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2019/8 Vol.122

【表紙の絵】
れいにーうぉーくのぱたぱた
長谷川 遥 さん(当時6 歳)

雨の日にブルーになる気分や、ストレスで落ち込む現代の人たちの気分をいやしてくれるとっても自然のいいかおりのするスプレーをまきながらぱたぱた飛びながら空中散歩する人間をハッピーにする未来のマシーン

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やさしい材料力学

第8回 静定はりのたわみ



本連載を書籍化した、「基礎からの材料力学 (JSMEやさしいテキストシリーズ) 」が発行されました。機械工学への新たな一歩を踏み出す学生の方々、学びなおしの一冊として教科書をお探しの社会人の方々にふさわしい新定番の教科書です。 Kindle版 / 単行本(ソフトカバー)版 


1 はじめに

本稿では,はりが横荷重やモーメントを受ける場合に生じる変形=たわみの解析法を取り扱う。はりのたわみに関する微分方程式を解く基本的な手順について説明するとともに,例題を通して典型的な静定問題の解析法について解説する。

2 はりの微分方程式

はりに垂直な方向の変位=たわみ$w$を座標$x$の関数として定義すれば,その2階導関数は以下のようにはりの曲率$\kappa$と関係づけられる。

\[\kappa = -\frac{d^2 w(x)}{dx^2}\] (1)

はりの曲率$\kappa$と曲げモーメントには$M = EI \kappa$の関係が成立するから($E$はヤング率,$I$は断面2次モーメント),結果的に以下の式が成り立つ。

\[EI\frac{d^2 w(x)}{dx^2} = -M(x)\] (2)

これがはりの曲げ問題におけるたわみの微分方程式である。前回の講義に従って曲げモーメントの分布が求まれば,それを上式右辺に代入することによって解くべき微分方程式が得られる。得られた微分方程式を積分し,はりの境界条件を代入することによって未定係数を決定すれば,はりのたわみが座標$x$の関数として得られることになる。なお,決定すべき未定係数は2つであり,はり両端におけるたわみ($w$)もしくはたわみ角($dw/dx$)の条件によって求められる。

2.1 一次関数状に変化する分布荷重を受けるはり

図8.1に示すような,両端を単純支持された長さ$l$のはりに一次関数状に変化する分布荷重が作用する場合について考える。分布荷重が三角形状であることから,合力は等分布荷重$q_0$が作用する場合の1/2となり,$f=q_0l/2$となる。この合力が三角形の重心の$x$座標,すなわちはりを2対1に内分する点に作用するものとして,荷重とモーメントのつり合いを考える。図8.2に示すように,はりの左端に作用する反力を$R_1$,右端に作用する反力を$R_2$とすれば,はりに垂直な荷重のつり合い式は,

\[ R_1 + R_2 = \frac{1}{2} q_0l\] (3)

となる。また,はりの左端におけるモーメントのつり合いを考えると,

\[ R_2 l – \frac{1}{2} q_0l \times \frac{2l}{3} = 0\] (4)

両式より,反力$R_1$,$R_2$を求めれば,

\[ R_1 = \frac{1}{6} q_0l, \quad R_2 = \frac{1}{3} q_0l\] (5)

となる。さて,図8.3に示すように座標$x$の位置ではりを切断し,はりの左側より切断位置に作用する曲げモーメントについて考える。はりの左端の反力を考えれば,モーメント$R_1 x$が時計回りに作用し,分布荷重の合力$q_0x^2/(2l)$に関しては,重心からの距離$x/3$を乗じてモーメント$q_0x^3/(6l)$が反時計回りに作用する。よって,

\[ M(x) = \frac{1}{6} q_0l x – \frac{1}{6l} q_0x^3\] (6)

結果的にたわみの微分方程式は,

\[EI \frac{d^2 w(x)}{dx^2} = \frac{1}{6l} q_0x^3 – \frac{1}{6} q_0l x\] (7)

となる。上式を2階積分して整理すると,

\[ w(x) = \frac{q_0}{360 EIl} (3 x^5 – 10l^2 x^3 + C_1 x + C_0)\] (8)

$x=0$においてたわみが0であることより,$C_0 =0$。また,$x=l$においてもたわみが0となることより,

\[ 3 l^5 – 10l^5 + C_1 l = 0, \quad C_1 = 7l^4\] (9)

最終的にたわみ$w(x)$が以下のように求められる。

\[ w(x) = \frac{q_0}{360 EIl} (3 x^5 – 10l^2 x^3 + 7l^4 x)\] (10)

図8.1 一次関数状に変化する分布荷重を受けるはり

図8.2 荷重とモーメントのつり合い

図8.3 座標$x$の位置における曲げモーメント

2.2 はりの三点曲げ

次に,図8.4に示すようなはりの三点曲げの問題を切断法を用いて解く。左右の支持点における反力をそれぞれ$R_1$,$R_2$とおいて,はりに垂直な力のつり合い,ならびに荷重点におけるモーメントのつり合いを考えると,

\[P = R_1 + R_2, \quad R_1 a = R_2 b\] (11)

これら2式より,反力$R_1$,$R_2$はそれぞれ,

\[R_1 = \frac{P b}{l}, \quad R_2 = \frac{P a}{l}\] (12)

となる。はりの左端から座標$x$を,はりの右端から座標$y$をとれば,荷重点に対して左側の部分における曲げモーメントは反力$R_1$に座標$x$を乗じればよいから,

\[M_1(x) = R_1 x = \frac{P b x}{l}\] (13)

同様に,荷重点から右側の部分の曲げモーメントは,

\[M_2(y) = R_2 y = \frac{P a y}{l}\] (14)

となる。よって,集中荷重が作用している点において,左側(長さ$a$)と右側(長さ$b$)の2つの部分に分けてたわみの微分方程式を解く。左側のはり1におけるたわみを$w_1(x)$,右側のはり2におけるたわみを$w_2(y)$として,それぞれ座標$x$,$y$の関数とする。たわみ$w_1$と$w_2$に関するたわみの微分方程式は以下の2式となる。

\[\left.\begin{array}{@{}ll}
\displaystyle EI \frac{d^2 w_1 (x)}{dx^2} = -\frac{P b}{l}x, & (0 \le x \le a) \\[3mm] \displaystyle EI \frac{d^2 w_2 (y)}{dy^2} = -\frac{P a}{l}y, & (0 \le y \le b)
\end{array}\right\}\]
(15)

それぞれ座標$x$もしくは$y$で2階積分して整理すれば,

\[\left.\begin{array}{@{}l}
\displaystyle w_1(x) = -\frac{Pb}{6EIl} (x^3 + C_1 x + C_0) \\[3mm] \displaystyle w_2(y) = -\frac{Pa}{6EIl} (y^3 + D_1 y + D_0)
\end{array}\right\}\]
(16)

ここで,$C_0$,$C_1$,$D_0$,$D_1$は境界条件により決定される未定係数である。$x=0$および$y=0$においてたわみが0となる条件より,$C_0 = 0$,$D_0=0$となる。残る$C_1$,$D_1$は,2つのはりの連続条件によって決定することができる。はりの結合点における2つのはりのたわみは,

\[ \begin{split}
w_1(x=a) = -\frac{Pb}{6EIl} (a^3 + C_1 a) \\
w_2(y=b) = -\frac{Pa}{6EIl} (b^3 + D_1 b)
\end{split}\]
(17)

これらのたわみは$x=a$,$y=b$で等しいから,

\[a^2 + C_1 = b^2 + D_1\] (18)

さらに結合点($x=a$,$y=b$)における2つのはりのたわみ角を求めると,

\[\begin{split}
\frac{d w_1(x)}{dx}\Bigm|_{x=a} = -\frac{Pb}{6EIl} (3a^2 + C_1) \\
\frac{d w_2(y)}{dy}\Bigm|_{y=b} = -\frac{Pa}{6EIl} (3b^2 + D_1)
\end{split}\]
(19)

ここで,座標$x$,$y$が逆向きであることに注意すると,2つのたわみ角が等しい条件は,

\[ \frac{d w_1(x)}{d x}\Bigm|_{x=a} = -\frac{d w_2(y)}{dy}\Bigm|_{y=b}\] (20)

となるから,結果的に,

\[-b (3a^2 + C_1) = a (3b^2 + D_1)\] (21)

最終的に式(18)と式(21)を未定係数$C_1$,$D_1$について連立して解けば,

\[C_1 = – (a^2 + 2ab), \quad D_1 = – (2ab + b^2)\] (22)

よって,区間$[0\le x \le a]$,$[a\le x \le l]$,におけるたわみが以下のように求められる。ただし,$a+b$を$l$に,たわみ$w_2$における$y$を$l-x$に置き換えた。

\[w(x) = \left\{ \begin{array}{ll@{}}
\displaystyle -\frac{Pb}{6EIl} x \bigl\{ x^2 – a (a + 2b) \bigr\}, & (0 \le x \le a) \\[3mm] \displaystyle -\frac{Pa}{6EIl} (l-x) \bigl\{ (l-x)^2 – b (2a + b) \bigr\}, & (a \le x \le l)
\end{array}\right.\]

図8.4 はりの三点曲げ

演習問題8.1: 片持はり

 

一端を固定され,他端に横荷重$P$を受ける長さ$l$,ヤング率$E$の片持はりのたわみを座標$x$の関数として求めよ。なお,はりの断面は円形であり,その直径は一様に$D$である(前回の講義を参考に曲げモーメントの分布を求めること)。

(答:$\displaystyle \boldsymbol{w(x) = \frac{32 P}{3E\pi D^4} x^2 (3l – x)}$)

演習問題8.2: 等分布荷重を受ける両端単純支持はり

 

両端を単純支持され,はり上面に一様な分布荷重$q$が作用する場合について,はりに生じるたわみを座標$x$の関数として求めよ(前回の講義を参考に曲げモーメントの分布を求めること)。はりの長さは$l$,ヤング率は$E$,断面は幅$b$高さ$h$の長方形である。

(答:$\displaystyle \boldsymbol{w(x) = \frac{q}{2Ebh^3}(x^4 – 2lx^3 + l^3 x)}$)


<フェロー>

荒井 政大

◎名古屋大学 工学研究科航空宇宙工学専攻 教授

◎専門:材料力学,固体力学,複合材料。有限要素法や境界要素法による数値シミュレーションなど。

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