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2020/9 Vol.123

表紙の説明:これは、フライス盤のテーブルに取り付けて使用する割出し台の割出し板部分である。ハンドルを回して穴へピンをさし込んで直接割り出す方法と、送り機構から駆動させる方法がある。これを用いて、円筒工作物の外周上に等分割の溝をフライス加工したり、インボリュートカッタを取付けて歯切り加工したりできる。
[日本工業大学工業技術博物館]

表紙写真 北原 一宏

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特集 V&V―シミュレーションの 信頼性確保のために―

原子力分野におけるV&V規格の動向

越塚 誠一(東京大学)

原子力分野におけるシミュレーションの役割

事故のシミュレーションによる安全性の確認

原子力分野では、原子炉の事故のシミュレーションが以前より行われてきた。代表的なものに原子炉冷却材喪失事故がある。日本における発電用原子炉は、原子炉を軽水で冷却する軽水炉である。原子炉は高圧にして軽水の沸点を高くすることで発電効率を高めており、仮に配管破断が生じると、高圧の冷却水が原子炉から失われる冷却材喪失事故になる。原子炉は制御棒を挿入して停止させたとしても、崩壊熱によって発熱が持続する。そのため、通常の冷却水が失われた場合には、非常用炉心冷却装置により自動的に原子炉に注水し、原子炉の最高温度が制限値を超えないようにする。この冷却材喪失事故における一連の過程はコンピュータによって計算し、制限値を越えないかどうかを確認する。さらに、冷却材喪失事故以外にもポンプの軸固着による流量喪失や制御棒落下など、さまざまな事故についてシミュレーションが行われ、それらを通じて原子炉の安全性が確認されている。こうした事故のシミュレーションは規制機関の審査対象であり、これに合格することで原子炉の建設が許可される。したがって、原子力発電所の建設にはさまざまな事故のシミュレーションを行うことが必須であり、そのため原子力分野では以前よりシミュレーションの信頼性が議論されてきた。

原子炉の事故のシミュレーションでは、原子炉の配管系を一次元のネットワークで模擬することが行われ、そのソフトウェアはシステムコードと呼ばれる(図1。システムコードではシミュレーション結果が安全側になるように作られる。すなわち、計算結果としてより厳しい側の数値が得られるようにする。例えば冷却材喪失事故では、燃料棒の温度がより高くなるような計算結果が得られるようにモデルを作る。高圧の冷却材が配管の破断口から流出する過程では、流出量が大きくなる側に、その後の非常用炉心冷却装置から注水する過程では、流入量が小さくなる側に想定する。さまざまな条件を、すべて安全側に想定して、それでも制限値を超えないことが確認されれば、安全であると結論される。

図1 原子力プラントのモデリング

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