和文学術誌目次
日本機械学会論文集 掲載論文Vol.92, No.957, 2026
公開日:2026年5月25日
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/transjsme/92/957/_contents/-char/ja
<熱工学,内燃機関,動力エネルギーシステム>
高温空気流中におけるバイオプラスチックの燃焼挙動
永澤 栄太郎, 武田 洋一, 末永 陽介, 柳岡 英樹
https://doi.org/10.1299/transjsme.26-00019
空気流の温度と速度が円柱形バイオプラスチック(PLA)の燃焼特性に及ぼす影響について調査し,PMMAの結果と比較された.垂直に置かれた燃料の上側端面を着火した後,15,100,400℃に設定された空気流を上方から供給した.空気流速の増加に対し,燃料は火炎に広く覆われ,予熱と熱分解が顕著になり,発熱速度が増加した.PMMAでは有炎燃焼のみが,PLAでは有炎燃焼に加え表面燃焼が観察された.この表面燃焼は,空気流が高温かつ高流速域で多く観察され,表面燃焼もまた発熱速度の増加に寄与する.空気流の温度上昇は燃焼性を高め,特にPLAでは燃え残り量が低く,PLAも燃料としてサーマルリサイクルに利用できることがわかった.
<機械力学,計測,自動制御,ロボティクス,メカトロニクス>
画像機械学習に基づく文字認識とロボット間距離推定モデルを用いた小型ロボットの追従走行
福島 知俊, 糸谷 和晃, 井上 貴浩
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00210
本研究はスワームロボティクスにおける多数の小型ロボットによる隊列走行やフォーメーション移動の実現を目的としており,マイコンなどのエッジデバイスに実装可能な追従アルゴリズムと走行制御手法の提案と実機での実用的な追従走行の実現を目的としている.本稿では軽量な機械学習アルゴリズムであるFOMO(Faster Objects, More Objects)に基づくリアルタイム物体検出が可能な推論モデルを導出し,小型移動ロボットに実装した上で画像学習を基礎とした文字認識による複数ロボットの追従制御手法を提案した.
自動車ねじりダンパのトルク制御におけるホモトピー連続法に基づく目標値整形
劉 勇, 南 裕樹
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00213
自動車用ねじりダンパの評価において,低剛性や不感帯特性に起因するトルクのオーバーシュートは,試験精度と安全性を損なう.近年,1パルスコマンドに対するベイズ最適化を用いたコマンド整形手法が提案されているが,最適化過程におけるオーバーシュートの抑制は依然として課題である.本研究では,ローパスフィルタとホモトピー連続法を組み合わせることで,初期値および探索範囲を適切に設定し,オーバーシュートを低減するコマンド整形手法を提案する.シミュレーションにより,提案手法が従来手法と比較してピークトルクと発生頻度を低減することを確認した.また,トルク指令値やダンパ特性の変化に対しても高いロバスト性を示した.
ゴルフクラブの変更がスイング動作に及ぼす影響のマルチボディダイナミクス解析
米安 哲史, 真崎 裕大, 二嶋 岳大, 岩村 誠人
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00228
ゴルファーに最適なクラブを提案するフィッティングシステムは普及しているが,クラブの長さや質量の変化がスイングに及ぼす影響は十分に考慮されていない.本研究では,3次元モーションキャプチャで計測したスイングデータから最小二乗法でスイング平面を推定し,その平面上でスイングを2次元的に表現する新たな解析モデルを提案する.本モデルは肩関節を支点として固定しない特殊なリンク系であるため,マルチボディダイナミクスに基づき動力学モデルを構築する.さらに,構築したモデルに基づき,最適なスイング動作を効率的に探索する手法を提案する.最後に,本手法によりクラブの変更がスイングに及ぼす影響を予測可能であることを示す.
ANCFに基づく皮膚モデルと物体とのノンスムースな接触を考慮した運動解析手法
北澤 勇気, 菅原 佳城, 武田 真和,池田 凌太, 大橋 拓生
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00229
本研究では,人の皮膚の柔軟変形と剛体とのノンスムースな接触を考慮した運動解析手法として,皮下組織をANCFにより連続体として表現,表皮組織を離散質点として表現し,この質点に対してLCPを適用することで接触現象を考慮する手法を提案する.疑似指の平面上滑らせ動作に本手法を適用し,再現実験および既往のばねマスダンパ系モデルと比較した結果,柔軟変形に伴う剛性変化やStick/Slipを含む接触状態の遷移を適切に表現し,骨位置および速度の時刻歴が良好に再現された.本手法は,柔軟体と剛体が関与する接触運動を高精度に解析できることを示し,人間―機械接触システムの設計におけるモデルベース開発の有効性向上に寄与することが期待される.
1つの変位センサを用いたかご室昇降中のエレベーターロープの地震時最大変位推定
中西 凌士, 三浦 奈々子, 小川 哲, 田中 和宏, 吉田 拓
https://doi.org/10.1299/transjsme.26-00013
地震時にはエレベーターロープが建物の揺れに共振するため,地震時管制運転によりエレベーターの運行が制限される.本稿では,ロープの振動を推定し,その振動が小さいことが確認できれば地震発生時でもエレベーターの運行が可能であるという仮定のもと,かご走行中に地震により加振されたエレベーターロープの横振動を推定する手法を提案する.この手法では,巻上機近傍の変位データに短時間フーリエ変換を施し,振幅と位相のスペクトルからロープの各振動モードの振幅を求めることで,ロープ全体の振動を推定する.提案手法の推定精度を地震により加振されたメインロープに対して検証した.解析は6種類の地震と4種類のかご速度を用いて行った.かご速度が最も遅い1.0 m/sのときに,最大変位を約10 %の誤差で推定できることを確認した.また,かご速度が増加するにつれて誤差が大きくなること,地震波ごとに誤差の大きさが異なり,変位が急激に変化した場合には誤差が大きくなる傾向にあることが確認された.
<マイクロ・ナノ工学>
繊維配向推定モデルによる衝突CAEモデリングの高速化手法の構築
伊藤 修, 中川 善和
https://doi.org/10.1299/transjsme.26-00041
自動車の衝突安全シミュレーションの信頼性向上には,樹脂部品の変形を高精度に予測することが重要である.繊維強化樹脂では繊維配向が強度・破壊挙動を大きく左右するが,配向予測に用いられる従来の樹脂流動解析は計算負荷と手間が大きく,迅速な設計反復に適用しにくい.そこでPix2Pixに基づくサロゲートモデルを提案し,部品を一様な直方体ボクセル集合として表現することで形状差に柔軟に対応し,メッシュ依存性も低減する.検証では等方材モデルに比べピーク荷重誤差を8ポイント改善(−19%→+11%)し,計算コストも大幅に削減した.
<設計,機素・潤滑,情報・知能,製造,システム>
外的及び内的に不確実な環境下にあるサービスビジネスプロセスのシミュレーションベースの設計手法 (ITサポート業務プロセスを対象としたケーススタディによる手法の妥当性評価)
鈴木 陽一郎, 稗方 和夫, 中島 拓也, 金 雁
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00166
本研究は,予測可能・不可能な需要に対応するIT部門の業務プロセスを対象に,離散事象シミュレーションを用いた業務プロセス設計手法を提案することを目的とする.サービス業に特有の外部環境による需要の不確実性と,例外処理や調整など内部環境による不確実性を考慮し,設計を「静的構造設計」と「運用指針設計」に分類.各カテゴリから設計パラメータを選定し,設定を変えることで複数の代替プロセスを生成・評価した.ケーススタディにより,目標達成に有効な設計パラメータと設定を特定し,次の処理要求の選択方法の工夫がプロセスの信頼性向上に寄与することを定量的に示した.
<交通・物流>
電動パワーステアリングと前輪インホイールモータを用いた自動二輪車の静止時自立制御
土屋 光生, 木村 哲也, 神津 大介, 赤間 俊一, 原 進
https://doi.org/10.1299/transjsme.26-00010
二輪車はある程度以上の速度領域では自律安定性を発揮するが,低速度領域では自律安定性に乏しくなり,静止時には何らかの支持がなければ自立を保てない.本論文では後者のための安定化制御について,電動パワーステアリングと前輪インホイールモータを含めた実機により安定化が可能であることを示すことを目的とした.制御系設計においては,タイヤのクラウン形状を考慮し,非ホロノミック拘束によるモデル化により静止時の制御系設計を可能とした.そして,高次振動モードの影響を抑制するための周波数成形最適レギュレータと横風外乱等に対するロバスト性の向上を目的とした外乱オブザーバの併用により,実験的に安定化を達成した.
アルミニウム合金製中空押出形材で構成した鉄道車両構体における周方向面外曲げモーメント分布算出手法の提案
川崎 健
https://doi.org/10.1299/transjsme.26-00018
鉄道車両構体の軽量化と乗り心地を両立する構造決定で,経験の浅い設計者が見通しを立てやすく,機械学習が出力する経験がない解の機序の理解を目的に,アルミ合金製ダブルスキン構体を対象に周方向面外曲げモーメント分布の算出手法を提案する.実務上一般的な仮想構体を提示し,特徴的な断面構造や変形モードをふまえた要素モデルで妥当性を評価したところ,理論解と実用上一致し妥当性を確認した.仮想構体に適用して得た分布は,有限要素解析の変形や応力分布と整合した.結果に基づき板厚を調整したところ,質量0.3%減,相当曲げ剛性0.4%向上を達成した.以上より,提案手法は妥当であること,構造決定に有効であることを確認した.
日本機械学会学術誌規定が改訂され,日本機械学会論文集に「機械工学レター」(速報に値する短い論文)が投稿できるようになりました!是非とも投稿をご検討ください.
https://www.jsme.or.jp/bulletin/news20250409.pdf
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