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2022/7 Vol.125

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Myメカライフ

切実に生きることの功罪

私は幼少期から虚無主義に取り憑かれ、何てことのない1日を生きるだけでしんどさを感じていました。訳もわからず、人間として生まれて、生きる義務を背負っているようだが、その件に関して創造主的な存在から何の説明も受けていないことに不満を感じていました。多感な時に、リチャード·ドーキンスの利己的な遺伝子を読みました。それが当時の自分には刺激が強すぎ、虚無主義を悪い方向に暴走させ、絶望してしまいました。生物は遺伝子に操作されており、人間存在そのもの、愛なども、遺伝子が生存戦略のために見せる幻想だと思うと、言いようのない不安と孤独を感じました。今思えば、あの確かな苦しみや孤独の中にこそ、遺伝子だけでは説明がつかない、人間の実存や愛への欲求があるような気がするのですが。そんなわけで、思春期を腐らせきった時期、私は、遺伝子に操られて生きる人類を虚しく思い、あらゆる営みが無意味で、人類は存在する意味がないと思ったのでした。もはや人類が終わってもいいと考えている権力者の存在を感じずにはいられない昨今、この考えを、情緒が未成熟な異常者の戯言と片づけるのは危険だと思うのです。

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