特集 次世代デジタルインフラの構築
グリーンイノベーション基金事業/次世代デジタルインフラの構築プロジェクト“ 次世代グリーンデータセンター技術開発”
プロジェクト概要
グリーンイノベーション基金事業
2050年までのカーボンニュートラル目標は、「今世紀後半のなるべく早期」という従来の政府方針に比べ大幅な前倒しで、現状の取組みを大幅に加速することが必要である。当該目標に向け、我が国の温室効果ガス排出の約85%をエネルギー起源CO2が占めていることを踏まえ、エネルギー転換部門の変革や、製造業などの産業部門の構造転換を図るため、革新的技術の早期確立・社会実装を目指す。2050年までに、新たな革新的技術が普及、カーボンニュートラルの実現に向け、官民で野心的かつ具体的な目標を共有した上で、これに経営課題として取り組む企業などに対して、10年間、研究開発・実証から社会実装までを継続して支援する(図1)。

図1 カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略(1)
次世代グリーンデータセンター技術開発
グリーンイノベーション基金事業の15番目のプロジェクト「次世代デジタルインフラの構築プロジェクト」における研究開発項目3として、次世代グリーンデータセンター技術開発プロジェクトを、2021年~2028年をプロジェクト実施期間として発足した。プロジェクト目標は2030年までに、研究開発を開始した2021年時点で普及しているデータセンターと比較して40%以上の省エネ化を実現すること(図2)である。

図2 データセンター全体の電力消費(2)
次世代グリーンデータセンター技術開発においては、5つの研究開発内容について研究開発を進めており、各要素デバイス、光配線技術、ディスアグリゲーション技術の開発を相互連携して実施し、最終的にこれらを組み合わせたディスアグリゲーションシステム実証を行う(図3)。

図3 研究開発と実施企業
【研究開発内容①】
光エレクトロニクス技術の開発
- 光電融合デバイス開発
- アイオーコア(株)
- 光スマートNIC開発
- 1FINITY(株)
- 古河ファイテルオプティカルコンポーネンツ(株)
- 京セラ(株)
【研究開発内容②】
光に適合したチップなどの高性能化・省エネ化技術の開発
- 省電力CPU開発
- 富士通(株)
- 不揮発メモリ開発
- キオクシア(株)
【研究開発内容③】
ディスアグリゲーション技術の開発
- 日本電気(株)
データセンターは、サーバを構成する多くの要素デバイス、建物、空調などが電力を消費するため、各要素デバイスだけで実現できる省エネ化には限界がある。データセンターの省エネ化40%以上という目標を達成するために、各要素デバイスおよびディスアグリゲーション技術の開発において、いずれも高い省エネ化目標を設定し、各事業者が連携して一体的に取り組むことを求めている。また上記技術の融合により、各コンポーネントの低消費電力化だけでなく、光通信による伝送容量と通信距離の課題を解消し、データセンターの新たな自由度の高いシステムアーキティクチャの実現が期待できる。
各研究開発の概要
光電融合デバイス開発
チップ間などのサーバボード上短距離通信において高速化が進むことで、現状の電気配線では消費電力が増大するため、光配線化が急務であるが、チップ間の光配線のための超小型光トランシーバ「光電融合デバイス」が注目されている。2025年以降に主流になると見込まれる通信規格に対応した高速化技術を開発し、チップ間接続の消費電力90%削減を目指す。
光スマートNIC開発
データセンターのCPUにかかる大きな計算負荷を低減するために、通信に係る処理の一部を分担するプロセッサを搭載したスマートNIC(NIC:ネットワークインターフェースカード)を光化するとともに、光伝送装置を小型化・一体化してデータセンター間の長距離光通信からサーバ内光配線までをシームレスに光接続できる「光スマート NIC」を開発する。これらにより、ビットあたり消費電力を10分の1に改善するとともに、データセンターネットワークの消費電力25%削減を目指す。
省電力CPU開発
サーバ向けCPUは、データセンターにおいて最も電力を消費する要素デバイスの一つであり、省エネ化はデータセンター全体の省エネ化において極めて重要となる。光配線を実装するとともに、省エネ性能に優れるARMアーキテクチャを用いた上で、微細化、回路設計技術の高度化などにより、現行CPUに対し10倍の電力効率向上を目指す。
広帯域SSD開発
SSD(フラッシュメモリ)においては、データ量の急増に伴い、それを活用するプロセッサからのアクセスが増えるため、インターフェースの高速化が課題になる。しかし、2025年以降は発熱のため電気配線では帯域向上が難しくなると予測されている。光インターフェースを搭載することで、発熱を抑制して並列化により128GB/sの大幅な広帯域化を目指す。
ディスアグリゲーション技術の開発
データセンターは数多くのサーバから構成されおり、デバイス単位では、未使用状態になる時間が多いため、効率化が必要になる。負荷に応じて機能(デバイス)ごとに計算リソースを割り当てるディスアグリゲーション技術に伝送遅延が小さい光配線を導入し、より柔軟な制御を実現する。また、AIを活用した割り当て制御ソフトなどを開発し、前述の内容で開発した要素デバイスを光接続したシステム実証を実施することにより、システム全体で 20%の省エネ化を目指す。
企業間の連携
実施企業は産総研コンソーシアムの一つとして、「次世代グリーンデータセンター用デバイス・システムに関する協議会」を2022年4月に設立した(図4)。NEDOグリーンイノベーション基金事業「次世代デジタルインフラの構築」における「次世代グリーンデータセンター技術開発」プロジェクトを円滑に進める役割を担う。それ以外にも、次世代グリーンデータセンターをキーワードに光電融合技術、省電力チップ技術、ディスアグリゲーション技術の研究開発・事業者や社会実装に必要なバリューチェーン、データセンター事業者などとともに情報共有、意見交換から新規の共同研究開発/標準化活動の提案などを行う。次世代グリーンデータセンター技術開発の実施企業は、この協議会の中で仕様検討やプロジェクトで実施するシステム実証に向けたすり合わせを行っており、その成果の一つとして、ディスアグリゲーション技術に基づく装置基盤の要件とインターフェースを定義したドキュメント(Developer’s Interface Guide)を公開している。
また、協議会では毎年、公開シンポジウムを開催しており、2025年は10月28日の開催を予定している。次世代グリーンデータセンター技術開発プロジェクト全体の進捗ならびに今後の展開に関するご報告、光SSDに関するご報告、およびプロジェクト参加各社の関連成果の展示。データセンター関連の基調講演、招待講演を予定している。

図4 GDC協議会(3)
活動成果
前述のDeveloper’s Interface Guide公開以外にも実施企業は数多くの学会などで研究開発について発表、出展を行っている。その中でも、共同で出展したものとして、「大阪・関西万博」への出展(2025年5月13~26日・図5)がある。ターゲットをデータセンター関連の方々ではなく、一般の方々として、データセンターの将来や開発技術によって世の中がどのように変わるなどを解説する出展内容とした。連日、想定以上のお客様にご来訪いただき、盛況の内に終了している。また、この出展の中で、オランダ公益団体フォントデルタと光半導体分野のパートナーシップに加盟、本プロジェクトと海外との連携も今後推進していく。

また、2025年はCEATECへの出展を予定している。NEDOブースの一角に次世代グリーンデータセンター技術開発展示エリアにて、実施企業からの研究開発報告や今後のビジネスについて相談いただける展示となる。
おわりに
データセンターの需要について、2021年のプロジェクトスタート時から学習型と推論型という考え方やAIデータセンター建設と拡大している。
次世代グリーンデータセンター技術開発は光接続とディスアグリゲーション技術により、データセンター構成やサーバ構成に対する新しいアーキテクチャの可能性を提案できると考えている。実施企業は未来のデータセンターと必要な技術について、関連企業も加えて日々議論し、研究開発を進めている。ぜひとも各社のHPや研究開発内容、成果発表をご覧いただき、一緒に議論する仲間となっていただけると幸いである。どうぞよろしくお願いいたします。
参考文献
(1) カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略, 経産省,https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/ggs/index.html(参照日2025年8月22日).
(2) 『次世代デジタルインフラの構築』プロジェクトに関する研究開発・社会実装計画(案)の概要, 経産省,https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/green_innovation/industrial_restructuring/pdf/003_04_00.pdf (参照日2025年8月22日).
(3) GDC協議会,GDC協議会,https://unit.aist.go.jp/peirc/gdc/index.html(参照日2025年8月27日).
図5 大阪・関西万博出展
(国研)新エネルギー・産業技術総合開発機構
半導体・情報インフラ部
キーワード:特集 次世代デジタルインフラの構築