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2025/10 Vol.128

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Myメカライフ

熱流体現象の解明とそれらの自在な制御手法の実現に向けて

難波江 佑介(東京理科大学)

この度は「乱流摩擦抵抗低減制御の実用化に向けた数値的理論的研究」のテーマに対して、日本機械学会奨励賞(研究)をいただき、大変光栄に思います。この場をお借りして、日頃よりご指導いただいている先生方やご推薦くださった流体工学部門の方々に深く感謝申し上げます。

今回の受賞研究は、大学院生時代から助教に着任したばかりの頃に主に取り組んだ内容で、「実現象において効果的な乱流制御手法は何か?」がざっくりとした内容です。乱流制御に関する研究はこれまでにも世界中で活発に行われていたのですが、これらの研究のほとんどが航空機や船舶周りの流れのような実現象に匹敵する超高レイノルズ数とは程遠い低レイノルズ領域を対象としていました。「高レイノルズ数での制御効果の検証はまだ未開拓領域じゃないか!」ということで、博士論文も見据えた大学院での研究テーマとすることになりました。

しかしながら、「言うは易し 行うは難し」ということわざにもある通り、実際には一筋縄にはいかず…でした。最初は低レイノルズ数ではDNS、高レイノルズ数ではLESを用いて検証しようと思いLESのコード作成を始めたのですが、2次精度中心差分ではなかなか思うような結果が得られずでした。そこで、低レイノルズ数DNSの結果を基に半経験式を提案し、半経験式を基に超高レイノルズ数における抵抗低減率の予測を試みることにも取り組みました。こちらは学会発表・論文投稿まではスムーズに進みましたが、査読過程で「DNSのレイノルズ数が低いので、あなたの半経験式による予測結果が妥当かどうか判断できない。」と指摘され、かなり頭を抱えました。1年以上かけて行った摩擦レイノルズ数Re=720のDNS結果を追加してもなかなか納得してもらえず、Replyの内容を何度も指導教員に相談(というよりもほとんどがReviewerに対する愚痴でしたが…)したのをよく覚えています。

上記の高レイノルズ数の検証後は、実験を行う上で避けることが困難なスパン方向への周期性が抵抗低減効果に与える影響について検証を行いました。こちらも論文投稿まではスムーズにいったのですが、なんとD3の7月にReject連絡が届きました。さらに、Reject理由が到底納得できるものではなく、この時期も指導教員によく相談していました。その後は幸運にもETMM国際会議の特集号に選出していただき、無事に掲載できましたので、今となっては良い思い出です。

学位取得後は少し違う内容を行いたいと思い、クエット流れを対象とした研究にも取り組むようになりました。クエット流れの研究を始めて知りましたが、ポワズイユ流れとは異なり、あまり乱流制御に関する研究が行われていないことに驚いたとともに、「これはチャンスだ!」とも思いました。そこで、最もシンプルな壁面からの一様吹出し/吸込み制御から取り組むことにしました。DNSの検証を行う過程で、一様吹出し/吸込み制御では抵抗低減効果がなかなか得られないことに気づき、理論解析を組み合わせることでこの理由を明らかにすることができました。この論文でも納得できないコメントがいくつかありましたが、「査読なんてこんなものか…」とこの時期くらいからは思うようになり、少し自分の成長を実感できました(単に短気な性格が緩和されただけかもしれませんが…)。

このように乱流制御の実用化に向けた基礎研究に取り組んできましたが、学位取得後は伝熱促進や燃焼現象を始めとする熱工学に関する研究や乱流現象の新たな理解を目指した複雑系科学と流体力学の融合に関する研究にも取り組んでおります。「熱流体現象の解明とそれらの自在な制御の実現」が私の最終目標ですが、どこまでこの目標に近づけるか…は神のみぞ知ることです。熱流体分野や機械工学分野に少しでも貢献できるように、今後も精進していく所存です。


<正員>

難波江 佑介

◎東京理科大学 工学部機械工学科 助教

◎専門:流体工学、数値シミュレーション、乱流制御

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