会論文集, Vol. 85, No. 879(2019), DOI:10.1299/transjsme.18-00500.
(2)Zheng, Z, Xie, Y. and Zhang, D., Reduced-order modeling for stability and steady-state response analysis of asymmetric rotor using three-dimensional finite element model, Transactions of the ASME, Journal of Engineering for Gas Turbines and Power, Vol. 141(2019), pp.101001-1–9.
(3)Yao, Q., Inoue, T. and Yabui, S., Finite element analysis and experimental validation of transfer function of rotating shaft system with both an open crack and anisotropic support stiffness, Transactions of the ASME, Journal of Vibration and Acoustics, Vol. 141(2019), pp.021002-1–15.
(4)Zhao, B. and Li, Y. P., Dynamic analysis and optimization on assembly parameters of rod fastening rotor system with manufacturing tolerances, Proceedings of ASME Turbo Expo 2019 (2019), Paper No. GT2019-90256.
(5)Rimpel, A. M. and Leopard, M., Simple contact stiffness model validation for tie bolt rotor design with butt joints and pilot fits, Proceedings of ASME Turbo Expo 2019 (2019), Paper No. GT2019-90396.
(6)Li, P., Yuan, Q., Zhao, B. and Gao, J., Dynamics of a rod-fastened rotor considering the bolt loosening effect, Proceedings of ASME Turbo Expo 2019 (2019), Paper No. GT2019-90573.
(7)Ivanov, I., Blinnik, B. and Myasnikov, V., Nonlinear reduced dynamic model of turbofan engine for investigation of engine structural frame vibrations after fan blade out event, Proceedings of ASME Turbo Expo 2019 (2019), Paper No. GT2019-90367.
(8)Hong, J., Xu, X., Jiang, L. and Ma, Y., Vibration characteristics of rotor system considering gear meshing, Proceedings of ASME Turbo Expo 2019 (2019), Paper No. GT2019-91445.
(9)武内遼太,石丸英嗣,井上剛志,円弧ばね型ダンパのロータダイナミクス係数の実験的同定,Dynamics and Design Conference 2019講演論文集 (2019), Paper No. 604.
DOI: 10.1299/jsmedmc.2019.604
(10)Arghir, M. and Benchekroun, O., A new structural bump foil model with application from start-up to full operating conditions, Proceedings of ASME Turbo Expo 2019 (2019), Paper No. GT2019-90494.
(11)San Andres, L. and Koo, B., Model and experimental verification of the dynamic forced performance of a tightly sealed squeeze film damper sullied with a bubbly mixture, Proceedings of ASME Turbo Expo 2019 (2019), Paper No. GT2019-90330.
(12)Yan, W., Xuesong, L. and Yuhong, L., CFD simulation of air ingestion in a squeeze film damper, Proceedings of ASME Turbo Expo 2019 (2019), Paper No. GT2019-91285.
(13)Wagner, L. F., On the frequency dependency of tilting-pad journal bearings, Proceedings of ASME Turbo Expo 2019 (2019), Paper No. GT2019-90195.
(14)Koosha, R. and San Andres, L., Effect of pad and linear material properties on the static load performance of a tilting pad thrust bearing, Transactions of the ASME, Journal of Engineering for Gas Turbines and Power, Vol. 141(2019), pp.121007-1–12.
(15)田浦裕生,金子覚,渡邉徳仁,山内笙平,部分ねじ溝付き液膜環状シールの静および動特性に及ぼすリード角の影響,Dynamics and Design Conference 2019講演論文集 (2019), Paper No. 603.
DOI: 10.1299/jsmedmc.2019.603
(16)Cangioli, F., Vannini, G. and Chirathadam, T., A novel bulk-flow model for pocket damper seals, Proceedings of ASME Turbo Expo 2019 (2019), Paper No. GT2019-90059.
(17)Yang, j., San Andres, L. and Lu, X., Leakage and dynamic force coefficients of a pocket damper seal operating under a wet gas condition: tests vs. predictions, Proceedings of ASME Turbo Expo 2019 (2019), Paper No. GT2019-90331.
(18)Song, J., Kim, S., Park, T. C., Cha, B-J., Lim, D. H., Hong, J. S., Lee, T. W. and Song, S. J., Non-axisymmetric flows and rotordynamic forces in an eccentric shrouded centrifugal compressor: part 1 – measurement, Proceedings of ASME Turbo Expo 2019 (2019), Paper No. GT2019-90237.
(19)Song, J. and Song, S. J., Non-axisymmetric flows and rotordynamic forces in an eccentric shrouded centrifugal compressor: part 2 – Analysis, Proceedings of ASME Turbo Expo 2019 (2019), Paper No. GT2019-90669.
(20)Balke, N. E. and Childs, D. W., Comparison of a liquid annular seal for pump applications with and without a swirl brake, Proceedings of ASME Turbo Expo 2019 (2019), Paper No. GT2019-90113.
(21)Zhang, M., Childs, D. W., Tran, D., L. and Shrestha, H., A study on the leakage and rotordynamic coefficients of a long-smooth seal with laminar-two-phase, mainly-oil mixtures, Proceedings of ASME Turbo Expo 2019 (2019), Paper No. GT2019-91824.
(22)Zhang, M. and Childs, D. W., A study for rotordynamic and leakage characteristics of a long-honeycomb seal with two-phase, mainly air mixtures, Proceedings of ASME Turbo Expo 2019 (2019), Paper No. GT2019-91831.
(23)Trivedi, D. and Kerr, B., Flow induced dynamics of plate seals, Proceedings of ASME Turbo Expo 2019 (2019), Paper No. GT2019-90962.
(24)Lu, X., San Andres, L. and Wu, T., Leakage and force coefficients of a grooved wet (bubbly liquid) seal for multiphase pumps and comparisons with prior test results for a three wave seal, Proceedings of ASME Turbo Expo 2019 (2019), Paper No. GT2019-90254.
(25)Wu, T. and San Andres, L., Pump grooved seal: a CFD approach to improve bulk-flow model predictions, Proceedings of ASME Turbo Expo 2019 (2019), Paper No. GT2019-90499.
(26)Fang, Z., Li, Z., Li, J. and Feng, Z., Numerical investigations on the static and rotordynamic characteristics of hole-pattern seals with annular or pocket grooves on seal stator, Proceedings of ASME Turbo Expo 2019 (2019), Paper No. GT2019-90776.
(27)Thorat M. L. and Hardin, J. R., Rotordynamic characteristics prediction for hole-pattern seals using CFD, Proceedings of ASME Turbo Expo 2019 (2019), Paper No. GT2019-90846.
(28)金子康智,森一石,恵比寿幹,小川真司,竹下友祥,ターボチャージャ用タービン動翼の共振応答特性に関する研究,日本機械学会論文集, Vol. 85, No. 873(2019), DOI: 10.1299/transjsme.18-00425.
(29)Kurstak, E. and D’Souza, K, A statistical characterization of the effects and interactions of small and large mistuning on multistage bladed disks, Proceedings of ASME Turbo Expo 2019 (2019), Paper No. GT2019-91094.
(30)Koscso, A. and Petrov, E. P., Sensitivity and forced response analysis of anisotropy-mistuned bladed disks with nonlinear contact interfaces, Proceedings of ASME Turbo Expo 2019 (2019), Paper No. GT2019-90629.
(31)Rajasekharan, R. and Petrov, E. P., Analysis of statistical characteristics and global sensitivity for forced response of bladed disks mistuned by material anisotropy, Proceedings of ASME Turbo Expo 2019 (2019), Paper No. GT2019-90632.
(32)Waldherr, C. U., Buchwald, P. and Vogt D. M., A new mistuning identification method based on the subset of nominal system modes method, Proceedings of ASME Turbo Expo 2019 (2019), Paper No. GT2019-91702.
(33)Beirow, B., Kühhorn, A., Figaschewsky, F. and Bornhorn, A., Vibration analysis of a mistuned axial turbine blisk, Proceedings of ASME Turbo Expo 2019 (2019), Paper No. GT2019-92047.
(34)Palma, N. D., Martin, A., Thouverez, F. and Courtier, V., Nonlinear harmonic analysis of a blade model subjected to large geometrical deflection and internal resonance, Proceedings of ASME Turbo Expo 2019 (2019), Paper No. GT2019-91213.
(35)Balmaseda, M., Jacquet-Richardet, G., Placzek, A. and Tran, D.-M., Reduced order models for nonlinear dynamic analysis with application to a fan blade, Proceedings of ASME Turbo Expo 2019 (2019), Paper No. GT2019-90813.
(36)Gastaldi, C., Berruti, T. M., Gola, M. M. and Bessone, A., Experimental investigation on real under-platform dampers: the impact of design and manufacturing, Proceedings of ASME Turbo Expo 2019 (2019), Paper No. GT2019-90416.
(37)Gastaldi, C. and Gola, M. M., Design tools to the best coupling of dry-friction solid underplatform dampers to turbine blades, Proceedings of ASME Turbo Expo 2019 (2019), Paper No. GT2019-91040.
(38)Hassan, A. F., Blackburne, J., Kovachev, N., Schatz, M. and Vogt, D. M., Aerodynamic excitation analysis of a radial turbine featuring a multi-channel casing design, Proceedings of ASME Turbo Expo 2019 (2019), Paper No. GT2019-90105.
(39) Li, J., Chakrabarti, S. and Ren, W.-M., A method to evaluate the sensitivity of aerodynamic damping to mode shape perturbations, Proceedings of ASME Turbo Expo 2019 (2019), Paper No. GT2019-90387.
(40)Gross, J. and Krack, M., Multi-wave vibration caused by flutter instability and nonlinear tip shroud friction, Proceedings of ASME Turbo Expo 2019 (2019), Paper No. GT2019-90247.
Fuhrer, C. and Vogt, D. M., The influence of spontaneous condensation on the predicted aerodynamic damping of a steam turbine tip section, Proceedings of the international Gas Turbine Congress 2019 Tokyo (2019), IGTC-2019-161.

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12.7 耐震・免震・制振

12.7.1 耐震

 2011年の東北地方太平洋沖地震以降,従来の設計の想定を超えた地震動における機器類の実態強度の評価,弾塑性領域の応答を考慮に入れた耐震設計法・評価法に関する研究が進められている.2019年には,原子力発電施設の配管系の耐震設計に弾塑性時刻歴振動応答解析を用いる手法が発電用原子力設備規格設計・建設規格の事例規格として発刊された(1).クレーン構造物や高圧ガス設備においても弾塑性領域の耐力を取り入れた耐震設計手法が整備されている(2).一方,日本原子力学会では原子力発電所を対象としたリスク評価に基づく地震安全の基本原則をまとめるなど(3),個別機器の耐震設計に留まらない,包括的な耐震安全性の向上に向けた新たな取り組みもあった.
 海外においては,ヨーロッパを中心に地震を含め自然災害由来の産業事故(Na-Tech, natural-hazard triggered technological accidents(4))のリスク評価に関する研究が盛んに行われており,機械構造物の耐震分野における主要論文集の一つであるTransactions of ASME, Journal of Pressure Vessel Technologyでは,2019年2月にNa-Tech risk assessmentに関する特集号が発刊された(5).今後も国内外ともに機器の実態強度の把握,リスク評価に基づく合理的な安全性評価に向けた研究が期待される.

 2019年には1月に熊本,2月に北海道,6月に山形で最大震度6弱を超える地震が発生した.これらの地震ではエレベータの閉じ込め被害等が発生したものの,機械設備関係に大きな被害は報告されなかった.

〔中村 いずみ 防災科学技術研究所〕

13.7.2 免震

 積層型と滑り支承型に大別される免震技術は,建築・土木・機械分野において様々な構造物に適用され,大地震時での良好な免震効果の実績から身近な地震対策技術として認知されている.近年の研究動向としては,免震技術開発の当初目的の一つであった原子力施設への適用に関する研究が挙げられる.また,従来よりも詳細に免震層の非線形力学特性の応答を予測可能な手法の提案(6)などが行われている.規格基準では,原子力施設での免震構造の採用審査の考え方や具体的な確認事項について審査ガイドの検討が開始されている.高圧ガス施設では,免震技術を導入するための課題の整理を行い,今後の適用に向けた準備を進めている.両重要施設での免震の積極的な適用に向けた動きは,設計基準地震動の増大に起因している.免震技術の新たな展開としては,空気浮上技術を用いたエネルギー伝達経路の遮断に向けた技術開発が進められている(7)

〔古屋 治 東京電機大学〕

12.7.3 制振

 国内における制振関連の研究として,顕微鏡下での精密作業時の手指の振戦抑制にアクティブ動吸振器の適用を検討した例(8),圧電式慣性アクチュエータによる電子顕微鏡のカラムの2軸アクティブ制振を検討した例(9),電磁力を発生させるシステムを組み込んだ受動型の運動量交換型衝撃吸収ダンパによる衝撃振動の低減を検討した例(10)があり,これまでに適用事例がなかった制振対象を取り扱った研究や新型の制振アクチュエータダンパを開発する研究等,パッシブ・アクティブ制振に関する意欲的な研究が継続して報告されている.また,海外では爆発等の衝撃型荷重に対する構造物を保護する装置等の効果を検討するため大型の振動台を利用するための技術開発が始まっており(11),今後,当該分野の新しい研究動向が展開される可能性を示唆している.

〔射場 大輔 京都工芸繊維大学〕

参考文献

(1)日本機械学会,弾塑性応答解析に基づく耐震Sクラス配管の耐震設計に関する代替規定,JSME S NC-CC-008 (2019)
(2) 古屋治,小林信之,坪田章,香川英一,大野卓志,小山田賢治,木全宏之,クレーン構造物および高圧ガス設備における弾塑性領域での耐震設計法に関する考え方,第9回構造物の安全勢・信頼性に関する国内シンポジウム(2019),pp.408-414.
(3)日本地震工学会,原子力発電所の地震安全の基本原則に関わる研究委員会,
https://www.jaee.gr.jp/jp/research/research12/ (参照日2020年3月25日)
(4)岸本充生,新興リスクとしての”Natech”:自然災害と産業事故の間のギャップを埋める,国立研究開発法人産業技術総合研究所安全科学研究部門,
https://www.aist-riss.jp/column/1231/ (参照日2020年3月25日)
(5)The American Society of Mechanical Engineers, Journal of Pressure Vessel Technology, Volume 141, Issure 1 (2019)
https://asmedigitalcollection.asme.org/pressurevesseltech/issue/141/1 (参照日2020年3月25日)
(6)深沢 剛司,藤田 聡,エネルギーの釣合に基づく弾塑性要素とすべり要素を組合せた免震構造の地震応答予測に関する検討,日本機械学会論文集,Vol.85, No.876 (2019), p.19-00077.
DOI: 10.1299/transjsme.19-00077
(7)山田 学, 梶原 浩一, 佐藤 栄児, 早津 昌樹, 嘉瀬 英夫, 安田 正志,空気浮揚3次元免震システムにおける要素挙動の実験的検証,日本機械学会D&D Conference 2019,ID-234.
DOI: 10.1299/jsmedmc.2019.234
(8)畑中 悟,小松崎 俊彦,多田 薫,松田 匡司,アクティブマスダンパを用いた振戦の抑制に関する研究,日本機械学会論文集, Vol.85, No.879 (2019), p. 19-00246.
DOI: 10.1299/transjsme.19-00246
(9)高橋 弘樹,三枝 高志,有坂 寿洋,圧電式慣性型アクチュエータを用いた 電子顕微鏡向け二軸アクティブ制振システムの開発,日本機械学会論文集, Vol.85, No.878 (2019), p. 19-00161.
DOI: 10.1299/transjsme.19-00161
(10)河田 雅至,山田 啓介,原 進,宇津野 秀夫,倉田 純一,村上 佳広,電磁力を用いた運動量交換型衝撃吸収ダンパによる衝撃振動の低減,日本機械学会論文集, Vol.85, No.872 (2019), p. 18-00485.
DOI: 10.1299/transjsme.18-00485
(11)Nicholas E. Wierschem, Jie Luo, James Wilcoski, Sean A. Hubbard, Larry A. Fahnestock, Billie F. Spencer Jr, D. Michael McFarland, D. Dane Quinn, Alexander F. Vakakis, Lawrence A. Bergman, Simulating offset blast loads experimentally using shake‐table‐generated ground motions: Method development and validation, Structural Control and Health Monitoring, Vol. 27, Issue 2, e2480, pp.1-14.

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