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2020/5 Vol.123

表紙の説明:これは、1931年に米国のブラットフォード社で製造されたベルト掛け段車式普通旋盤の親ねじ(上)と送り軸(下)部分である。親ねじの根元には、ねじを切るときの指針となる手作りの薄鋼板製星形ダイヤルが付けられており、親ねじもしくは連動する歯車と噛み合わせて使う。
[日本工業大学工業技術博物館]

表紙写真 北原 一宏

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会長就任のご挨拶

新たな時代に相応しい学会であるために

2020年度(第98期)会長 川田 宏之

10年ビジョンへ向けて 2020年度(第98期)の取り組み方針

 

2019年は、世界各地で自然災害が猛威を振るった年となり、国内でも想定外の甚大な被害がありました。ここ数年間での地震や風水害などの自然災害は年ごとに頻度が増し、規模も大きくなっていて、「これまでに経験したことがない」や「激甚災害」という表現が当たり前のように使われるようになりました。一方で、COVID-19 の影響が世界の健康衛生や経済活動に甚大なる被害を及ぼしつつ、新型感染症の猛威が世界の経済活動や社会を大きく変えようとしています。我が国にとって特別な舞台となるはずであった東京オリンピック・パラリンピックが延期となってしまいました。本会でも数々の集会事業が中止を余儀なくされています。

このような社会背景の中、日本機械学会はその最先端の工学・技術分野の中核的な存在として位置付けられますが、現状もしくは将来的な社会問題に対する着実な解決策を率先して打ち出していくことが求められています。「逆境を転じて、その逆境をさえ、前進の一歩に加えていく」の精神に則り、現在の社会状況を俯瞰しつつ、これまで学会内で積み上げてきた議論を基礎として、今年度の運営方針のスローガンである「新たな時代に相応しい学会」を目指し、邁進していく所存です。

さて、本会は 2017 年に創立 120 年を迎えるにあたり、その前年度に「新生『日本機械学会』の10 年ビジョン」を策定しました。この10 年ビジョンにおいて、今後ますます複雑化する社会の要請に応え、広範な分野を取り込み、横断的総合技術としての機械工学の強みを活かすため、分野間の連携と産学連携の重要性が謳われています。さらに10 年ビジョンに沿った30 項目 のアクションプランの一番目は「社会の変化に対応可能な柔軟な部門制の実現」となっており、本会にとって2020 年度は、部門間交流の促進を主眼とした新部門制の試行が始まる重要な年となります。

また、昨年度から検討していた「学会横断テーマ」の活動を開始します。SDGs やSociety5.0 などに対応する分野横断的な「学会横断テーマ」の活動を通し、本会がどのような社会的課題の解決に貢献しているかを会員および一般社会に示すとともに、学術活動の活性化、部門間交流の促進、他学協会との連携強化、産学連携の促進などを加速していくことが狙いです。2020 年度は、1. 少子高齢化社会を支える革新技術の提案、2. 持続可能社会の実現に向けた技術開発と社会実装、3. 機械・インフラの保守・保全と信頼性強化、4. 未来を担う技術人材の育成の四つのテーマを設定しました。

新部門制による部門間の連携や学会横断テーマなど、10 年ビジョンに沿ったアクションプランを着実に実行していくことで、新たな時代に相応しい学会に近づけると考えます。その目標に向けて、2020 年度は以下の三点を重点項目としました。これらは互いに関連するものであり、相乗効果を発揮できるよう本会の運営にあたっていきます。

(1)分野横断・産学連携の促進による会員満足度の向上
(2)学会主要行事としての年次大会・講演会のさらなる活性化
(3)新部門制の試行を通した部門間連携の強化

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