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2017/2 Vol.120

【表紙の絵】
「アレルギー物質がパパッとわかるメガネ」&「モニターロボ」
伊藤 心くん(当時9 歳)

このメガネはウエアラブルコンピューターメガネの未来型で、食物アレルギーがある人のために作られました。
メガネの横の黄色い部分から赤外線が出るので、物質の持つ波長のちがいから、中に入っている物質がわかります。
そのデータをロボットに通信してモニターロボに結果を表示します。
事前に自分のアレルギー物質を登録しておけば、食べられるかどうか瞬時に判断できます。
ぼくはナッツアレルギーですが、このケーキはOK マークが出たので食べることができます。

*作者の伊藤 心くんは2016年7月15~17日開催の「口笛世界大会2016 ジュニアの部」で優勝しました。
http://whistling.jp/wwc/wwc2016/wwc2016-results
http://www.akita-u.ac.jp/honbu/event/item.cgi?pro6&849

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ほっとカンパニー 〜世界で活躍する元気な特別員を紹介〜

ホソカワミクロン(株) 粉体技術で世界を支える・世界を変える

日本にはこんなスゴイ会社がある
1916年創業のホソカワミクロンは、これまでの100年間、粉一筋。粉体に関係する機械を作り続けている。粉というと小麦粉などが頭に浮かぶが、実は食品・日用品・家電品・オフィス用品・医薬品・自動車などの、幅広い製品に使われている。ホソカワミクロンは、それらの製品作りに必要な粉砕・分級(粉を大きさで分ける)・混合・乾燥・粒子設計・集塵などに用いる機械の開発・製造を行っている。

 

なぜ粉体を扱うようになったのか?
創業者の細川永一は、1889年に兵庫県の淡路島で生まれた。当時の淡路島には粉を挽くための水車があり、彼は常に機械や製粉に興味を持っていたという。機械技術者として島津製作所に入社した永一は、社長の研究開発を手伝うことになった。蓄電池の品質向上に取り組んだ発明家として有名な島津社長は、当時、蓄電池用の鉛を粉砕する研究を行っていた。鉛は柔らかいので、たたいても伸びるだけ。細かく砕くことは難しかったからだ。島津社長という師を得た永一は、技術者として確実に成長していった。

1916年に独立して小さな鉄工所を立ち上げた後も、永一は粉砕に興味を持ち続けていた。国内では、性能が不十分な外国製の粉砕機を使っていることも気になっていた。そして、1927年のある日、アメリカの企業のカタログで微粉砕機を見つけた時、自分でも作ってみようと決意したのだ。永一は寝る間も惜しんで、一心不乱に研究に没頭した。そして、1930年に「微粉砕機ミクロンミル」が完成した。粉砕の基本原理である衝撃・せん断・摩擦の三つの機能を備え、独自の構造を持つこの粉砕機は、世界でも例を見ない素晴らしい発明だった。しかも、この機械は、世界で初めてミクロン(μm)単位の粉を作ることを可能にしたのだ。ミクロンミルという名前は、このことから名付けられた。

島津社長考案の蓄電池用鉛粉の製造法は工程が複雑だった。それに比べ、ミクロンミルは鉛を簡単に粉砕できる。永一は島津社長から、「この機械の権利を譲ってほしい」と頼まれた。だが、「売らない方がいい。この機械を元にして、いろいろな技術開発をした方が、後々のためになる」という知人からのアドバイスに従うことにした。そして、その言葉通り、永一の会社はその後、発展を続けることになる。ミクロンミルの発明により、国内の粉の品質や製造能力が向上し、新たな分野の開拓にもつながった。1980年に変更した現社名はこの機械名にも用いられ、ホソカワの粉体技術を象徴するブランド名となっている。

創業者、細川永一(左)とミクロンミル1 号機(右)

 

ミクロンミルからスーパーミクロンミルへ
1951年には、微粉砕機「スーパーミクロンミル」が完成した。この機械の特徴は、粉砕する部屋を2室にしたことだ。まず粗く粉砕して、その後もっと細かくするという2段階の仕組みを持つ。しかも粉砕しながら、原料中の不純物が除去できるので、製品の純度が高まる。細かくする能力や処理量も格段にアップした。

驚くべきことは、70年近くも前に開発されたこのスーパーミクロンミルが、いまだに売れているという事実だ。構造は基本的に当時のまま。そして、スーパーミクロンミルは消耗品を交換すれば、50年以上もつと言う。

現在発売中のスーパーミクロンミルM

 

新技術「メカノフュージョン」
次の時代の要望は、粉の大きさを揃えることだった。そこで1995年には、粉を空気を使って粒の大きさで分ける分級機「ミクロンセパレータ」を開発した。スーパーミクロンミルとともに、ホソカワミクロンの技術の基礎をなす発明品である。ただ、ミクロンミルやミクロンセパレータの基となった、「混ぜる・分ける・砕く」という技術は、大昔からある。粉体の世界では、画期的な新技術を開発することは難しいと言われていた。

しかし、そんな定説を覆すように、1986年ホソカワミクロンは、新技術を発明した。「微粒子複合新素材創造技術メカノフュージョン」である。複数の異なる種類の粉を入れて、強い機械的エネルギーを加えると、従来とは異なる性質の粉ができるという画期的なシステムだ。例えばコピー機のトナー。通常は流動性が悪いため、コピー機に流すとベタベタになって付着してしまう。しかし、メカノフュージョンシステムを使うと、流動性が良くなるのだ。

現在発売中の循環型メカノフュージョンシステムAMS

 

粉体世界のやっかいな問題
粉体技術で昔から問題とされるのは、コンタミ(製品に混入した不純物)だ。これは、装置の磨耗によって起きる。例えば電池なら、原料に金属が混ざるとショートしてしまう。電気自動車や携帯電話に使われているリチウムイオン電池。この原料にコンタミがあると、発火する恐れがあるのだ。

困ったことに、金属製の粉砕機では、コンタミが出てしまう可能性が高いという。最近の電池や磁石の材料は非常に硬いので、それを細かくしようとすると、粉砕機の金属のほうが削れてしまうからだ。

そのため、近年とくに高付加価値原料の加工には、粉と接する部分にセラミックス製部品を用いた粉砕機の要望が高まっている。しかし、セラミックスは高価で壊れやすい材料である。ホソカワミクロンでは、機械や部品の構造・形状を工夫し、低コストでコンタミの出ない機械の開発に注力している。

 

高い粉体技術で世界をリード
現在のホソカワミクロンの営業方法は、売り込みではなく、主にお客様からのニーズに応えるスタイル。「こういうものを作れる機械はないか」との問い合わせがあると、要望通りの物ができるかどうかを、自社のテストセンターで小型の機械を使って試してみる。そして、それが成功したら、その機械を購入してもらうのだ。他社では不可能な問題を解決できることも多く、最先端の粉体技術を持つ企業として、お客様からの信頼は厚い。

また、ホソカワミクロンは1960年代から、海外の粉体関連企業の買収を進めてきている。すでに、世界の名だたる粉体技術企業がホソカワミクロングループに属している。まさに“ 粉体技術連峰” である。世界シェアは10%程度と見込まれ、世界のトップ企業となっている。

「生活に使うほとんどの製品が粉体技術から生まれている」
と言っても過言ではない。そのため、リーマンショック等の経済的要因にもあまり影響を受けない全天候型企業と言える。

「より細かく、より均一に」という産業界からの要望は、どんどん強まっている。ホソカワミクロンは、「無駄をなくし、省エネの機械を作ることでお客様のニーズに応えよう」と頑張っている。これからも、ますますの活躍を期待したい。

今回の取材に協力いただいた皆さん(写真左から、伊賀さん、東さん、平山さん)

 

(取材・文 山田 ふしぎ)


ホソカワミクロン株式会社

所在地 大阪府枚方市
http://www.hosokawamicron.co.jp/


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