特集 次世代デジタルインフラの構築
データセンターネットワークの消費電力を最大25%削減する光スマートNIC 開発
はじめに
当社グループは「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」をパーパスとして掲げている。このパーパスを実現するため、「地球環境問題の解決」、「デジタル社会の発展」、「人々のウェルビーイングの向上」の3分野を必要不可欠な貢献分野として定めている。特に「地球環境問題の解決」につながる気候変動問題に関して、三つの柱(バリューチェーンでのネットゼロ、カーボンニュートラル社会への貢献、気候変動による社会の適応策への貢献)で構成された長期的な目標と戦略を示す富士通グループ環境ビジョンを策定し、このビジョンに基づいてカーボンニュートラル社会の実現と気候変動対策への貢献を目指している。
一方で、AI・ビッグデータの産業利用が進展するに伴い、データセンターの計算能力と省電力性に対する需要は増加し、光伝送装置(通信機器)を含めた、データセンターの省電力化は、地球環境問題の解決に貢献する重要な取組みの一つとなっている(図1)。

図1 マクロトレンドと産業アーキテクチャ
本稿では、これまで培ってきた光伝送装置の開発技術をいっそう深化させ、データセンター内・データセンター間をシームレスに光接続する低電力・大容量・小型化を実現する光スマートNIC(Network Interface Card)について紹介する。
光スマートNICの開発背景
近年、国内外における経済活動の活性化に伴い、IoT(Internet of Things)、AI(Artificial Intelligence)、およびビッグデータ処理技術は著しく進展している。これにより、これらの先進的技術を活用した新たなサービスやアプリケーションが継続的に創出されている。さらに、ChatGPTの登場以降、生成AIを含む大規模言語モデルの普及が加速したことにより、インターネット上におけるデータ量は急激に増加している。
世界のデータセンターのトラフィック量は年間約25%のペースで急増しており、2030年には2019年の11倍が推定される(図2)。

図2 世界のデータセンタートラフィック量と消費電力
また、情報処理需要の急激な高まりにより、データセンター内の機器の消費電力、および、CO2排出量の増加が予見されている。特にハイパースケール型大規模データセンターのネットワーク機器の消費電力は現状6~7%程度だが、2028~30年頃には、45%へ上昇見込みとの推察もあり、データセンター内のネットワーク機器の消費電力低減、大容量、小型化がますます重要となっている。
光スマートNIC研究開発の取組み
光スマートNIC概要
従来技術として、光伝送装置は、脱着可能な光トランシーバーと専用LSIでレイヤ1信号の多重・分離フレーム処理を実現している。また、サーバ上のCPU負荷をオフロードするアクセラレータを搭載したSmartNICも脱着可能な光トランシーバーを搭載している。
「光スマートNIC」は、光伝送装置とサーバ用SmartNICを統合、電気信号と光信号を高度に組み合わせている。さらに低電力化で注目されているCPO(光電融合実装技術)と低電力・低遅延・大容量伝送を実現するL1フレーム処理技術を組み合わせることにより、ビットあたりの消費電力を研究開発開始時点の光伝送装置と比較して10分の1に低減し、データセンターネットワークの消費電力を最大25%削減する(図3)。

図3 光スマートNICへの統合イメージ
データセンターにおける光スマートNIC適用イメージ
光スマートNICは、データセンター内のTOR(Top Of Rack)とリーフ/スパインで構成されるネットワークスイッチの一部を介さずにラック間を直接光接続すること、および、光伝送装置を介さずに広帯域ネットワーク(WAN)へ光回線で直接接続することを行う。これにより、低消費電力、大容量、小型、低遅延を実現しつつ、データセンター内のネットワーク電力低減に貢献する(図4)。

図4 光スマートNIC適用イメージ
おわりに
データセンターネットワークにおけるネットワーク機器の消費電力増加は深刻な課題であり、2030年には大型データセンター内の消費電力の3分の1程度を占めると予測されている。2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、本研究開発で取り組む光スマートNICは、データセンターネットワークにおける消費電力低減に貢献し、CO2排出量の削減を目指すものである。本技術開発を通じて、より持続可能な社会の実現に貢献できると確信している。
記載内容は、(国研)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業の成果を活用しています。
参考文献
(1) 経済産業省 商務情報政策局,「次世代デジタルインフラの構築」プロジェクトに関する研究開発・社会実装計画(案)の概要, P46, 経産省,
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/green_innovation/industrial_restructuring/pdf/004_03_00.pdf (参照日2025年7月28日).
1FINITY(株)
フォトニクスシステム事業本部
キーワード:特集 次世代デジタルインフラの構築