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2018/10 Vol.121

A mine arms
菅原 紡宜 くん(当時11 歳)
深海の生物と共生して、生態の謎を解き、深海生物の不思議な力を集めて、地上で使える新しいエネルギーに変換できる機械。
地底からレアメタルを採掘したり、海底火山の調査から地震を予知することもできる機械。

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特集 地球環境の変化を知る―技術はどのように貢献するか―

AUV:自律型海中ロボット

巻 俊宏(東京大学生産技術研究所)

海中ロボット

人が直接行くことのできない海中を探査するために、海中ロボット(海中探査機、海中ドローン)は必要不可欠なプラットフォームである。本章ではまず海中ロボットの概要を紹介し、その中でのAUVの位置づけを紹介する。

海中ロボットには、人が乗り込んで直接操縦する有人潜水艇(HOV: Human Occupied Vehicle)、ケーブルを介して人が操縦する遠隔操縦ロボット(ROV: Remotely Operated Vehicle)、そして人が操作せずに全自動で行動する自律型海中ロボット(AUV: Autonomous Underwater Vehicle)の3種類がある。HOVは人が直接海中に行けるという利点があるが、人が乗るために大型になることと厳重な安全対策が求められることから、運用コストが大きい。このため、運用者は大規模な研究所や海底油田産業などに限られている。ROVはテザーケーブルを介して人が操縦するタイプであり、HOVよりは手軽でありながら、人が操縦するため複雑な作業も可能である。世界最深部まで行ける大型のものから、クレーン無しで運用できる小型のものまでさまざまな種類があり、3種類の海中ロボットのうち現在最も普及している。ちなみに最近話題の「海中ドローン」は小型ROVに該当するものが多い。AUVは人が操縦せずに全自動で行動するロボットである。最大の利点はテザーケーブルが無いことであり、これにより行動範囲の制限を受けず、また波や流れの影響を受けずに安定した観測ができる。ケーブルのハンドリング装置や操縦室といった支援設備も最小限で済むため、ROVよりも運用コストが小さい。また、支援船無しでの運用や、複数同時運用による効率化などのポテンシャルを秘めている。

海中ロボットはその特性に応じて、図1のように使い分けられている。簡単な作業の場合、ロボットを使うまでもない。例えば水温を測りたい場合、船から温度計を吊り下げるだけでよい。そのまま船を走らせれば広域の水温計測ができるし、温度計の代わりにソーナーを引っ張れば海底地形調査ができる。このように船で曳航するプラットフォームをTow fishと呼ぶ。海底の写真撮影やサンプリング(岩石や生物などを取ってくること)においては海底近くまで接近する必要があるが、Tow fishだと海底に引っかかる可能性があり、危険である。そこで人が操縦するロボットの出番である。一方でバルブの開け閉めといった海中での操作(マニピュレーション)や、工事などにおいては、まだ人間が直接潜らないとできない作業もある。AUVは全自動で活動するため観測効率はよいものの、トラブル対応も含めて人間の支援なしでこなす必要があるため、その用途は今のところ水質調査や音響による地形探査など、比較的簡単な作業に限られている。

図1 海中ロボットの役割分担

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