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2019/4 Vol.122

【表紙の絵】
魚が空を飛べる「まく」をつけるそうち

山本 波璃 さん(当時9歳)

魚は水の中でしか、生活ができないけれど、 このそうちでまくの中に入ると、水の外で も生きていけます。そうすればいっしょに 魚たちと遊べます。

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ソフトロボット学

「成長」する機械をめざして

清水 正宏(大阪大学)・梅舘 拓也(東京大学)・細田 耕(大阪大学)・小椋 利彦(東北大学)

はじめに

本研究の目的は、生きている細胞を部品とするロボットを構築することで、成長するバイオソフトロボットを実現することである。機械自体が自己改変する身体的可塑性を有することが大きな特徴である。生物は、自己の運動が機械的な刺激を作り出し、それに細胞が生理学的また物理学的に応答して、形態と機能が同時発生的に改良される。そこで本研究は、生体素材である細胞をロボットのソフトでインテリジェントな部品として直接組み込み、自律分散システムとして実装することで、機械系も制御系も成長する知能ロボットを実現する。そのため本研究は、「生体情報の直接実装が、成長するロボットをつくる」ことに必要な条件を明らかにする役割を担う。

バイオソフトロボットを達成するためには、細胞群の機能を統合し制御する技術の創成が必要不可欠である。具体的には、筋細胞をターゲットとすることで、細胞自身がアクチュエータの機能のみならず、センサ、CPUの役割も果たす系の機能創発の発現機序を解明する。このセンシング・判断・運動を混然一体なものとしてシステムの設計が可能となる点が、生体素材を用いることで初めて可能となるソフトロボット学に重要であり、かつ、筆者らに特徴的な着眼点である。バイオソフトロボットは、機械的な柔軟性のみならず、生体本来の能力に基づく「システム全体が柔軟に自己改変する」能力を提供する。従来推進されてきた生物と工学の融合研究では、多くの場合、ロボットを開発するための生物学研究、もしくは生物を理解するためのロボット工学研究として、結局はどちらか片方の学問に取組むのみであった。このような現状に対して、生物材料の成長・自己修復まで含めた、生体と機械をつなぐ自律分散制御を構築することで、真に領域の境界部分を推進する、世界に類を見ない、生物・ロボットのインタフェース学を拓く。

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