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2019/3 Vol.122

【表紙の絵】
未来のファミリーレストラン

小原 芽莉 さん(当時10歳)

私の考えた機械は、これから起きるといわれている「食料危機」を乗り越えられる機械です。バクテリアの入っている機械に昆虫をいれると、バクテリアが昆虫をハンバーグやオムライス、カレーなどの味にします。色々な味になった物が穴からでてきます。最後に羽あり型ロボットが穴から落ちてきた物をお皿にならべてくれます。

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My メカライフ

医工学研究を始めたきっかけ

私は現在東京女子医科大学で、医工融合をモットーに多分野の専門家たちと一緒に研究開発を行っています。現在の職場で手術支援システムの研究を行えているのは、これまでにいろいろな方々との出会いがあったからです。高専では電子工学科に所属し、半導体や放射線に関する研究を行っていたのですが、たまたま参加した展示会で谷口和弘先生(当時大阪大学博士課程)と出会ったことがきっかけとなり、大阪大学大学院へ進学しました。大学院では、手術支援関係の研究グループを希望していたのですが、グループリーダーである西川敦先生(当時准教授)が私の入学とともに信州大学へ異動されることになり、希望の研究を選択できませんでした。半年間は別のテーマで研究を進めていましたが、先輩からの一言をきっかけに先生方へお願いし、なんとか信州大学と大阪大学との遠隔で研究指導をいただけることになりました。この時に、自分の気持ちに素直になり、希望を伝えて環境を変えようと試みたことが人生における一つの大きなターニングポイントだったと思います。もしここで諦めていたら全く別の研究人生を歩んでいたと思います。学生からの意見に耳を傾けてくださった先生方にも大変感謝しています。大学院時代には外科医や企業・他大学と連携して手術支援ロボットを開発し、博士課程修了後は海外留学の機会をいただくなど、研究スキルを少しずつ蓄積してきました。その後は東京女子医科大学に勤め、より実用化に近い環境で手術支援システムの研究を行っています。

手術支援システムの研究は、大学院時代に単孔式内視鏡手術を対象としたマスタ・スレーブロボットの研究に関わったことが始まりで、消化器外科から脳外科、呼吸器外科、眼科など、対象をさまざまな分野へ広げて研究開発に取組んでいます。医療分野の研究は母親が看護師として働いていたこともあり、以前から興味を持っていたのですが、人への貢献を直接的に感じられる分野ということで、モチベーションを保つ一つの要素となっています。一方で求められるハードルも高く、安全性・有効性はもちろんですが、それを操作する外科医からの評価も重要です。また、実際に製品化を行う場合は、承認・保険償還までのプロセスも長く、さまざまな課題が挙げられます。大学院時代は、基礎研究としてコンセプト設計からプロトタイプ作成、評価実験までのプロセスを経験してきましたが、東京女子医科大学に入ってからはより臨床現場に近く、実用化に近いステージで研究を進めています。実際にがんを対象とした新しい治療システムの臨床研究に携わり、治療システムを初めてヒトへ利用する貴重な瞬間に立ち会いました。新しい技術を患者へ届けることの難しさ・意味の大きさを感じることができました。

医療機器開発を行うエンジニアを目指す人物像としては、外科医と対等に話し合える知識・経験を身につけること、研究だけに限らず実用化に向けたさまざまなステップやルールをある程度把握し、企業連携のためにもビジネス感覚を持つことが必要だと思います。理想的にはこれらの知識を持ったエンジニアになることが目標ですが、まだまだ未熟なため、たくさんの経験を経て、実践的にこれらの知識を身につけ、新しい技術をより多くの患者へ届けられるように日々精進して研究開発を進めていきたいと思います。

臨床研究の第一症例を実施した医工融合チーム


 

<正員>

堀瀬 友貴

◎東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 特任助教

◎専門:電子工学、生体医工学

◎2017年度 日本機械学会奨励賞(研究)受賞

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