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2018/3 Vol.121

【表紙の絵】
特しゅなラップでオゾンそうを守るきかい「地球守るくん」
澤田 明伸 くん(当時9歳)
今、地球の「オゾンそう」がはかいされてきています。うちゅうでもたえられるかこうがしてある特しゅなラップで地球をおおいます。その特しゅなラップは、太陽風やいん石やうちゅうゴミが地球に落ちてくるのをふせいでくれています。それに、「地球守るくん」の本体は木でできていて、本体を作るときにあまり二さん化炭そを出しません。あと、顔の表じょうを変えられるので面白いです。地球のオゾンそうがはかいされなければいいと思います。

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特集 注目の新規金属材料「高エントロピー合金」

強ひずみ加工による高エントロピー合金の高強度化

向井 敏司(神戸大学)・Alok Singh(物質・材料研究機構)・土谷 浩一

図1 従来の鉄鋼材料および高マンガン鋼と比較した

各種高エントロピー合金の引張り強さと破断ひずみの関係

高エントロピー合金の組成と機械的性質

従来の固溶体金属は主要な1種類の元素に対して異種元素を微量添加し、原子半径差による格子ミスフィットひずみの効果により、高強度化が図られている。これに対して、高エントロピー合金(High Entropy Alloy:HEA)は5 種類以上の元素から構成され、各元素の原子比が5%〜35% と定義されている新しいカテゴリーの合金である(1)(2)。多種類の元素を混合することにより高い混合エントロピーを有するため、相安定性が高められている。2004年にYehら(1)およびCanterら(2)による報告がなされて以来、高エントロピー合金に関する研究は盛んに行われており、これまでに300 種以上の合金が創製されている(3)。高エントロピー合金が注目される理由として、高強度、高延性、高靱性などの優れた機械的性質(図1)および熱的安定性(4)、耐食性(5)などの機能性を有することが挙げられる。また、結晶構造が従来の固溶体合金とは異なり、学術的に未解明なことが多いことも研究対象として選択されている理由である。一方で、従来合金と同様に、元素が異なれば高エントロピー合金の性質は大きく変化する。例えば、CoCrFeNiAl(6) とCoCrFeNiTi(7) の材料特性を比較すると、最大強度は2GPa程度と同程度の値を示すが、TiとAlの違いにより、破断ひずみは0.33および0.09と大きく異なる。また、元素の種類のみならず、組成比によっても機械的性質は大きく変化する。そのため、新たな高エントロピー合金を創製する研究が世界中で盛んに行われている。

CoCrFeMnNi合金はCantor(2)らが創製した高エントロピー合金であるが、単相の面心立方晶(FCC)構造からなり、高強度や延性を有するため、実用化への期待も相まって、数多く研究された高エントロピー合金の一つとなっている。例えば、Gludovatz(8)らによると、CoCrFeMnNi合金は77 Kにおける破壊靭性値が200 MPa・m1/2に達し、実用材料中最高レベルであることが報告されている。また、Ottoらによる引張試験では、77Kにおいて強度のみでなく破断伸びも室温の場合より向上することが確認されている(9)。このような低温における優れた機械的性質は、低温で活動する双晶変形によって発現することが報告されている。一方、室温で塑性変形させた場合には、引張試験の変形後期(8)や圧延加工した場合(10)に双晶変形が生じることが報告されているものの、その発生条件や変形双晶が微細組織変化に与える影響は、未だ十分には解明されていない。強度と延性のバランスが優れた鉄鋼材料として、マンガンを多量に添加した高マンガン鋼が知られているが(11)、TWIP (twin induced plasticity)鋼と呼称されるように、変形双晶の形成により強度と延性が発現している(図1)。高エントロピー合金の変形メカニズムを考察する上で、高マンガン鋼の変形様式は参考となるものが多い。

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