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2017/1 Vol.120

【表紙の絵】
「ハッピーハッピーマシーン」
中村 遼くん(当時5 歳)
作者のコメント:
人の心を傷つける人や、けんかばかりする人をハッピーハッピーマシーンが吸い
とってくれて、心のきれいな人に産まれかわらせてくれるよ。
みんなが幸せになってほしいな。

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おもしろイベント報告②

理科系学生を育成する! エンジンの分解・組立てに挑戦!

身近な機械=エンジンを知る機会

かつて、自動車は若者のあこがれの的であった。しかし、今の時代、車はシェアするもので、所有するものではなくなりつつある。エンジンも、昔はよく壊れた。必然的に、エンジンのことを詳しく知る人は多かった。が、今はめったに壊れない。また、エンジンの機構は電気化・IC 化し、常人の触れられないもの=ブラックボックスとなりつつある。工学離れの問題もある。ならば、エンジンの分解・組み立てを、高校生に体験させられないか?
本企画は作年8月に開催された福井大学オープンキャンパスの中で、高校生を対象として実施された企画である。エンジンの分解・組立てをとおして、普段触れることのないエンジン内部に触れ、構造・仕組み・動きを理解するとともに、機械および機械工学に対する興味と関心をより高め、高校生に機械工学に関する学科への進学を進路のひとつとして考えてもらうことを目的としている。

 

 

熱心に作業に取り組む高校生とスタッフ

タイトル エンジンの構造・仕組み・動き
開催日時 2016 年8 月9 日
開催場所 福井県福井市・福井大学文京キャンパス
主催者 福井大学工学部機械・システム工学科
主な対象 高校生
主な作業 エンジンの分解・組立て
参加人数 35 名

エンジン、スタート!

用意したエンジン

 

ここまで分解

シリンダーブロックまで、分解

分解・組立てに取りかかる前にエンジンの構造や原理についてスライドを用いて説明し、エンジンと機械工学との関連性についても解説を行った。次に、エンジンの各部品の構造および仕組みと工具の使い方について解説を行った。
その後、5 グループ(1 グループ6 ~ 7名程度)に分かれ、教職員および学生がサポートしながら、作業を進めた。エンジンは、ホンダスーパーカブ(50cc)のものを5台準備した。生徒たちは慣れない手つきではあったが、配布した手順書に従い、エンジンを分解していった。
今回のイベントではシリンダーブロックの取り外しまでを行った。その後、再び元の状態に組み立てた。作業が進むにつれ工具の扱いにも少しずつ慣れ、組み立てが非常にスムーズに進んでいたグループもあった。
組立て後、エンジンを屋外に運び、エンジンオイルを注入し、エンジンを始動させた。残念ながら1台は始動させることができなかったが。残りの4台は無事始動させることができた。始動後はスロットルにつながったワイヤを生徒に引かせ、スロットルが開くことで、混合気の吸入量が増えてエンジンン回転数が上がることを解説した。
大きなエンジン音にびっくり 高校生たちは、慣れない手つきながら熱心に取り組み、分解した部品を手で触れ、興味深げに観察しながら各部品の役割の説明を聞いていた。また工具の説明では、分解する部品によって作業しやすい工具があることを理解し、実際に自分の手を動かし納得しているようだった。我々のサポートもあったが、実際に自分たちの手でエンジンを分解し、組み立てられたことに満足しているようだった。始動の際にはマフラーを付けていない状態であったため、普段聞くエンジンの音よりも大きな音であるためか、驚いていた生徒もいた。参加者にとってはどれも新鮮な体験であったように思う。
高校生諸君の熱心に取り組む姿が印象的であった。また、アンケートの結果からも、機械工学への関心の高さを感じられた。短時間ではあったが、高校生にとって普段触れることの少ないエンジンの分解・組立てをとおして、機械工学全体に対するより具体的なイメージを喚起する機会を提供できたと思う。理科系学生を一人でも増やしたい。今回のイベントに参加した高校生の大学進学へのモチベーションを高めることができたならば幸いであり、機械への興味や関心を持ちつづけて機械工学への道を志してくれることを願う。

吉田 達哉(福井大学)

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