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2019/6 Vol.122

【表紙の絵】
ソーラーケータイじゅう電システム

石井 智悠 くん(当時8 歳)

この前あつかったので、ケータイがあっつくなっていたので「そのねつをうまくつかってじゅうでんできたらな。」と思ったのでこの絵を描きました。

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ほっとカンパニー

(株)ツガミ 小型超精密加工技術を持つ工作機械の総合メーカー

日本にはこんなすごい会社がある!

設立は1937年。80年以上の歴史を誇るツガミは、小型超精密工作機械の総合メーカーだ。ミクロン単位での加工を可能にするCNC高精密自動旋盤をはじめ、研削盤、マシニングセンタ、転造盤など、多種類の工作機械を手がけている。同社のスローガンでもある「高精度」「高速」「高剛性」のものづくりに定評があり、特に自動旋盤では国内外で高いシェアを誇っている。

海外売上比率が約8割を占める同社は、3箇所の生産拠点を設けている。ボリュームゾーン製品を生産する中国やインドの拠点に対し、今回訪れた長岡工場(新潟県長岡市)では、欧米や国内向けのハイエンド製品を手がけている。

ゲージブロックの生産・研究から始まった同社が、現在の事業の源流となる製品、T-7形「主軸移動型自動旋盤」を製造販売したのは1957年のこと。驚くべきことに、T-7形は販売から60年以上経った今も客先で稼働していると言い、その耐久性とシンプルな構造をうかがい知ることができる。同社の開発・製造を率いるCo-CTOの風間浩明は、「T-7形はよく作られていると感心します」と胸を張った。「ツガミが誇る『小型』『高精度』は、先輩方の作ってくれた基本構造があってこそです。」

今回訪れた長岡工場。1937年、長岡市で会社が設立された。

NC精密自動旋盤はミクロン単位を追求

高速・高精度の加工を可能にするツガミの主力製品がCNC精密自動旋盤だ。通常の旋盤では加工する部分を突き出し、切り出していくが、小型部品は刃物を当てた際に材料がたわんでしまう。そのために主軸と刃物の間にガイドブッシュを挟んで、工具の手前で材料を支える。この機構を持っているのが、CNC精密自動旋盤と呼ばれるものだ。

ツガミの自動旋盤が優れている点は、加工の際の熱変位を最小限に抑える工具の配置、高速加工での振動を押さえ込む剛性の高い鋳物脚により長時間安定した精度の加工ができることにある。主に高精度が求められる時計や携帯端末、光通信、医療機器、自動車部品など、幅広い製造現場で重宝されている。その中で微細精密部品加工に最適な「P0」シリーズの材料径は3mm以下で、加工部品はΦ0.05mm以下の部品もある。主に、半導体部品や時計等の小物部品製造に使われるという。「小型のものを高精度で量産加工する。これがツガミの得意とするところです。」(風間)

驚異的な高精度加工を可能にしたのは四つのポイントだ。一つ目が、主軸と背面主軸にチャックレバーやトグル、サラバネなどを持たない独自のチャック開閉機構。これにより、高速回転時における真円度を向上させている。二つ目が、高速回転を可能にするエアーチューブレス構造の採用。三つ目が、熱による影響を抑えるための対称構造の高剛性脚、そして四つ目が、芯高変位を自動測定する主軸0補正のシステムだ。「少しでも熱変位があれば芯高がずれてしまう。数ミクロンずれただけで径が変わってしまうので、致命的です。熱変位は1ミクロン単位で管理しないと、安定した加工ができない。ここまで超高精度を要求されるのが、微細精密部品、量産加工の世界です。」(風間)

自動旋盤ツーリングゾーン

 

長岡工場組立ライン

省スペース・省人対策で伸びる複合機

小型高精度機の一方、複雑形状の部品を一台の機械で完品加工ができる「ターニングセンタ」も得意としている。「SS38MH」シリーズは、CNC精密自動旋盤とマシニングセンタ(工具の自動交換機能を備え、多種類の加工を連続で行える複合型工作機械)が融合した生産型複合加工機である。工具主軸によって、バー材から複雑形状部品を完品加工できる製品であり、複雑形状加工を可能にするのが、同時5軸制御機能。工具主軸により従来の自動旋盤ができなかった加工が可能になり、複雑形状部品の加工がこの一台で完結する。複合型は特に欧米でニーズが高いという。

また、TMAシリーズも引き合いが多くある。旋盤加工とマシニング加工を1台でこなす複合加工機で、旋盤の中にミーリング機能をもたせ、ワンチャックで複数の面を加工できることから、これまで旋盤とマシニングセンタ2台で加工していたものが1台に集約できる。また、工程間に人手を介さないため、不良の削減につながる点も好評の理由だ。

これらの複合的な機能を備えた機械を使って、設備台数の削減、ラインの小型化を提案している。

微細精密部品の加工に特化したP01 シリーズ 写真下はP034

 

バー材から複雑形状加工を量産できるSS38MH-5AX

活発な意見交換と積極的な改善への意欲

会社の雰囲気を尋ねると「ここ数年、若い社員がたくさん入ってきてくれるので若返りましたよ」と、風間は笑顔を見せた。技術部員には20代の社員も増えた。若手が多いので社内の風通しはよく、活発な意見が行き交う雰囲気があるのだとか。長岡工場だけでなく、海外からもどんどん上がってくる改善提案に対応すべく、常に改良に取組んでいるという。「より良くするためにどうしたらよいか、そのために仲間や現場と意見を交わして頭をひねる。そのことがまた次の改善につながる。いい循環ができていると思います」(風間)。

開発者は新規に機械を納めた際は、客先にも出向く。「直接、お客様のご意見を聞くことが、開発する人間にとって一番心に響くと思うんですよ。何が必要か、何が足りなかったのか、真摯に耳を傾けることが、改善のモチベーションにつながる。同じことを上司から言われたら、面白くないでしょうけど(笑)」。

展示会にも積極的に足を運び、気になる技術を研究しようという意欲も高いという。「自分もそうですので」という風間は、目を細めて若手社員の向上心を見守っているようだ。

最後に、同社の今後の課題について聞くと、省力化・無人化への対応を挙げた。「例えば、メンテナンスフリー、ワークの自動供給や強制排出、機械の稼働状況の見える化など、すぐ取組まなければならないことはたくさんありますね。いずれもこれまで培ってきたノウハウとは別の、新しい挑戦が求められる分野ですが、大きく進めていきたいです」(風間)。

「明日をリードする工作機械の提供」を目指して、ツガミは常に前を向いて進み続ける。

今回取材に協力いただいた風間さん

(取材・文 横田 直子)


株式会社ツガミ

本店所在地 東京都中央区 http://www.tsugami.co.jp/

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