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2019/4 Vol.122

【表紙の絵】
魚が空を飛べる「まく」をつけるそうち

山本 波璃 さん(当時9歳)

魚は水の中でしか、生活ができないけれど、 このそうちでまくの中に入ると、水の外で も生きていけます。そうすればいっしょに 魚たちと遊べます。

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ソフトロボット学

体幹の“しなやかさ”をつくる

望山 洋(筑波大学)・郡司 芽久(国立科学博物館)・新山 龍馬(東京大学)

はじめに

ソフトロボティクスは「柔軟材料に特有の機械的・電気的・化学的性質を積極的に利用したロボットシステムに関する学問分野」である(1)。生物の身体の多くの部分は柔軟材料で構成されているので、生体はソフトロボットの手本となり得るが、生物そのものを複製することは不可能である。そこで、生物の体の構造を深く理解したうえで、生体構造の要素を抽出し、生物の良さを活かした機構を持つ人工物を作ろうとするアプローチをとる。

本研究では、動物の体幹に備わるしなやかさ(=柔軟だが折れにくく弾力のある性質や、動きや姿がなめらかなさま)に着目し、ソフトロボティクスにおける身体の設計論の観点から、その原理の解明を目指している。ロボティクスと生物学の協働によって体幹のしなやかさの原理に迫ることは、動物解剖学に新たな視点を提供すると共に、従来のロボティクスの枠を超えた、機構や現象の発見をもたらすと期待できる。例えば、ダチョウはその長い首を巧みに操作して、地面の小さな餌を素早く掴むことができるが、その際、地面との接触を許容しながら、身体を損壊することもなく、首尾よくピッキングタスクを実現している(図1)。このようなダチョウが身に付けているさり気ないしなやかさをロボットに実装できれば、高い環境親和性をもつ新しいタイプの協働ロボットが実現できるであろう。本解説では、体幹のしなやかさに関する本研究のアプローチについて紹介する。

図1 地面の上の小さな餌を素早くむダチョウ

体幹のしなやかさを活かしたマニピュレーションの好例である。

(茨城県石岡市「ダチョウ王国・石岡ファーム」にて撮影)

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