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2025/10 Vol.128

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特集 次世代デジタルインフラの構築

省電力CPU「FUJITSU-MONAKA」

富士通(株)

FUJITSU-MONAKAの概要

NEDOプロジェクト「次世代グリーンデータセンター技術開発」において、富士通は巨大なコンピューティングパワー、高い安定性とセキュリティ、高い電力性能を兼ね備え、大幅な消費電力増が予測される将来のデータセンターに適応する省電力CPUの開発に取り組んでいる。本稿はコードネーム「FUJITSU-MONAKA」と名付けたCPUの概要について述べる。

FUJITSU-MONAKAはArm命令セットアーキテクチャに基づく汎用CPUで、スーパーコンピュータ「京」や「富岳」などの開発で培った自社設計のマイクロアーキテクチャ、低電圧回路技術といった富士通独自技術の活用により、高い処理性能と電力効率を両立させることを目標に開発を進めている。また、その性能を手軽に最大限活用できるように、OSSコミュニティ連携を通じた業界標準ソフトウェアへの対応を推進している。

図1はFUJITSU-MONAKAの特徴を簡潔に図示したもので、上部の赤色部分は、FUJITSU-MONAKAの独自機能(当社のマイクロアーキテクチャ、3Dメニーコアアーキテクチャ、およびConfidential Computing)を示しており、これらが下部の緑色で示されるメリットと価値(高性能、高電力効率、安心・安全、および使いやすさ)を実現している。

図1 FUJITSU-MONAKAの特徴

FUJITSU-MONAKAの技術的な特徴

3Dメニーコアアーキテクチャ

ここではFUJITSU-MONAKAの3Dメニーコアアーキテクチャについて述べる。図2のTop ViewはFUJITSU-MONAKAを上から見たもの、Side Viewは横から見たものである。図中のCore Dieは主に演算回路を搭載したメニーコアのブロックで最先端の2ナノメートルテクノロジーを採用しており、SRAM Dieは主にメモリを搭載したブロックで、従来技術の5ナノメートルテクノロジーで作られている。

図2 3Dメニーコアアーキテクチャ

FUJITSU-MONAKAはこれらのダイをSide Viewで示されているように立体的に積み重ねることで、メニーコアによる高スループットを最小のフットプリントで実現するとともに、世代の異なる半導体テクノロジを適切に組み合わせることでコスト効率の最適化を図っている。

超低電圧動作

超低電圧で安定動作する点もFUJITSU-MONAKAの特徴である。一般的にはCPUの電源電圧を下げると回路スピードが遅くなり、さらに安定動作が難しくなるが、当社独自の回路設計技術によりこれらを克服した。CPUの電源電圧を下げるとその分消費電力も少なくなるので、これらの独自技術によりFUJITSU-MONAKAの電力効率は大きく向上し、2027年において競合他社比で2倍ほどになると予想している。

Confidential Computing

ここではFUJITSU-MONAKAを用いて構築したクラウド環境のセキュリティを強化するためのConfidential Computing技術について述べる。

現行CPUを用いて構築したクラウド環境においては、利用者はクラウド事業者が構築するクラウド基盤(ハイパーバイザ)上に、利用者毎に仮想マシン(VM:Virtual Machine)空間を構成してクラウド環境を利用する。仮にこのクラウド環境のセキュリティが脆弱で、例えばVMのメモリ保護機能に穴がある場合、悪意のある攻撃者によってVM内のデータにアクセスされ情報漏洩するリスクがある。

図3のようにクラウド環境のCPUとしてFUJITSU-MONAKAを用いると、Confidential Computingの機能によってこのリスクを軽減することができる。FUJITSU-MONAKAはVMごとに異なる鍵を用いてデータを暗号化する仕組みをハードウェアレベルで有しているため、ハイパーバイザ階層からVM内のデータを参照することができない。その結果、VM内のデータは完全に保護された状態になり、情報漏洩のリスクが大幅に低減される。

図3 Confidential Computing機能

AIコンピューティング基盤

高い電力性能を誇るCPUとしてのFUJITSU-MONAKAと高性能なGPUを組み合わせることで、多くのAIサービスにおいて優れたパフォーマンスと電力効率を実現するAIコンピューティング基盤の実現が可能になる。

一般的に、AIには学習させてモデルを作るプロセスと、学習済みのモデルにもとづいてデータの予測や分類を行う推論のプロセスがあり、FUJITSU-MONAKAとGPUの組み合わせは、大規模言語モデルをはじめとするさまざまなAIモデルの学習と推論処理に活用される。AIの学習には膨大な計算資源が必要なためGPUがよく使われるが、学習ほど演算量を必要としない推論処理ではFUJITSU-MONAKA単体でも高い性能を発揮することができる。

FUJITSU-MONAKAが搭載しているFP16(16ビット浮動小数点数)、FP8(8ビット浮動小数点数)などの低精度浮動小数点演算命令は、高い計算精度よりも演算速度が重視されるAI処理に適しており、生成AIエンジンなどもCPU単体で高い性能を発揮するよう設計されている。これにより、例えば大規模言語モデルなどの生成AIを使うときにも、推論処理にはGPUを使用しない分、優れた電力効率を実現し、さらにCPUであるために、柔軟なアプリケーション開発が可能、エッジコンピューティング環境や小規模データセンターにも導入しやすい、といったメリットもある。加えて、FUJITSU-MONAKAは競合CPUに比べて高性能、低消費電力、高セキュリティを誇り、より速く、グリーンかつ安全な推論環境を提供する。図4はFUJITSU-MONAKAによるAIコンピューティングについてまとめたものである。

図4 FUJITSU-MONAKAによるAIコンピューティング

おわりに

当社にて開発中の省電力CPU「FUJITSU-MONAKA」について概要を紹介した。FUJITSU-MONAKAは2027年リリースを目指して順調に開発を継続中である。以下のサイトにてより詳細な情報を発信しているので合わせて参照されたい。

【FUJITSU-MONAKA】

https://www.fujitsu.com/global/about/research/technology/fujitsu-monaka/

https://www.fujitsu.com/jp/about/research/technology/fujitsu-monaka/


富士通(株)

先端技術開発本部

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