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2022/9 Vol.125

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特集 つながる機械 ~機械と通信の融合~

自動車の遠隔操作

大前 学(慶応義塾大学)

はじめに

本稿では、自動車の自動運転における遠隔操作についての動向や研究の事例を紹介する。自動車の実用化から100年以上の時間が経つが、本特集のテーマである『つながる機械』となったのは、最近の約30年間と言って良い。1990年代から2000年代前半には、車車間通信により獲得した前走車の情報を制御に用いた車間距離制御や、プローブとして数多くの車両の情報を収集するシステムなど、『つながる』ことによる自動車の新しい可能性が提案され、赤外光を用いた車車間通信、LCX(Leaky Coaxial Cable、漏えい同軸ケーブル)を用いた路車間通信、携帯電話回線を用いた情報収集などさまざまな実証実験が行われた。以降、携帯端末で日常的に私たちが使用しているLTE、5Gの移動体通信や、自動車用の5.8GHz帯、700MHz帯などの無線通信を媒介として、自動車がさまざまなシステムとつながり、運転支援・自動運転、アフターサービス、プローブカーなど、自動車のさまざまな『つながる』技術が進化しつつある。物理的にもつながっているように見える隊列走行や協調型ACC(Adaptive Cruise Control)は、前走車の情報を用いて高精度かつ安定に車間距離を制御する技術である。プローブカーは、自動車をセンサとして活用し、広域な範囲できめ細かな情報を収集する。近年、さまざまな実証実験が行われているダイナミックマップやインフラ協調技術は、実際の状況を反映する仮想空間と自動車をつなぎ、自動車が仮想空間から情報を取得することで車載センサの範囲を超えた状況に基づく判断を可能とする技術と言ってよい。これらについては、本誌の文献(1)(2)などで分かりやすく解説されている。本稿では、『つながる』自動車の技術の中で、本誌の文献で解説されていない技術として、自動車と車外の人(本稿では「遠隔オペレータ」と呼ぶ)をつなぎ、車外から運転や支援を可能とする遠隔操作について紹介させていただく。以下では、自動車における遠隔操作のニーズや、遠隔型自動運転について説明し、その後、遠隔操作に関連する研究の幾つかを紹介する。

自動車の遠隔操作のニーズ

自動運転移動サービスの補完として注目される

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