和文学術誌目次
日本機械学会論文集 掲載論文 Vol.91, No.949, 2025
公開日:2025年9月25日
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/transjsme/91/949/_contents/-char/ja
<材料力学,機械材料,材料加工>
接着強度評価における3D界面端コーナー部の特異性指数および特異応力場の強さの解析の必要性とその有用性
宮﨑 達二郎, 松本 昌樹, 荒木 一摩, 野田 尚昭
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00005
スカーフ角度45度のスカーフ継手を2次元モデルで接着層厚さを種々に変化させながらFEM解析し,界面端に圧縮の特異応力が生じることを明らかにした.2次元スカーフ継手で圧縮の特異応力が生じている場合に,3次元スカーフ継手の界面端にはどのような特異応力が生じるか明らかにした.H-integral法を用いて界面端コーナー部での特異応力場の強さを求め,スカーフ継手の接着強度がそれで評価できるか過去の実験結果を用いて検討している.界面端部に圧縮の特異応力場(2次元)が生じる通常とは異なる場合を取り上げることによって,界面端コーナー部の特異応力場の強さの3次元解析の必要性と有用性を明らかにした.
電着銅薄膜による繰返し応力測定法(X線回折法のデバイ環を利用した主応力測定法)
小野 勇一, 山本 雄太, 福田 晟也, 足立 健流, 大西 由基, 森戸 茂一
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00117
電着銅薄膜を用いた繰返し応力測定法において,従来よりも簡便に主応力を測定できる手法として,ポータブル型X線残留応力測定装置から得られるデバイ環を利用した手法について検討した.まず,種々の曲げとねじりの組合せ応力状態で繰返し負荷を銅薄膜に加え,薄膜に成長粒子を発生させた.次いで,X線残留応力測定装置により成長粒子のデバイ環を取得した.粒子は二軸応力状態に依存した配向性をもって成長するため,得られたデバイ環には二軸応力状態に依存した偏りが確認できた.そこで,偏りを定量化することにより,主応力を測定するための較正式を導出した.最後に得られた較正式を用いた主応力測定法の測定誤差について検討を加えた.
カルロ法を用いた感度解析に基づくGTNモデルの材料パラメータの決定法の提案
八代醍 健志, 中根 一起
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00130
構造物の限界評価を目的として,GTN(Gurson-Tvergaard-Needleman)モデルなどの損傷力学モデルを用いた破壊解析が適用される.一方で,損傷力学モデルを用いた破壊解析は要素寸法の影響を受けることが指摘されており,実構造での評価への適用を考慮した場合には現実的な要素寸法での適用性が課題となる.本研究では,理論的に空孔が発生しないとされる圧縮試験の応力–ひずみ関係を基準とし,モンテカルロ法を用いた感度解析を行うことで基本的な材料パラメータの検討手順を決定した.また,要素分割数に基づいて要素破壊に関連するパラメータを決定することにより,統一的な評価結果が得られることを確認した.
CFRPと金属材料(A5052,SUS304)の接着強度および積層構造体強度に及ぼす表面処理の効果
渡邉 傑, 山田 昇
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00146
本研究では,CFRPと実用金属(SUS304およびA5052)との異種材料接着に対し,表面処理法および接着剤の違いが接着強度および構造体性能に与える影響を体系的に評価した.未処理・サンディング・大気圧プラズマ処理の各表面処理を比較し,引張せん断試験および三点曲げ試験により接着性能を定量化した.さらに,X線光電子分光(XPS)により界面の化学状態を解析し,極性官能基の導入が接着強度向上と相関することを示した.特にサンディングとプラズマ処理の併用により,高強度かつ安定な接着界面が形成されることを確認した.
<流体工学,流体機械>
せん断流と伸長流が高分子液晶成形物の強度に及ぼす影響
辻 知宏, 前河 俊大, 楠川 量啓
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00060
高分子液晶の押出成形物の強度に及ぼす伸長流の影響について数値的および実験的に調べた.高分子液晶の押出成形物は,スキン-コア構造と呼ばれる成形物表面における分子の高配向領域(高強度領域)と成形物内部の低配向領域(低強度領域)を示す.本研究では,せん断流による高配向が得られないコア領域での伸長流を利用した分子の高配向化と材料の高強度化を試みた.配向テンソル理論を用いた予備計算により,伸長流が分子の高配向化に寄与することを確認した.その後,テーパ角の付いたダイ穴を用いた成形物の引張強度試験を行い,テーパ角60°の場合の成形物がストレート穴の場合の成形物の約2.5倍の破断強度となることを明らかにした.
<熱工学,内燃機関,動力エネルギーシステム>
0次元熱収支モデルに基づくガソリン機関のノッキング制御
山泉 凌, 高村 修平, 宮本 武司, 窪山 達也, 森吉 泰生
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00105
内燃機関の熱効率向上を目的に,0次元熱収支モデルに基づくノッキング制御システムを構築し,量産の1.6Lターボチャージャー付きガソリン機関に実装した.排気ポート温度は同モデルにより予測し,そのパラメータは先行研究にて同定した.提案システムの有効性を検証するために過渡試験を実施した結果,ノッキングの抑制が可能となり,従来の冷却水温度一定制御と比較して点火時期をより進角できた.これにより熱効率の向上が確認され,提案手法の有効性と,0次元モデルのエンジン制御への適用可能性が示された.
低温度差スターリングエンジンにおける樹脂製多孔式再生器とステンレスメッシュ再生器の特性比較
福井 隆史, 戸田 富士夫
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00122
樹脂製多孔式再生器(R-MHR)とステンレスメッシュ再生器(SMR)の特性を低温度差スターリングエンジンにて比較した.掃過容積5cc,温度差80Kのエンジンで等価なR-MHRとSMRにて比較した結果,R-MHRを用いたエンジンはSMRを用いたエンジンに比べて軸出力が25%,最大出力時の熱効率が17%高い結果を得た.SMRの圧力損失はR-MHRの圧力損失に比べて2.92倍以上大きく,R-MHRのヌセルト数はレイノルズ数が43以下の領域においてSMRのヌセルト数より高いことが分かった.これらの結果により低温度差スターリングエンジンにおいてはR-MHRがSMRよりも優れた再生器であることが示された.
<機械力学,計測,自動制御,ロボティクス,メカトロニクス>
感度解析に基づく周期運動における動的制御系のためのロボットのパラメータ同定と同定パラメータの重要度評価
岡田 昌史, 佐藤 杜斗
https://doi.org/10.1299/transjsme.24-00149
パラメータ同定で得られる近似解において,どのパラメータに優先度があるかは使用するロボットの運動や制御器に大きく依存する.我々は,これまでに感度解析によりパラメータの優先度を定め,制御に有利なパラメータを求める確率的パラメータ同定を提案してきた.しかし,そこでは状態フィードバック制御器の使用が条件となっている.本論文では従来の感度解析手法を動的な制御系へ拡張したパラメータ同定手法を提案すると共に,実験により手法の有効性を検証する.また,パラメータの誤差楕円体に基づいて,制御器が変化すれば同定するパラメータの優先度が変化すること,制御器が補償可能なパラメータの優先度が低下することを示す.
形状記憶ポリマーを用いた感度可変な力覚センサの改良と応用
谷口 太一, 高嶋 一登
https://doi.org/10.1299/transjsme.24-00252
近年,介護や福祉の現場など幅広い環境でロボットが使用されるようになり,測定レンジ・感度が変更できる力覚センサが必要になっている.我々はこれまで,温度によって剛性が変化する形状記憶ポリマーシートにひずみゲージを貼り付け,両端固定梁状に固定したセンサを開発し,測定レンジと感度の変更が可能なことを示した.本研究では,センサの構造を変更し,実験結果と理論値との差の減少を目指した.改良したセンサを用いて,ロードセルの出力に近い対象物の圧縮剛性測定・ロボットハンドの把持力測定が可能であることが確認できた.さらに,粘弾性を考慮した伝達関数モデルを使うことで,より正確な把持力測定が可能であることが確認できた.
リーン操作可能な自転車シミュレータにおける自転車モデルパラメータの推定とふらつき挙動の再現
脇坂 龍, 山口 拓真, 伴 和徳, 奥田 裕之, 鈴木 達也
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00100
自転車は自動運転車にとって主要なリスク要因であり,その行動予測はシステム設計上の重要な課題である.自転車関連の安全機能を効率的に評価する手段として,シミュレーションの活用が期待されており,そのためには十分な走行データを用いてサイクリストの行動モデルを構築する必要がある.しかし実走行データの収集は困難であり,自転車シミュレータの活用が注目されている.本研究では,簡略的な自転車モデルを用いながらシミュレータでの挙動再現性を高めるために,モーションキャプチャによる実走行データに基づいたサイクリスト個人ごとのパラメータ推定と,自転車特有のふらつき挙動を再現するモデルの実装を行い,その妥当性を評価する.
<マイクロ・ナノ工学>
焦点距離を調節可能な回転式2光子造形自由曲面マイクロレンズの基礎的検討
松岳 勇樹, 田口 良広, 橋本 将明
https://doi.org/10.1299/transjsme.24-00152
本論文では,回転動作によって焦点距離を調節可能な2光子造形準シリンドリカル自由曲面マイクロレンズを基礎的に検討した.光線追跡シミュレーションを用いて焦点距離の変化倍率が約4倍となる直径700 µmの準シリンドリカル自由曲面マイクロレンズを設計した.2光子マイクロ光造形を用いて準シリンドリカル自由曲面マイクロレンズを作製し,バルク回転ステージを用いて焦点距離の変化倍率を実験的に評価した.回転動作によって焦点距離は0.85 mmから3.47 mmに変化し,4.1倍の焦点距離の変化倍率が得られたことから,提案する準シリンドリカル自由曲面マイクロレンズの設計の妥当性が実験的に示された.
<計算力学>
PINNsと方程式発見に基づくデータ拡張による物理問題のための正則化手法(連続性を持つ関数式によるデータ拡張)
竹安 真己志, 和田 義孝
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00102
本研究では,方程式発見(SINDy)を活用したデータ拡張とPINNsを組み合わせることで,少量データ下における高精度な機械学習のための正則化手法を提案している.PINNs は損失関数に数理方程式を組み込むことで物理的一貫性を担保し,SINDyはデータから数理モデルを同定することで連続性と物理的解釈性を持つ補間を可能にする.き裂進展データ(25点)では,線形補間と比較して二乗誤差の合計(SSE)が約28%削減された.また,異なる亀裂進展データ(59点)でも本手法の有効性が確認された.以上より,本手法は特に限られたデータしか得られない工学的課題において,学習精度の向上に効果的であることが示された.
<設計,機素・潤滑,情報・知能,製造,システム>
パラレルワイヤ駆動機構を応用した肩関節運動測定ウェアラブル装置の開発
真柄 尚弥, 髙橋 優太, 法林 峻平, 小塚 裕明, 立矢 宏一
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00123
人体の関節に関するリハビリテーション等において,関節可動域の測定を行うことで,その効果を評価することが多いが,現在,臨床で用いられる方法は測定精度等に問題があった.そこで本研究では,人の肩運動の測定を目的とし,パラレルワイヤ駆動機構を用いたウェアラブル装置を開発した.同装置は,ベース,出力リンク,それらを接続する3本のワイヤから構成され,ベースを肩,出力リンクを上腕に固定し,3本のワイヤの長さから出力リンクの姿勢を算出することで,肩運動を測定する.製作した装置を人体に装着し肩運動を測定した結果,真値とする3次元モーションキャプチャシステムの結果とおおよそ一致し,臨床での実用可能性を示した.
<生体工学,医工学,スポーツ工学,人間工学>
筋活動を考慮した人体有限要素モデルを用いた緊急ブレーキ時のつり革を把持する立位乗客の傷害予測(周囲の立位乗客の影響)
中平 祐子, 岩本 正実
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00106
列車やバスの緊急自動ブレーキ(AEB)作動時,立位乗客の転倒リスクが課題であるが,AEB作動条件の実験は傷害リスクが高いために実施が困難である.その問題に対処するため,筋活動によりつり革を把持して立位姿勢を維持する人体有限要素モデルを用い,約7 m/s2のAEB作動時の立位乗客の挙動と身体負荷を予測した.進行方向に対する乗客の向き,周囲の乗客の有無や筋活動を変えた全6条件を解析した.その結果,周囲の乗客の存在が接触反力を増加させた.また,筋活動により転倒は抑制されたが,椎間板圧縮応力が増加した.これらの知見から,立位乗客の安全性評価において周囲の乗客の存在と筋活動の重要性が示唆された.
<交通・物流>
新幹線用空力ブレーキ装置の性能予測と実車による検証
高見 創, 新木 悠斗, 飯田 雅宣, 阿部 巧, 菊池 善基, 木村 謙仁
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00109
新幹線用の空力ブレーキ装置(ADB)について,編成車両へ搭載した際の性能を予測し,さらに実車での性能検証を行った.風洞実験は,縮尺1/4のADB模型20台を実車1両相当の長さに配置し,下流部位の抗力変化を調べた.得られた結果を検証データとして,6両編成の中間4両の車両屋根上にADBを56台並べた数値解析をLESにより実施し,編成抗力を推定した.実車の走行試験は1編成に全92台のADBを搭載して行い,トンネル区間で速度360 km/hのときADBの合計抗力は106.7 kNを示した.この値は風洞実験および数値解析の予測と概ね一致し,実車において設計性能が得られることを確認した.
搬送時間の推定精度向上のための救急車走行モデルの改良
小野 貴彦, 檜垣 光
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00114
救急車の走行モデルから算出される搬送時間の推定精度の向上を目指し,既存モデルの改良に取り組んだ.具体的には,精度低下の要因であった信号機の同期制御と交通量の日内変動に対処するルールを既存モデルに追加した.その後,搬送時間,血圧変動,背面圧迫に関わる3つの指標の推定精度が向上するように,多目的最適化問題の枠組みでモデルパラメータを調整した.90搬送の走行データを用いて改良効果を検証した結果,搬送時間の推定精度は平均で4.2%向上した.既存モデルで推定が困難であった信号機交差点が連続する区間を含む経路に対しては,97.8%の改善効果が認められた.
キーワード:和文学術誌目次