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2022/5 Vol.125

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特集 技術革新をもたらす複合材料技術

革新的将来宇宙輸送プログラムにおける複合材料研究

紙田 徹〔(国研)宇宙航空研究開発機構〕

はじめに

我が国の宇宙輸送システムの継続的な自立性を確保した上で、2040年代前半までに抜本的な低コスト化などを含めた革新的技術により将来宇宙輸送システムを実現するとともに、民間事業者が主体的に事業を展開することで、自立した宇宙開発利用を飛躍的に拡大させ宇宙産業を我が国の経済社会を支える主要産業とすることを目的として、文部科学省において革新的な将来宇宙輸送システム実現に向けたロードマップ(基幹ロケット発展型と民間主導による高頻度往還飛行型宇宙輸送システム)が設定された(図1、図2)。その実現に向けスピード感のある研究開発として、宇宙航空研究開発機構(JAXA)において革新的将来宇宙輸送プログラムを開始している。

これらの輸送システムはいずれも第1段を再使用するものであり、これまでの使い切りロケットと比較し帰還に必要な機能を付加する必要があることから、機体構造に対していっそうの軽量化・低コスト化が求められ、その実現のために機体各部の複合材料化に向けた研究を行っている。

また、研究実施にあたっては、これまでのJAXA主導の研究のみでなく、抜本的な低コスト化、新たな技術獲得に向け、非宇宙分野の民間事業者との「オープンイノベーション共創体制」を構築して共同研究を実施するとともに、研究開発を通じて得られた最新の知見・技術などの成果を宇宙分野・非宇宙分野の民間事業者へ移転して活用・波及するDual Utilizationの促進を図る活動も開始している。

そこで、これまでJAXAで実施してきた機体構造の複合材料化研究の概要と革新的将来輸送プログラムにおける研究方針について紹介する。

図1 革新的将来宇宙輸送システム実現に向けたロードマップ

図2 2030年-2040年頃の利用像とシステム案

 

複合材料極低温推進薬タンク構造

ロケットの再使用のためには従来の使い切りロケット以上の軽量化が機体構造に要求され、構造質量の大部分を占める推進薬タンクのCFRP化が望まれている。これまでの複合材料圧力容器は、気密性を確保するために金属製または樹脂製のライナが用いられてきたが、直径数mを超えるサイズの大型ロケット用推進薬タンク用のライナの製造には、タンクの製造とほぼ同等の費用が掛かることが見込まれ、機体の低コスト化と両立することが困難である。また、軽量化の観点からもライナを用いないライナレスタンクを実現する必要があると考えている。大型の極低温CFRPタンクの研究開発に関して先行している米国においても、NASAが中心として研究開発を進めており、ライナレスタンクの適用を検討している。図3にNASAの試作例を示す。

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