特集 機械技術史のあり方を考える
近代工作機械の発展史と工作機械博物館
はじめに
我々の身の回りには、生活を豊かにするためのたくさんの工業製品がある。例えば自動車や航空機などの輸送機械、農業機械や建設機械、石油や天然ガスの採掘機械、家電製品や通信機器、人工骨や医療機器、そしてこれらをつくるのに必要となる半導体の製造装置やさまざまな金型などである。このような工業製品を生産する際に必ず使われているのが工作機械である。それゆえ工作機械は機械をつくるための機械、すなわち「マザーマシン」といわれている。しかしながら「こうさくきかい」と聞いて「耕作機械」と思い浮かべる一般の消費者が少なくない。これは工作機械が生産設備として工場の中に設置されていて、一般の消費者の目に触れる機会がほとんどないからである。
そこでヤマザキマザック(株)は工作機械の一般への認知度を高めるべく、2019年11月に創業100周年を記念して「ヤマザキマザック工作機械博物館」を開業した(図1)。この200年にわたる近代工作機械と代表的な工業製品を展示するとともに、近未来型の工場としてのスマートファクトリを併設した工作機械に特化した博物館である(1)。
本稿では、産業革命とともに登場した近代工作機械の発展経過を述べ、当館の展示概要と産業遺産としての工作機械の保存と活用の一例として、当館の取組みを紹介する。

図1 ヤマザキマザック工作機械博物館