日本機械学会サイト

目次に戻る

2020/1 Vol.123

表紙写真 北原一宏
撮影地協力 日本工業大学 工業技術博物館

表紙の機械は、本田技研工業が1959年に4輪車用エンジンの歯車を製造するために同社の鈴鹿製作所に設備導入した6ステーションを有するロータリ形のホブ盤で、米国のリーズ・ブラッドナー社製である。この工作機械は、日本の自動車産業の発展に大きな役割を果たした機械と言える。

バックナンバー

会長挨拶

未来を見据え、我が国の工学を牽引する学会に

会長新年挨拶

会員の皆様におかれましては、よい新年をお迎えされたこととお喜び申し上げます。

昨年は、地球温暖化に起因するとされる気候変動により、厳しい現実が突きつけられました。一昨年の西日本における7月豪雨に続き、昨年9月には台風15号、さらに10月の19号により、東日本に甚大な被害をもたらしました。大雨特別警報が数多く発令されましたが、災害を避けることができませんでした。当該地域にお住まいの皆様にはお見舞い申し上げると同時に、災害からの速やかな復旧をお祈りしています。

一方で、ノーベル化学賞を受賞した旭化成(株)の吉野彰先生らによるリチウムイオン電池の開発は、改めて世界中の注目を集めました。特に、企業の技術開発に対しての受賞は貴重なものです。この電池の技術は、機械工学でもその恩恵を受けるところが大きく、5Gを中核とする情報技術革新と相まって機械としての境界をさらに広げることが期待されます。ノーベル賞の受賞者数は2000年代に入って世界ではアメリカに次ぐ二位との報告もありますが、一方で、我が国の科学技術論文の総数はいわゆる先進国のなかで際だって減少しており、科学技術研究、特に基礎研究の衰退が懸念されている状況にあります。

社会では、ラグビーの第9回ワールドカップが我が国で開催され、日本のチームが世界の強豪チームと対戦し、初めてベスト8に進みました。他のスポーツの世界では、サッカーでも体操でもフィギュアスケートでも、若い世代の活躍には目を見張るものがあります。学問、技術開発の世界でも、若手の研究者や技術者の皆さんが世代交代を促すことにより主導権を獲得して、新しい研究成果を生み出し、益々ご活躍されることを期待しています。

日本機械学会では、今期の重点課題として(1)全てのステークホルダーへの情報発信と価値の提供(2)若手人材の育成(3)10年ビジョンに基づくアクションプランの着実な実行、の3点を挙げて取り組んでいます。学会員の皆様が、学会に所属する価値を認めていただくような各種の行事の実施を含む改革を行い、総合工学としての学会の意味合いが強い日本機械学会が中心となって我が国の工学を牽引する役割を担いたいと思います。また20年後、30年後を見据えて、学会の魅力を若い方々に発信することで若手研究者、技術者の活躍の場を提供したいと思います。さらには、アクションプランの実行例として、部門活動の活性化を目指して新部門制の検討を継続し、集会行事については年次大会の大幅な改革を行う一方で他学会との連携強化を進めます。また、日本機械学会学術誌および講演論文集の課題を整理して、学術誌の活性化に向けた検討を開始しました。これらの改革は不断の努力を必要とするもので、今後とも継続したいと思います。

本年も日本機械学会のさらなる発展のために、会員の皆様のより一層のご協力をお願いいたします。

2019年度(第97期)会長 森下 信

キーワード: