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2020/12 Vol.123

表紙の説明:これは、推力5tonターボファンエンジンFJR710形で、右からファン、圧縮機、燃焼器のケーシング部分である。1975年に通商産業省工業技術院の大型工業技術研究開発制度によって開発された。ブラッシュアップしたエンジンは、短距離離着陸ジェット機(STOL)飛鳥に4基搭載され500mで離着陸できた。
[日本工業大学工業技術博物館]

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2020年度「学会横断テーマ」

「学会横断テーマ」への期待

第98期会長 川田 宏之

2020年度「学会横断テーマ」とテーマリーダー:

①少子高齢化社会を支える革新技術の提案: 佐久間一郎(東京大学)

②持続可能社会の実現に向けた技術開発と社会実装: 近久武美(北海道職業能力開発大学校)

③機械・インフラの保守・保全と信頼性強化: 井原郁夫(長岡技術科学大学)

④未来を担う技術人材の育成: 山本誠(東京理科大学)

本会は2017年に創立120年を迎えるにあたり、その前年度に「新生『日本機械学会』の10年ビジョン」を策定しました。この10年ビジョンでは、今後ますます複雑化する社会の要請に応え、広範な分野を取り込み、横断的総合技術としての機械工学の強みを活かすため、分野間の連携と産学連携の重要性が謳われています。このビジョンに向けて今期からスタートしたのが「学会横断テーマ」です。これは一言で表現すれば、部門間の連携を促進する目的で、理事会がテーマを設定し主体的に取り組む活動のことです。

SDGs (持続可能な開発目標)は17の項目からなり、これらは世界が直面している解決すべき課題です。これらの課題解決策が新たなビジネスチャンスを生み出し、さらに2006年に国連が提唱したESG投資(環境、社会、ガバナンス)を標榜する企業が増えています。この傾向は今後ますます加速していくと思います。もはや、SDGsに掲げられている多くの社会的課題の解決に貢献していくことは、表面的な努力目標ではない、企業が死活問題として取り上げねばならない価値のある取り組みと言えます。

本会もこのような大きな流れに追従していく必要があると考えます。現状では新型コロナウイルス感染症の影響は無視できない状況下にあって容易ではありませんが、本会が得意とする学問や技術が、社会的課題の解決において重要な役割を果たすことは言うまでもありません。しかし、既存の分野あるいは単一の分野で解決できる技術課題は限定的であって、分野間の強力な連携が今こそ必要であると考えられます。多くの学会が異分野の学協会との連携を模索し始めているのもそのためです。

本会でも分野間連携を促進するために、今期より「新部門制の試行」を開始しました。部門間の交流を促進することが新部門制の狙いですが、本会内だけの交流に留まらず必然的に本会の外との交流につながっていくものと考えています。また、理事会としても他学協会との連携を重要施策として位置づけています。昨年度からいくつかの連携した企画を実施している電子情報通信学会に加え、日本非破壊検査協会、日本クレーン協会と年次大会で共同企画イベントを実施しました。今後も他学協会との連携を拡げていく予定です。

「学会横断テーマ」は、新部門制の試行と並ぶ今期の重点施策です。本会がどのような社会的課題の解決に貢献するかを会員および一般社会に示すことが学術団体として重要であると考え、SDGsやSociety5.0などに対応する分野横断的な四つのテーマを「学会横断テーマ」として設定しました。このような分野を横断する課題設定型のテーマを掲げることで学術講演会の活性化、部門間交流の促進、他学会との連携強化、産学連携の促進、社会貢献の強化など10年ビジョンに向けた多くのアクションプランの推進を加速できると考えます。

「学会横断テーマ」のリーダーには、3年間を任期として活動していただく予定です。その間の活動をリードしていただくため下記の4名の方にテーマリーダーをお願いしました。また、テーマリーダーを支援するための企画チームも新たに設置しました。今後、年次大会での特別企画やオーガナイズドセッションの企画、シンポジウムの開催など複数の部門や他学協会を巻き込んだ様々な形の行事が企画されるものと期待しています。

今後も新たな「学会横断テーマ」の設定を継続していきたいと考えています。今年度は、いわゆる理事会主導の形で設定しましたが、今後は複数部門からの提案による「学会横断テーマ」が誕生することも期待しています。「学会横断テーマ」と新部門制が融合することで分野間連携が進展し、産学連携が強化されることで今期の運営方針で標榜した「新たな時代に相応しい学会」に近づくことができると確信しています。

まずは、今年度からスタートした4つの「学会横断テーマ」が充実したものとなり、後続のテーマにつなげていくため、部門のご協力と会員各位のご協力をお願いいたします。

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