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2018/12 Vol.121

よごれ0(ゼロ)ロボッ子
村越 心 さん(当時9 歳)
この‘よごれ0(ゼロ)ロボッ子’は、体が掃除機のようになっています。手は掃除のアイテムが出てくるようになっています。口はゴミを吸い込めるようになっています。そして、吸い込まれたゴミは大きなおなかに入り、それが‘よごれ0(ゼロ)ロボッ子’のごはんとなります。目はセンサーが付いていて部屋のよごれがあるとすぐに気づけるようになっています。足はモップで水などをふけます。モップは自由に動きます。頭にはアンテナが付いていて、電気に近づくと体全体が気づき、動くようになっています。これが‘よごれ0(ゼロ)ロボッ子’の仕組みです。

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特集 機械工学が拓くIoT技術

特集に寄せて

神野 伊策(神戸大学)

ここ数年「IoT (Internet of Things)」というキーワードが技術的コミュニティに限らず広く一般に使われ始めている。IoTはその言葉が示す通り「あらゆるものをインターネットに接続する」という定義であるが、センサやカメラなどの機器を通して得られる情報をインターネットに接続することで、必要とする情報を分析、処理、抽出、またそれらのデータを相互に連携、制御することが可能になる。スマートフォンを中心とした情報端末が世界中で用いられている今日、インターネットをベースとしたIoT技術は、一般消費者を主な対象とした新しい産業としての期待とともに、今後の社会を大きく変化させる技術として注目されている。

「IoT」というキーワードは、1990年代後半にケビン・アシュトン氏がサプライチェーン管理のためにインターネットに接続したRFIDを活用する提案に始まるとされている。これまでインターネットは、パソコンを中心とした情報端末にまとまった情報をインプットし、その情報を伝達することが主な役割であったが、分散配置された「もの」から得られたデータを直接インターネット上にインプット、それらの情報を加工し利用するコンセプトは、さまざまな応用のみならず要素技術開発にも大きな刺激を与えることになった。

すでに日常生活に活用されているIoT

このIoT技術は、特にスマートフォンの浸透によりその応用分野が拡大している。日常生活との関係では、家電製品を中心としたIoT技術がすでに実用化されている。例えば、玄関の鍵、エアコンのON/OFF・温度設定、また介護機器などへ導入したセンサの情報の活用などがすでに実用化されており、今後さらに身の回りの製品へIoTの導入が広がると予想される。医療・ヘルスケア分野では、前述の介護・見守りを目的とした、より高機能な機器やシステムの導入が検討されている。病院や介護施設のベッドや廊下、トイレなどにさまざまなセンサを配置、入居者の安全・安心を向上させるといった高いニーズに基づいており、今後実用展開が大きく広がる分野としてさまざまな試みが行われている。この他、鉄道や道路の橋梁、トンネルなどの構造物ヘルスモニタリングは、今後耐用年数が増えてくるこれらの建築物を安全に管理するうえで重要な応用分野として現在その実用化が進められている。この他にも農業や製造分野、物流などの分野において、IoTの導入による新しい技術開発が試みられている。

要素技術分野

IoTそのものは、インターネットをベースとした情報通信分野の発展系として捉えることができるが、その伝達対象が人間である一般的な技術と異なり、ありとあらゆる「もの」から情報を収集し、伝達、分析、制御することから、さまざまな技術により構成される。一般的なIoT関連技術は、大きく分けて以下のドメインに分類される。

1)モノから情報を抽出、入力するデバイス:

センサ、カメラ、マイクロフォンなど

2)データを伝達、処理、制御、蓄積する情報処理:

インターネット、クラウド、ビッグデータ、AIなど

3)ユーザーインターフェース:

情報端末、情報セキュリティ、プライバシー管理

現在IoT技術が注目されている背景に、各家庭へのインターネット環境の普及、Wi-Fiなどの無線通信技術、特にスマートフォンの普及によりインターネットの利用がより身近になった点が挙げられる。ビッグデータやAIなど、現在注目されている新技術の登場もIoTへの期待を増幅させる大きな役割を演じている。一方、IoT技術を今後さらに発展させるための要素技術として、センサ、アクチュエータ技術が挙げられる。これらの技術は機械工学においても関わりの深い分野であり、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)やエナジーハーベストなど、新しい技術の研究開発が現在活発に行われている。

本特集では、自動車、公共インフラ、産業機器、医療分野などのアプリケーション、企業におけるIoTプラットフォーム、エナジーハーベスト技術として注目されている振動発電の記事を紹介する。一方、IoT技術の重要な技術として注目されているAIやビッグデータ、また今後その重要性が指摘されている情報セキュリティなどの分野については、将来機械学会における議論の進展に伴い、別の機会で特集いただければ幸いである。今後日本機械学会におけるIoT関連技術の研究がさらに発展し、その成果が社会に還元される事を期待して、巻頭言とさせていただく。

IoTの階層構造例(機能別分類)(出典:みずほ産業調査「IoT(Internet of Things)の現状と展望」)


<フェロー>

神野 伊策

◎神戸大学 工学研究科 教授

◎専門:圧電薄膜、センサ・アクチュエータ

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