特集 次世代デジタルインフラの構築
PCI Expressを用いた光SSD の開発
はじめに
生成AIの登場などAIの急激な進化と普及が続いており、それを支えるプロセッサやメモリ、ストレージに対する要求性能も高まっている。現在はCPUやGPUなどのプロセッサとDRAM(Dynamic Random Access Memory)などのメモリやSSD(Solid-State Drive)などのストレージの間は、電気のインターフェースで接続されているが、今後のデータ通信速度(データレート)の急激な高速化・広帯域化を実現するためには、これらのインターフェースを電気から光に置き換える必要性が認識され始めている(1)。本稿では、光のインターフェースを持ったSSD(光SSD)の開発と評価結果に関して紹介する。
SSDの概要
SSDはデータセンターやPCのストレージとして広く用いられている(2)(3)。図1に典型的なSSDの構造を示す。SSDではメインの記憶素子としてNAND型フラッシュメモリ(3)~(5)が用いられており、SSDにデータを書き込む際のキャッシュなどに用いるためDRAMも搭載されている。SSDコントローラはSSDに必要となるさまざまな処理を行うが、SSDコントローラとDRAMおよびNAND型フラッシュメモリは、それぞれDDR(Double Data Rate)およびToggle DDRというパラレルインターフェースで接続されている。

図1 一般的なSSDの構造
SSDとCPUなどの外部のプロセッサの接続にはPCIe(PCI Express)などのシリアルインターフェースが用いられる。図2にPCIeの各世代とデータレートの関係を示す。図2の横軸は仕様が策定された年であり、仕様策定から3~4年後に製品化され、およそ3年毎にデータレートが2倍になっている。現在は、128GT/sのPCIe 7.0の仕様策定が完了し、64GT/sのPCIe 6.0対応の製品の市場出荷が拡大している。データレートが高くなると、伝送路のロスや周波数特性の影響で、電気のインターフェースでは通信できる距離が短くなる。そのため、PCIe 7.0ないしPCIe 8.0の世代では、電気のインターフェースのままで従来と同等の通信距離を確保するためには、消費電力が大きな中継器が多く必要になることが懸念されている。図2の縦軸はPCIeの1レーンあたりのデータレートを示しているが、一般的なデータセンター向けのSSDは4レーンのPCIeを採用している。

図2 PCIeのデータレートのトレンド
開発した光SSD
図3に今回開発した光のインターフェースを持つPCIeベースのSSD、すなわち光SSDの写真を示す(3)(6)。光SSDはPCIe 5.0対応の電気のSSD(7)に、PCIe 5.0のデータレートである32GT/sで動作可能な4レーンの光電変換モジュール(8)を搭載したプリント基板を接続した構成になっている。SSDから出力されるPCIeの電気信号は光電変換モジュールで光信号に変換され、光ファイバより出力される。逆に、光ファイバより入力した光信号は光電変換モジュールで電気信号に変換され、SSDに入力される。

図3 開発した光SSD
図4に開発した光SSDとCPUの接続試験を行った際の接続図を示す。光SSDは図3に示したものを用い、CPU側の光電変換には、PCIe 5.0のデータレートで動作可能な4レーン×4(合計:16レーン)の光電変換モジュール(9)を搭載したプリント基板を用いた。ホストとSSDを22m程度の長さの光ファイバで接続した状態で、Linuxの“fio”コマンドでSSDの連続読み出し(Sequential Read)特性を評価したところ13,886MB/sであった。ここで、今回の実験に用いたSSDをCPUのマザーボードに直接接続した際の連続読み出し特性のカタログ値が14,000MB/sである(7)。この結果は、光ファイバを使って光SSDをCPUから離れた場所に設置しても、CPUのマザーボードに直接電気接続したSSDと同等の特性が得られることを示しており、今後のコンピューティングシステムの高速化や低消費電力化に向けた光SSDの可能性を示すものである。

図4 ホストとSSDを光ファイバで接続した様子
まとめ
今後、SSDのインターフェースのデータレートがさらに高速化された際には、従来の電気のインターフェースでは通信距離が短くなることや消費電力が増大することが懸念されている。これらの課題を解決する手段のひとつとしてSSDに光のインターフェースを用いることを検討している。従来の電気のSSDに光電変換モジュールを搭載したプリント基板を接続した光SSDを開発し、22m程度の長さの光ファイバを用いてCPUとSSDの距離を離して接続した場合でも、CPUのマザーボード上に直接電気接続した通常の電気のSSDによる短距離通信と同等の性能が得られることを実験で確認した。この結果は、光SSDが今後のコンピューティングシステムの高速化や低消費電力化に向けて、有効なソリューションになる可能性を示すものである。
謝辞
光SSDに関する開発成果は、NEDO〔(国研)新エネルギー・産業技術総合開発機構〕の助成事業(JPNP21029)の結果得られたものです。また、光SSDの開発にあたっては、アイオーコア(株)および京セラ(株)のご協力に深く感謝いたします。
参考文献
(1) オールフォトニクス・ネットワークとはなにか, NTT(株), https://www.rd.ntt/iown/0002.html (参照日2025年8月4日).
(2) Solid State Drive, キオクシア(株), https://www.kioxia.com/ja-jp/business/ssd.html (参照日2025年8月4日).
(3) 藤本竜一 他, 半導体メモリ/ストレージ技術の概要と将来技術, エレクトロニクス実装学会, 28巻6号, pp.495-502, Sept. 2025.
(4) NAND型フラッシュメモリとは, キオクシア(株), https://www.kioxia.com/ja-jp/rd/technology/nand-flash.html (参照日2025年8月4日).
(5) 3次元フラッシュメモリ「BiCS FLASH™」とは, キオクシア(株), https://www.kioxia.com/ja-jp/rd/technology/bics-flash.html (参照日2025年8月4日).
(6) Ryuichi Fujimoto et al., “A PCIe-based Optical SSD and Its Potential for Future Disaggregated Network,” Photonics and Electromagnetics Research Symposium 2025 (PIERS 2025), Nov., 2025 (講演予定).
(7) KIOXIA CM7-Rシリーズ(2.5インチ), キオクシア(株), https://www.kioxia.com/ja-jp/business/ssd/enterprise-ssd/cm7-r.html (参照日2025年8月4日).
(8) 光電変換を行うアクティブ光モジュール「LIGHTPASS®シリーズ」の2つの新製品を開発, I-PEX(株), https://corp.i-pex.com/ja/news/993 (参照日2025年8月4日).
(9) 山本崇, 大石恵, 立畠健治, 上野涼, 宮田朋希, 渡邉明理, “マルチモード光電集積CPO モジュール技術”, 第39回エレクトロニクス実装学会春季講演大会,13D4-1,Mar. 2025.
キオクシア(株)
先端技術研究所 AI・システム研究開発センター SSD事業部
キーワード:特集 次世代デジタルインフラの構築