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2026/5 Vol.129

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和文学術誌目次

日本機械学会論文集 掲載論文Vol.92, No.956, 2026

公開日:2026年4月25日

https://www.jstage.jst.go.jp/browse/transjsme/92/956/_contents/-char/ja


<材料力学,機械材料,材料加工>

JISに規定された名目接着強度の接着寸法および接合形状に対する依存性

野田 尚昭, 髙木 怜, 鈴木 靖昭, 小田 和広

https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00231

日本産業規格(JIS)では接着強度を小型試験片を用いて測定した公称引張応力として定義しており,応力集中の影響が考慮されていない.本研究では,突合せ継手および重ね合わせ継手における大面積を接着した時の公称接着強度の低減について,特異応力場の強さ(ISSF)の観点から検証を行った.数値解析により,JISで定義された公称接着強度は重ね合わせ継手では被着材の厚さと接着長さの両方に依存するのに対し,突合せ継手では主に接着剤厚さに依存することが示された.試験片形状がISSFに及ぼす影響を考慮することで,幅広い接着面積における突合せ継手と重ね合わせ継手の公称接着強度を比較した.

<熱工学,内燃機関,動力エネルギーシステム>

NiTi合金製ラティス構造のエネルギ吸収特性(第2報 ストランドのテーパーが及ぼすエネルギ吸収性能への影響)

愛宕 祐治, 牛島 邦晴, 土谷 浩一

https://doi.org/10.1299/transjsme.26-00015

本研究では,NiTi形状記憶合金から製作された超弾性ラティス構造体において,テーパーを有するストラット形状が力学特性およびエネルギー吸収性能に及ぼす影響を検討した.有限要素解析を用い,テーパーパラメータ の変化が,初期剛性,マルテンサイト変態応力,ならびに準静的単軸圧縮下におけるエネルギー散逸といった主要な力学指標に与える影響を系統的に解析した.その結果,適度なテーパーを付与することで,等価剛性および変態応力が大幅に向上し,エネルギー吸収効率が改善されることが明らかとなった.また,得られた応力分布結果から,テーパー形状はラティス構造全体に応力を効果的に分散させ,接合ノード部における局所的な応力集中を低減することで,より均一な変形挙動に寄与することが確認された.さらに,最大ミーゼス応力を同一条件とした圧縮荷重および損失係数の比較解析により,テーパー付きモデルは材料体積を増加させることなく,直線ストラットモデルを大きく上回るエネルギー散逸性能を示すことが分かった.一方で,過度なテーパーでは,応力集中が曲率部へ移行し,局所的な早期変形を引き起こすため,力学性能が低下することが示された.

<流体工学,流体機械>

DBDプラズマアクチュエータの誘起流を利用した気流遮蔽に関する研究

小林 和志, 角田 和巳, 村角 祐輔, 佐藤 圭

https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00195

DBDプラズマアクチュエータの誘起流を利用した気流遮蔽に関する知見を得るため,水平方向に噴出する軸対称噴流に対し,鉛直下方から誘起流を干渉させ,干渉領域周辺の速度場を計測した.取得した速度分布を詳細に検討した結果,層流噴流に対する干渉と発達領域の噴流に対する干渉とでは,流れ場の変化の様子が異なること,誘起流との干渉が乱流エネルギー分布にも影響を及ぼすことが示された.また,誘起流による遮蔽効果を定量的に評価するため,干渉時の流量減少率を二種類定義し,速度分布からそれらの値を算出するとともに,噴流場の代表的なパラメータおよび印加電圧との関係を調査した.その結果,いずれの流量減少率も気流遮蔽効果の評価指標となり得ること,さらに一方の流量減少率は遮蔽効果の上限を与える指標であることが明らかとなった.

表面にすべりのあるピラー群を過ぎる低Reynolds数流れの数値解析

藤井 健博, 大森 健史

https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00220

ナノピラー構造を有するマイクロ・ナノ流体デバイスの濡れ性による流れ制御の設計指針を得るため,表面にすべりのあるピラー群を過ぎる低Reynolds数流れの数値解析を行った.計算手法には,任意形状表面にNavier境界条件を課す埋め込み境界射影法を用いた.一定外力で駆動する流れの解析により,ピラー面のすべり長さがピラー寸法程度で十分な流動性の向上が得られた.また,すべり面を一部に限定しても,すべり速度が大きな面に設定すれば,その効果が十分維持されることが示された.さらに,駆動方向に関して非対称にすべり面を設けると,系の幾何学的対称性にもかかわらず,主流方向が駆動方向に対して傾斜することがわかった.

<機械力学,計測,自動制御,ロボティクス,メカトロニクス>

超音波探傷シュラウドビークルの開発(シュラウド内面用ビークルの要求仕様の策定と開発)

湯口 康弘, 中川 哲郎, 前原 剛, 亀山 育子, 久保 智美

https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00132

沸騰水型原子炉のシュラウド内面の溶接部に応力腐食割れが検出され,その深さを超音波探傷(UT)で計測するためのシュラウド内面用ビークル(ROV)を開発した.移動機構には,遊泳方式と対象面に押し付ける車輪走行方式を併用した.また,応力腐食割れの深さ計測には,フェーズドアレイUT(PAUT)水浸法を組み合わせた.位置決め精度を確保するため,機械接触による座標設定と,縦方向の応力腐食割れの深さ計測には,PAUTプローブを上下に走査するスキャナモジュールをROV下端に組み合わせた.試験により,シュラウド溶接部の応力腐食割れに対して要求仕様を満足するUT検査が可能であることを確認した.

開ループ特性を利用した危険速度および減衰比予測技術の開発

古森 健吾, 保手浜 拓也, 杉村 渉, 松下 修己

https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00207

回転機械において定格回転数より高速域に存在する未知の危険速度と減衰比を,オーバークリティカル運転を行わずに予測する手法を提案した.提案技術ではフィールドバランシング時に得られる不釣り合い振動から開ループ特性の近似値を算出し,近似値から運転回転数より高速域の開ループ特性を外挿することで危険速度と減衰比を予測する.Hardware in the Loop Simulationで検証した結果,一次から三次の危険速度の予測値が実測範囲内に収まり,減衰比は値がやや高めとなるもオーダーの一致を確認した.本手法はISO 21940-31:2013に基づく不釣り合い感度算出に有用なデータ提供が可能であり,従来必要だったオーバークリティカル運転を不要とする利点を持つ.

作業姿勢評価と干渉低減を導入した上肢用空気圧駆動パワーアシストシステムの開発

尾﨑 亮介, 新山 大登, 小嵜 貴弘

https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00237

本研究では,パワーアシスト装置の装着者の作業姿勢による身体負担を評価し,それに応じてアクチュエータによる関節動作の支援が可能なアシスト制御システムを提案する.提案システムでは,作業姿勢負担を定量化する快適性スコアと関節トルクに基づく評価関数を定め,それを最小化する制御入力を決定する.更に,人間と装置の干渉を検出し,その度合いに従ってアシスト係数を自動調節するシステムへと拡張する.このシステムを,肩・肘関節を同時支援できる空気圧駆動上肢用パワーアシスト装置に実装し,その支援効果を実験で検証する.

<生体工学,医工学,スポーツ工学,人間工学>

モーションキャプチャを用いた普通旋盤チャック締付作業の習熟度評価に関する研究

武雄 靖, 永井 孝, 井出 直希

https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00183

普通旋盤のチャック締付工程に対し,非動力の模擬旋盤台を用い,モーションキャプチャ(15部位,120 Hz)と力計測を同時計測し,熟練度の客観評価法を検討した.上級者5名・初心者5名,各3試行のデータから軌跡長,速度・加速度の変動,チャッキング力(平均・CV)を算出し,Mann–Whitney U検定およびBH法によるFDR補正を行った.その結果,チャッキング力に群間有意差が認められ,速度変動では複数部位で群間有意差(q < 0.05)が認められ,再現性(ICC)も良好だった.本手法は教育・訓練におけるフィードバック設計と技能評価の標準化に資する.

<交通・物流>

旋回時の横力と前後力によるストラット式フロントサスペンションのコンプライアンスステアに関する研究

小川 敬寛, 河田 哲明

https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00186

本稿では,ストラット式フロントサスペンションを対象に,良好な操舵感と適切なヨー運動を実現するため, 横力とタイヤ抗力に対するコンプライアンスステア特性を研究した.低速および高速でのタイヤ特性測定とK&C装置による日欧3車種の比較から,日本車は抗力に対しトーアウト,欧州車はトーインを示した.横力に対する感度は異なるが合成値では同等のトー変化を示し,欧州車は速度に依存せず操舵特性を維持した.さらに横力・抗力・セルフアライニングトルクとの関係を評価した結果,旋回中(0~1.3度)は横力とセルフアライニングトルクに対しコンプライアンスステアが支配的で,抗力の影響は小さいことが明らかとなった.

地震による建物の層間変形角がエレベーターガイドレールに与える影響

小沼 裕一, 藤田 聡

https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00214

近年,地震発生後におけるエレベーターの継続使用が重要な課題となっている.本研究では,地震による建物の層間変形がガイドレールに及ぼす影響を実験により検討した.試験体に所定の層間変形角を加え,レール変形および背面ひずみの挙動を計測した結果,変形角の増加に伴うレール応答特性の変化を明らかにした.本成果は,地震時のエレベーター安全性評価および設計指針の高度化に寄与するものである.

<宇宙工学>

四輪小型月面ローバの走行性能に及ぼす車輪幅の影響

渡辺 公貴, 丸 萌生, 川口 正隆, 田中 和人

https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00224

本研究では,初期探査において有益と思われる小型ローバを作製し,接地圧や接地面積に直接関係するパラメータである車輪幅に着目した.異なる車輪幅が走行性能に及ぼす影響を評価することを目的とし,質量1.5kgのローバと車輪幅の異なる7種類の車輪を用いて,シミュラントを用いた走行試験場にて走行試験を行った.比較として多くの試験場でも導入されている珪砂を用いた試験場においても同様の評価を行った結果,土壌によって最適な車輪幅は異なることが明らかになった.これらの結果から,車輪幅の最適化および月模擬砂を用いた試験の重要性が示された.


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