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2021/11 Vol.124

機構模型

工部大学校の「機械学」教育機器(機械遺産第100号)

機関車模型

年代未詳/ボールドウィン社製/フィラデルフィア(米)/真鍮、鉄、木製台座/

H250, W610, D180(mm)/東京大学総合研究博物館所蔵

「Baldwin Locomotive Works Philadelphia, USA Compound Locomotive Cylinder and Valve Gear S.M.Vauclains Patents 4o6o11, 4o6o12, 471836」の金属プレート付。このような模型が近代化の進められた機械学教育に用いられた。本模型の年代は未詳であるが、東京大学総合研究博物館には工部大学校を示すプレート付きの機構模型を含め、近代的な機械学教育のために明治期以降に導入された機器が現存する。

上野則宏撮影/東京大学総合研究博物館写真提供/インターメディアテク展示・収蔵

[東京大学総合研究博物館]

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ほっとカンパニー

日本クロージャー(株) キャップを通して消費者の安心・安全を守る

日本にはこんなすごい会社がある!

容器包装製造をコアとした東洋製罐グループ会社としてキャップの製造・販売を手掛ける日本クロージャー(株)。食料や医薬品、日用品など、あらゆるパッケージのキャップを各メーカーに提供することにより、消費者の安心・安全な暮らしを守っている。

同社は、1941 年1 月に帝国王冠として設立。王冠を主力製品として、戦時下においても軍需用に頼っての操業が行われ事業が継続された。戦後復興期を乗り越え、高度経済成長期には、特に清涼飲料水(コーラ・ジュース)の需要拡大で王冠やキャップ領域で急成長。容器形態やトレンドによって変化するさまざまなキャップのニーズに対応し続けた。

90年代後半になると、規制緩和により爆発的に増えたペットボトル飲料用プラスチックキャップの製造に力を入れ、現在では飲料用プラスチックキャップ国内市場において6 割のシェアを誇る。私たちがいつも手に取っているあらゆる製品のなかに、日本クロージャーのキャップが溶け込んでいるのだ。近年では、インド、インドネシア、ドイツ、タイ、中国へグループ企業を設立し、海外市場への展開も進めている。

日本クロージャーが手掛ける製品の一例

自社開発の金型でスピーディーかつ的確な製品提供に強み

容器形態や内容物、その充填方法によってキャップの種類はさまざまだ。日本クロージャーの強みは、自前で金型の開発・製作を手掛けている点。同社にて設計した図面をもとに社内の金型センターで加工を行う。金型設計を担当している製品開発部第1 グループのリーダー中村真によると、「金型センターのメンバーとは長年に渡って関係性を築いてきている。キャップを知り尽くした熟練技術者に、設計者の意図が正確に伝わることで、スピーディーかつ的確な金型部品の提供につながっている」という。製品開発に関わる設備や装置が充実している点も、日本クロージャーの特長である。技術開発センターの実験室には、顧客の充填ラインをシミュレーション可能な設備が充実している。製品開発部第2 グループのリーダー佐原亨は、同センターについて「他にも非破壊検査用の最新鋭X 線CT装置、容器が置かれたあらゆる環境の変化を想定した試験ができる環境試験器等、生産、充填、流通、消費までを対象とした試験機が充実している」と説明する。

開発センター充填室

X線CT装置

入社2年目に直面した現場の壁

神奈川県平塚市に事業所を構える製品開発部には、70名を超えるメンバーが所属しており、機械系や化学系の学部・大学院出身者、東洋製罐の創設者 高碕達之助氏が創立した東洋食品工業短期大学の出身者と、そのバックグラウンドは多様だ。製品開発部 部長 熊田光雄は「新卒社員の育成を基本方針としているため、メンバーは入社後にパッケージの種類や製造工程を初めて知るという人がほとんど。入社時に特別なスキルを持っている必要はなく、誰にでも活躍の場がある」と話す。

入社4年目の製品開発部第2グループの小原怜子も、その一人だ。小原は入社2年目にパウチ用キャップの開発を進めていくなかで、顧客の充填ラインにおいて、安定してキャップを巻締めできないという問題に直面した。「社内の試験機(キャッパー:キャップ巻き締め装置)では特に問題は見られなかったが、なぜお客様の工場ではうまく行かないのか、原因調査に手間取り苦しかった」と当時を振り返る。

顧客の工場のキャッパーでは、現場の環境などさまざまな条件を考慮してキャップの巻締めのスピードや力加減などの微調整を行う。自社に持ち帰り、工場の環境を再現したり、パラメータの設定を見直したりして検証を進めていったところ、環境温度に主な原因があることを突き止めた。小原は「社内では肌寒い環境で試験を行ったが、お客様の工場では温かい環境で稼働していることに気付いた。問題を持ち帰り約2 週間で検討し直して、改めてお客様のところに提案したところ上手く行きました」と説明。そのうえで、「どのような問題が発生しても柔軟に対応できるよう、キャップや現場環境のことをもっとよく理解しなければならないと感じた」と、知識やノウハウを学び続けることの重要性を痛感した体験を語る。

笑い声の絶えない職場で開発の苦難を乗り越える

小原のような若手社員でも責任感を持って活躍できるのが、日本クロージャーの製品開発部の特徴だ。若手のチャレンジを推奨する環境も整っており、実際に小原は新入社員のときに、日本国内だけを見ていてはわからない海外企業の取り組みを現地で体感してみたいという思いから、シンガポールで開催されたイノベーション関連の国際会議に自ら手を上げて参加している。

組織内の風通しもよくコミュニケーションが活発に行われており、その結果として、日本クロージャーの技術や製品のクオリティが生み出されている。小原は「笑い声が絶えず、いつも楽しい雰囲気がある。開発は思うように進まず苦しい場面もあるが、人間関係が上手くいっているので、楽しく仕事ができている」と笑顔を見せる。

SDGsに向けてプラスチックとの付き合い方を再考する

SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)への関心が高まり、二酸化炭素の排出量削減やエネルギー消費削減など環境問題への企業の取り組みが重要視されるなか、日本クロージャーでも近年、これからの時代のプラスチックとの付き合い方について検討を進めているという。

たとえば、2020年4月には、バイオマス材料を30%配合した飲料用ペットボトルのキャップを提供開始。今後はバイオマス材料の比率をより高めるとともに、他用途のキャップへも展開していく予定だ。

また、使用済みキャップのリサイクル実現に向けた研究開発にも取り組む。使用済みキャップを再利用するためには、回収・分別システムの構築や、食品用材料としての衛生性確保などさまざまな課題があり、1社のみでは解決することが難しい。そこで、日本クロージャーは2021年8月、異業種連携によるペットボトルのリサイクル促進に向けた取り組み「自動販売機リサイクルボックス異物低減プロジェクト2021」への参画を発表。新機能のリサイクルボックスを用いた実証実験を、他企業や行政、業界団体と連携しながら進めていくとしている。

新機能のリサイクルボックス

大手ブランドを支える責任感のある仕事が最大の魅力

製品開発部のメンバーに仕事のやりがいについて聞いたところ、佐原は「普段一緒に仕事をしているお客様は食品・飲料大手など誰もが知っている企業やブランド。パッケージは商品自体の価値を高めるものであり、キャップを通して消費者の安心・安全を提供するという責任感がある。この責任感が、日本クロージャー製品開発部の最大の魅力」と答えた。

日本クロージャーはこれからも、メーカーと消費者とをつなぐ架け橋として時代のニーズに合わせたキャップの在り方を追求し、挑戦を続けていく。

(写真左から佐藤、小原、熊田、佐原、中村)

(取材・文 周藤 瞳美)


日本クロージャー(株)

本社所在地:東京都品川区 https://www.ncc-caps.co.jp/

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