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2022/10 Vol.125

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特集 超精密加工の最前線

「超精密加工の最前線」特集によせて

土屋 智由(京都大学)

はじめに

イクロ・ナノ工学部門10周年にあたって

2007年に部門横断型組織として設置されたマイクロ・ナノ工学専門会議の活動を経て、2012年に部門化したマイクロ・ナノ工学部門は10周年を迎えた。機械学会の部門活動にマイクロ・ナノスケールでの機械工学という観点で連携を深める機会を設けようという活動は日本機械学会の活性化に重要な役割を果たしてきており、今後もますますその重要性が高まっていく。マイクロ・ナノ工学部門の役割は機械工学をマイクロ・ナノスケールで見たときに機械工学、制御工学、機械材料などに新しい知見を与えようとすること(図1)である。

一方で、マイクロ・ナノスケールの機械の加工技術の研究も重要な側面である。実際にマイクロ・ナノ工学部門の部門大会である「マイクロ・ナノ工学シンポジウム」(以下MNシンポ)ではマイクロ・ナノスケールの加工技術が幅広く議論されている。2021年度までに開催された13回のMNシンポ全講演(1618件)の題目に対してテキストマイニングソフトウェア(KH Corder)を用いて発表傾向分析を行った。「加工」は63回(23位)、「作製」139回(8位)、「形成」55回(26位)など、加工、ものづくりに関わる研究は多い。

図2は頻出語(上位60語)の共起ネットワーク図(出現パターンの類似した語、すなわち共起の程度が強い語が線で結ばれたネットワーク図)である。「微細」「加工」が一つのグループを作り、幅広い発表に関わっているため独立して示されていることが分かる。微細なものづくりの研究はマイクロ・ナノ工学分野の重要なトピックスの一つと言える。

図1 マイクロ・ナノ工学の範囲

図2 マイクロ・ナノ工学シンポジウムの講演題目における頻出語の共起ネットワーク図

 

ところが、この分野のものづくり=加工の研究は機械加工と一線を画し、主に半導体加工を取り扱ってきた。マイクロ・ナノ工学の分野は形状寸法でいうとmm以下からμmの範囲で本来は共通性があるものの、取り扱う材料、加工技術、その精度には大きな違いがあり、これまで統一的に議論されず、半導体加工技術と機械加工における微細加工技術は別々に取り上げられてきた。

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