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2018/10 Vol.121

A mine arms
菅原 紡宜 くん(当時11 歳)
深海の生物と共生して、生態の謎を解き、深海生物の不思議な力を集めて、地上で使える新しいエネルギーに変換できる機械。
地底からレアメタルを採掘したり、海底火山の調査から地震を予知することもできる機械。

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特集 地球環境の変化を知る―技術はどのように貢献するか―

海洋環境変化の自動観測-現状と期待

河野 健(海洋研究開発機構)

はじめに

近年、海洋環境変化についての国際的な関心が高まっている。2015年6月にドイツで開催されたエルマウサミットでは、首脳宣言の中に「海洋プラスティックごみへの対処」と「深海底鉱業における予防的手法と環境調査の必要性」が盛り込まれている(1)。そして2015年10月にベルリンで開催されたG7科学技術担当大臣会合では、地球上のあらゆる海域において、人間社会のインパクトにより、海洋酸性化、昇温、貧酸素化、海洋生物多様性の喪失、海洋生態系の劣化など、海洋環境が変化していることを認識し、継続的な議論とG7間における最も効果的な国際協力のためのプロポーザルを作成することが合意された(2)。これを受けて2016年5月につくばで開催された科学技術担当大臣会合では、海洋観測の強化が謳われた(つくばコミュニケ)(3)。また、2015年9月には国連において17の持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals)が採択されたが(4)、その中には海洋に関するもの(Goal 14)があり、海洋汚染や酸性化に対する目標が設定されている。国連においてはこの他にもWorld Ocean Assessment(5)の第2ラウンドが進行中である。これらの活動には科学的根拠が必要で、そのための観測データが必須であることは言うまでもない。そこで、海洋を効率的かつ正確に計測する技術開発が求められている。

現場観測の方法

海洋観測の手法とそれぞれの長所・短所

海洋の現場観測は大別すれば、三つの方法で行われてきた。船舶による観測、観測機器を海洋中に設置し定点で観測を行う係留観測、観測機器を漂流させて観測を行う漂流フロート観測である。それぞれに長所と短所がある。船舶観測は現場において採水し分析することが可能であるため、測定項目は多く精度も高い。しかし、比較的時間を要し、船舶の運航費用も高く、観測船の総数が限られていることなどから観測の頻度は高いとは言えない。係留観測は時系列データの取得が可能という利点をもつ反面、空間のカバレージは低く、また測定はセンサーによらざるを得ないため、精度は化学分析に比して高くはないし、センサーによって計測可能な項目しか観測できない。漂流フロートはその中間に位置し、ある程度の空間をある程度の頻度でカバーするが、フロートに搭載できるセンサーには限りがある。海洋観測は、その目的に応じてこれらの三つの手法を組合せて実施される。

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