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2021/3 Vol.124

工部大学校の「機械学」教育機器(機械遺産第100号)

機構模型:てこクランク往復運動
年代未詳/真鍮、鉄、木製台座/H270, W365, D180(mm)/東京大学総合研究博物館所蔵
工科大学もしくは工学部の備品番号「工キ學ニ二一七」の木札付。台座裏面に「百四拾九」と墨書あり。本模型の年代は未詳であるが、東京大学総合研究博物館には工部大学校を示すプレート付きのものを含め、近代的な機械学教育のために明治期以降に導入された機構模型が現存する。
上野則宏撮影/東京大学総合研究博物館写真提供/インターメディアテク展示・収蔵
[東京大学総合研究博物館]

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特集 MaaSにより目指す社会とそれを支える次世代モビリティ技術< 電子情報通信学会 合同企画 >

船舶における自動運転実現に向けた技術開発の現状と課題

清水 悦郎(東京海洋大学)

はじめに

自動運航船とは?

自動車分野における自動運転技術の開発や、自動運転技術を搭載したバスや鉄道など他のモビリティと連携したモビリティサービスを提供しようというMaaSに関する取り組みも盛んになってきている。このような自動運転に関する技術開発は、近年、船舶分野においても国内外を問わず活発となっている。古くから船舶においてはオートパイロットとよばれる船舶の船首方位を保持する自動制御装置によって自動運転を行ってきた。オートパイロットでは、北を0度、東を90度、南を180度、西を270度として移動したい方向を目標方位として数値で表し、自船の船首方位を目標方位と一致させるよう舵を自動制御することによって、所望の方向に移動することを実現している。オートパイロットは単に船首方位を保持するだけであり、障害物などを発見して自動的に回避する、というような機能は実装されていない。これに対して、英語ではMaritime Autonomous Surface Ships(MASS)、日本語では自動運航船、無人運航船、自律化船などと呼ばれる自動運転に関する研究開発では、障害物回避などの機能も実現しようとしている。自動運航船など、日本語の呼び方は異なっていても技術的に求められるものは同じであり、図1に示すような

①障害物を認識し回避しながら自動的に航行する船舶(Autonomous Ship)

②船舶を遠隔地から監視を行うとともに必要に応じて指示を行う運航管理システム(Control Center)

③船舶と運航管理システム間の通信を担う通信システム(Communication System)

の三つから構成される。国内外を問わず舟運はエネルギーや貨物の輸送の多くを担っており、その舟運を支える船員不足は深刻な問題となっている。同時に安全性の向上も求められることから、陸上からの支援も可能とする自動運航船の研究開発が求められている。本稿では国土交通省の呼び方にならい「自動運航船」を用いるが、船舶における自動運転技術開発の現状と課題を紹介する。

図1 自動運航船のシステム構成

研究開発の現状

国内外で進められている研究開発プロジェクト

まずは海外の研究開発状況を紹介する。全長数m程度の小型船は、既にL3 Harris(1)などから市販されており、軍事分野や警備分野、科学調査分野で利用されている。全長数十m程度の船舶に関しては、ノルウェーで2017年から実施されているYARA Birkelandに関するプロジェクトが有名である。ノルウェーの化学肥料会社YARAと科学技術企業Kongsbergが共同で実施している、全長80mの電池推進による自動運航船の開発プロジェクトである。当初は2020年中に自動航行を開始する予定であったが開発が遅れており、2020年11月に造船所からYARAに船体が引き渡され、今後、自動運転に関する開発が進められるとのことである(2)

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