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2019/1 Vol.122

【表紙の絵】
「素敵な薬を作る機械」
杉平 会利 さん(当時5歳)

私が薬剤師さんになったら、「素敵な薬を作る機械」を使って、患者さんの好きな色や形、好きな味や香りのする薬を作りたいです。虹色の薬を飲むと、心に虹が架かり晴れやかな気分になります。病気になったら素敵な薬を飲んで、心も体も元気になって欲しいです。

バックナンバー

特集 Diversity & Inclusion

多様な人財の活躍に向けて

渡部 道治〔(株)日立製作所〕

5年連続でなでしこ銘柄に選定

ダイバーシティの重要性が社会的に増している昨今において、女性の活躍に着目した評価指標として、経済産業省と東京証券取引所が実施している「なでしこ銘柄1」がある。日立製作所(以下、当社)は、5年連続で本銘柄に選定されており、評価のポイントとして取締役会のメンバー多様化の推進、多様な視点を経営へ反映させたガバナンス強化への取り組み、個人・職場単位での働き方の見直しの取り組みが挙げられている。

当社では性別・国籍・職歴・年齢・性的指向・価値観といった違いを「その人がもつ個性」と捉え、それぞれの個性を尊重し、各人の能力が発揮できるよう各種取り組みを行っている。本稿では筆者が代表して、当社の取り組みを紹介する。

女性活躍を推進する取り組み

当社では女性社員が活躍できる環境の促進策として、以下のような取り組みを行っている。

(1)トップコミットメント強化と数値目標

ダイバーシティ・マネジメントを重要な経営戦略の一つと位置づけ、経営幹部の強いコミットメントのもと、2020年度までに女性管理職を800人2とすることを数値目標に定めている。具体的な取り組みとしては、マネージャー層の女性従業員を対象としたミーティングや女性社外取締役との懇談会を実施している。

(2)女性活躍に向けた各種イベントの開催

若手女性社員向けのセミナーを開催し、入社の早い段階で自身のキャリアとライフイベントの両立を考える機会を提供している。また、「日立グループ産休前・復職支援セミナー」を定期開催し、対象者とその上司に対して、出産とキャリアの考え方、仕事と育児の両立に関するセミナーを行っている。

(3)仕事と育児の両立支援

図1に、当社の支援制度の概要を示す。通常付与される年次休暇に加えて、子1人あたり年間5日までの看護休暇が利用できる。また、従来からカフェテリアプランという個々人のニーズに合わせて多岐に利用できる費用補助制度があったが、2016年10月より、共働きまたはひとり親で仕事と育児を両立する家庭を対象に、子1人につき年間10万円の支援を行う制度を導入し、制度を拡充した。

さらに、横浜事業所において敷地内に託児所を設け、保育所の入所倍率が特に高い地域における受け皿を提供している。

 

図1 仕事と育児の両立支援制度

働き方制度の改革-執務場所の柔軟化を促進

従業員は各々の抱えている事情が異なり、それぞれに能力を発揮してもらうためには、時間や場所にとらわれない働き方を推進する取り組みが求められる。このため、2016年度よりタイム&ロケーションフリーワークを実現する取り組みが進んでいる(3)。代表的なものを以下に示す。

(1)IT環境の整備

自席以外での業務が可能なセキュリティPCを従業員に貸出し、在宅勤務などを行うことができる環境を整備している。さらに、会議のオンライン・ペーパレス化を推進するため、社内の無線LAN拠点の拡大、ヘッドセットの配布、各種アプリケーションの導入などを行っている。

(2)サテライトオフィスの整備

首都圏の複数の事業所内に拠点を設け、さらに日立グループ外の運営会社と契約することで、2018年1月時点で約40箇所のサテライトオフィスを設けている。各拠点には前述のセキュリティPCが導入されており、従業員は自宅や出張先の最寄りの拠点にて、業務やオンライン会議などを行うことができる。

進みつつある意識改革

筆者自身だけでなく、周囲でも在宅勤務の積極活用や、会議のオンライン化などが実践されており、意識改革が進んでいると実感している。今後も多様な人財が活躍できる会社になっていくよう、一従業員として貢献したい。


参考文献

(1)平成29年度なでしこ銘柄, 経済産業省 http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/pdf/H29fy_nadeshiko.pdf(参照日2018年10月19日)

(2)サスティナビリティレポート, 日立製作所 http://www.hitachi.co.jp/sustainability/download/pdf/ja_sustainability2018_print.pd(参照日2018年10月19日)

(3)近藤恭子, 日立グループの働き方改革, 日立評論, Vol.100, No.4(2018), pp.39-42.


<正員>

渡部 道治

◎(株)日立製作所 研究開発グループ 機械イノベーションセンタ 熱流体システム研究部 研究員

◎専門:流体力学、熱力学、伝熱工学

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