日本機械学会サイト

目次に戻る

2017-/2017~ アーカイブ

バックナンバー

名誉員から一言

コミュニティ形成と学術研究活動の展開

はじめに

 今春、東北大学を退職し、これまで36 年間第一線の往路で日本機械学会を中心に学術研究活動を展開してきた。研究者として復路への折り返しとなった機会に、筆者の経験から会員の皆様にコミュニティに関して一言述べたい。研究者はそれぞれ能力と個性を有し、特に独創性や新規性を追求する能力が要求され、さまざまなキャリアパスを経由して一人前になる。私の学生時代のころは、象牙の塔に籠り論文さえ書いていればよい風潮であった。最近は、社会還元、産学連携、国際共同研究等が奨励され、研究者は世界基準での厳しい評価に晒されている。

一人前になるためには自分なりに個性を育み成長はするが、世界から認知されるためには、一流のコミュニティに身を置くことが大事になる。人間力は「じんかんりょく」と言い、人は人の間(コミュニティ)で力をつけ、そして外に力を発揮する。コミュニティは、共通基盤はあるが多様性のある個の集団であり、異なる個々との相互作用で切磋琢磨することにより実力をつける。若いときは、自分と共通性やメリットのあるコミュニティに属しようとするが、年齢とともに、ある特定の目的や効果を有するコミュニティの形成が必要とされる。自分の世界に籠るのではなく、いろいろな能力を有する一流の人々で構成されるコミュニティに所属すれば、自分の能力も飛躍的に進化し、その人的ネットワークを介してグローバルに展開できる。

自分自身の研究生活を振り返ってみても研究活動と並行して、世間に対し強力に研究推進するためにコミュニティ形成に時間を割いた。ここでは、コミュニティ形成と学会活動や産学連携、国際交流との関わりについて自分の経験を述べ、皆様の参考になれば幸いである。

学会活動

 学会では、研究会や国内学会でOS・WS・国際会議も継続的に企画した。最近では、多くの学会でOS 等が企画され似たような論文が数多く発表されている。教育的視点から学生セッションでは学生賞を競っている風潮があり、研究者同志の緊張感のある討論や将来を見据えた意見交換が少なくなっているようである。もちろん専門性の近い研究者コミュニティ形成は大事であるが、閉鎖的でサロン化し、継続性があるとマンネリ化し、次世代が育たなくなってしまう。常に開放的で異質な人材や思想を柔軟に導入かつ融合し、研究者コミュニティの重心を未来に向かって動かすような指向性とエネルギーが必要である。そこから生涯苦楽をともにする研究者仲間が生まれてくるかもしれない。

産学連携活動

 欧米に対抗し日本の産業競争力を強化するために産学連携の推進やベンチャー企業の立ち上げが強く要請されている。筆者も自動車、電機、素材メーカー等と共同研究を行った。会社ごとに個性があり、技術者の関わりでは、我々に明確な目的と現実感、強い使命感や価値感を意識する貴重な機会を得た。産学連携は、学術基盤の構築や普遍性を追求する大学コミュニティと製品化や新規技術開発を目指す技術者コミュニティの異なったもの同士のダブルスであり、互いに補完関係である。筆者は、会社には基礎的応用的な学術情報や新たな知見の提供、会社からは新規なシーズや普遍的な研究課題の発掘に努めた。大学では産学連携推進のための組織が次々に構築されているが、成熟するまでにはまだ時間を要すると思われる。

国際交流活動

 筆者は、ロシア科学アカデミー、理論・応用力学研究所およびチェコ科学アカデミー、プラズマ物理研究所と20 年以上にわたり組織的に共同研究、人材交流、国際学術活動を展開してきた。近年、多くの大学で海外の研究機関と学術交流協定を締結し、若手研究者や学生にも積極的な国際学術活動を推奨している。実効的で継続性のある交流で重要なのは、個人の信頼関係の醸成、尊敬心、異質な思想・方法への受容性や同一目的の確認と互恵関係の構築である。もちろんお互いに楽しさを共有することも大事である。一流国際雑誌のエディターや国際組織委員らと人的ネットワークが構築できれば、一流の世界で揉まれ自分を高められ、国際的知名度も上がる。

おわりに

 コミュニティの形成にあたっては、オアシスや草地を求めて荒野を彷徨う遊牧民や大陸での異民族間の交流や戦いを通して融合文化を形成していったプロセスが参考となる。開放的環境の下で、遊牧・大陸型融合化が一つのヒントになるであろう。


<名誉員>

西山 秀哉

◎大阪大学招聘教授 東京工業大学特別研究員 東北大学名誉教授

◎専門:流体工学、プラズマ工学

キーワード: