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2018/10 Vol.121

A mine arms
菅原 紡宜 くん(当時11 歳)
深海の生物と共生して、生態の謎を解き、深海生物の不思議な力を集めて、地上で使える新しいエネルギーに変換できる機械。
地底からレアメタルを採掘したり、海底火山の調査から地震を予知することもできる機械。

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ほっとカンパニー

(株)エクセディ 「攻め」の姿勢で世界トップを走る駆動系メーカー

燃費とアクセルレスポンスを高次元で両立する低車速ロックアップトルクコンバータ

日本にはこんなすごい会社がある

1950年設立のエクセディは、トルクコンバータやマニュアルクラッチなどの自動車用駆動系の専門メーカー。1995年にエクセディに社名変更をした。その由来は、エクセレント&ダイナミックから。「卓越した力強い会社」という想いを込めた名前だ。

トルクコンバータのシェアは世界1位、その他でも世界トップクラスのシェアを占めている。現在は、世界25カ国44社で展開。取引先は世界中のあらゆるカーメーカーだ。

同社では、会社の行動規範を10カ国語で発行。社名の由来からスローガンの意味、会社の方針を全従業員に渡し、これを徹底的に浸透させている。特に重要なのは優先順位だ。そのスローガンが「安全⇒品質⇒ドンピシャ(必要なものを必要な時に必要な分だけ)⇒コスト」だ。何においても一番重要なのが安全第一。安全第一で進めることで、品質が安定し、ジャストインタイムで計画が進められ、結果的にコストもかからないという考え方だ。

トルクコンバータとダンパー

主力製品のトルクコンバータは、主に自動車のオートマチックトランスミッション向けの部品で、エンジンとトランスミッションの間に配置される流体の力学的作用を利用した発進装置である。その機能は、エンジンの回転力で液体を回転させながら動力を伝えること、トルクを増幅させることにある。

近年、自動車の低燃費化が進む中、低燃費対応のトルクコンバータのニーズが高まっている。同社先行開発部長の河原裕樹は「具体的には、トーラスの羽根の性能が挙げられます。また流体解析によって、他社よりいち早く小型・薄型かつ高性能を実現できました。その結果、全体としてはサイズダウンしながら高性能なダンパーを併用できることで、競争力の高い製品ができました」と言葉を続けた。

また、燃費向上のために走行状態に応じてエンジンとトランスミッションを、流体を介さずに直結し、エンジン性能に応じてエンジンの振動と騒音を吸収するのが、バネの力を使ったロックアップダンパーだ。ねじれ作動角を広くとることで振動を低減させることができる。さらに最近、補助質量とバネを利用して、大幅に振動を低減できる製品の量産を開始した。先行開発部主任技術員の北田賢司は「ダンパーもトルクコンバータ同様、小型化と高性能化が求められています。当然、要求事項が増えるほど内部の部品の密度が高くなり、重くなります。そこをいかに軽量化するか。それを実現しているのが我々の解析力と技術力です」と胸を張る。

エンジンとトランスミッションを直結し、振動や騒音を吸収するロックアップダンパー

海外での失敗を糧に培われた「提案力」

トルクコンバータで世界シェアトップの同社は、「お客様のニーズを100とすると120を出せるものを提案できる。対応力と設計モデル、解析、実験などの能力の高さが評価されている」(北田)。また、独立系メーカーの強みとして、取引先が世界中のさまざまな完成車メーカーや変速機メーカーであることも挙げられる。「常に製品の改善ができ、各社のニーズを知っているからこそ、お客様の“かゆいところに手が届く”提案ができる点も大きい」(河原)。

開発部門が今のような積極的な姿勢に変わるきっかけがあった。かつては黙っていても注文が入っていた時もあり、「今思えば、ニーズを先取りする技術開発のモチベーションがそれほど高くなかったのかもしれない」と技術管理部の川村貴が思い返す。そこに喝を入れることになったのが、北米での取引を一つ失ったことだった。「皆で何が良くて、何がダメだったのかを徹底的に整理しました」(河原)。当時も客先からの品質の評価は高かった。しかし、技術力、対応力はライバルに比べて下回る場合があり、さらにはプレゼンテーション力が不足している点も痛感したという。河原は「かなり発奮し、そこからリスタートを切ったと感じる」と振り返る。以降、試作品をさまざまな車に載せ、改善された車両性能のデータを持って提案に回るというスタイルを1〜2年続けた。

現地に拠点を展開することで、顧客とフェイス・トゥ・フェイスで話ができる体制ができたことも大きかった。「個人間の信頼関係が重視されるのも北米の特徴。信頼を得られれば、電話1本でビジネスの話もきます」(河原)。

2017年にアメリカで設計開発に従事していた北田は、仕事の違いをこう語る。「日本との違いはスピード感の重視。また、北米では最初に試作品を出してから詳細を詰めていく日本と逆のスタイルなので、最初は戸惑いました」。河原は「逆に、コンセプト段階でも思いを伝えることで、自分たちの可能性をアピールできます。その分、振り向いてもらえるチャンスも増えると考えています」と力強く語った。

今回、取材に協力いただいた河原さん(左)と北田さん(右)

電動化への対応

いずれ来るEV化に対しては、「その変化をチャンスと捉えて進めていく」というのが同社のスタンスだ。ただ、本格的なEV化はまだ先の話。同社の現段階での電動化技術の一端として挙げられるのが、17年に展示会でプロトタイプを発表した「ダイレクトドライブiSG」。これはクラッチやトルクコンバータの外周にスタータジェネレータを搭載し、ベルトを介さずにエンジンとダイレクトにつながる構造が特徴。燃費向上やコスト低減、スペース面での優位性を狙っている。

欧米での国際会議でも積極的に発表するようになったのも、近年のことだ。その結果、「ビジネスが良いサイクルで回っているなと感じる」と、北田は手応えを話した。

技術力と対応力とスピード──いずれの能力にも自信があるからこそ、積極的に勝負していける。そんなエクセディの誇りを感じた時間だった。

(取材・文 横田 直子)

2018年5月「自動車技術展:人とくるまのテクノロジー展 2018」に出品したダイレクトドライブiSGと自主製作した小型EV(共に参考出品)


株式会社エクセディ

本社所在地 大阪府寝屋川市

http://www.exedy.com/ja/index/

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