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2022/5 Vol.125

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特集 技術革新をもたらす複合材料技術

炭素繊維強化プラスチックのリサイクル材と真空成形への応用

長井 聡〔三菱ガス化学トレーディング(株)〕・河井 政貴〔金井重要工業(株)〕漆原 和告〔(株)漆原〕・淺野 友軌(日本大学)

はじめに

炭素繊維は軽量で且つ高い強度を有することから、金属代替材料として航空機、自動車、風力発電、スポーツ用具など多方面で利用されている。しかし、炭素繊維そのものの製造工程で大量のエネルギーを消費することから、地球温暖化の原因とされる温室効果ガス(二酸化炭素)の排出量も無視できない。炭素繊維を使用した製品のライフサイクル全体を通して考えると、軽量化効果により二酸化炭素排出量を大幅に低減できるメリットの方が大きく、今後の需要の拡大も予想されている。一方で、使用済の炭素繊維複合材料の大半はリサイクルされずに埋め立て処分となっているのが現状である。熱分解法、溶剤溶解法、酸アルカリ分解法など各種方法が検討されている(1)が、いずれの方法も再生繊維の品質やそのばらつきに課題を残しており、再生炭素繊維を用いた最終製品の数は多くない。炭素繊維の特長である繊維長を長く残しつつ、複合材料原料として再生する方法を検討していく中で、炭素繊維不織布は多くの炭素繊維複合材料の中間基材となり得ると期待されており、各種の成形方法が開発されている。

有機繊維混繊不織布の加工方法としては、不織布を成形品の形状に裁断し直接熱プレスして成形する方法、不織布を熱プレスで平板状に加工し、炭素繊維強化熱可塑性プラスチック(CFRTP)シートとして、これを中間基材として成形する方法などがある。CFRTPシートとした場合には、裁断した後に熱プレスで賦形する方法のほか、熱プレス機と射出成形機の両方の機能を有するハイブリッド成形機でリブやフレームなどと一体で成形する方法を用いることも可能となる。しかし、いずれの場合も金属型を用いることで、金型費用が高価となり、多種多様な成形体を安価に製造するには適していない。

筆者らは、CFRTPシートをより安価に成形する方法を検討し、深絞り可能な真空成形用の型として、3Dプリンターで成形した樹脂型を開発した。この3Dプリント樹脂型を用いたCFRTPシートの真空成形に着いて述べることとする。

 

リサイクル炭素繊維混繊不織布

今回、CFRTPシートの元となる材料としてリサイクル炭素繊維とポリアミド6繊維を混繊した不織布を使用した。図1に示すが、不織布とは読んで字のごとく「織らない布状のもの」を指し、不連続な繊維を一定方向またはランダムに集積し、化学的、機械的に結合させてつくる。

図1 CF不織布

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