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2022/10 Vol.125

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特集 超精密加工の最前線

単結晶ニオブ酸リチウムを用いた慣性センサ

谷内 雅紀〔多摩川モバイル電装(株)〕

はじめに

特有の超精密加工プロセスの必要性

ニオブ酸リチウム単結晶(LiNbO3以下LN)は、熱的化学的に極めて安定であり、かつ高い電気機械結合係数を持つことから、SAWフィルタなどに代表される各種弾性波素子や超音波デバイスとして使用されてきた歴史を持つ材料である(1)。これらのデバイスは半導体プロセスを使って製造されることから、シリコン単結晶と同様に、量産性を高め、低コスト化を図るため、大口径化されてきた。しかし溶融粘度が高く、化学量論的組成比では固相温度と溶融温度が一致しないため、同じ引き上げ法による結晶育成だが、シリコンより育成の難易度が高いものとなっている。上述の理由でLNは均一組成を得ることが難しく、現在は4~5インチが経済的なウェハ口径となっている。これら材料特有の性質、内部ひずみによる脆性、高硬度による難削性が、超精密加工を行う上で、シリコンに比べ特有のプロセスやノウハウが必要になるポイントになっている。

本稿では、上述した高硬度脆性材料をサブミクロン精度で超精密加工し、位置合わせを行い、立体的に電極を配置し、いかにしてMEMS慣性計測装置(Inertial Measurement Unit以下IMU)として、精度と量産性を両立できるようにしたかを音叉型振動ジャイロスコープとSAW加速度計を例に記述する。

MEMS慣性計測装置(MEMS-IMU)

MEMS慣性センサで回転や直線運動を検出する

慣性空間における動きを計測する、すなわち回転運動をジャイロスコープで、直線運動を加速度計でセンシングし、どのような運動をしたかを演算する装置が慣性計測装置(IMU)である(図1)。例えば旋回角度を出力する場合は

(1)

(1)式の如く、回転角速度ωを角度θに積分、姿勢として出力するような演算をしている。この場合θtをリセットする時間間隔が長くなると積分誤差が大きくなる。この誤差をいかに小さくするかが、性能上の課題となる。

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