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2025/7 Vol.128

表紙:経年変化してグラデーションに紙焼けをした古紙を材料にコラージュ作品を生み出す作家「余地|yoti」。
古い科学雑誌を素材にして、特集名に着想を受け、つくりおろしています。

デザイン SKG(株)
表紙絵 佐藤 洋美(余地|yoti)

バックナンバー

和文学術誌目次

日本機械学会論文集 掲載論文 Vol.91, No.946, 2025

公開日:2025年6月25日

https://www.jstage.jst.go.jp/browse/transjsme/91/946/_contents/-char/ja

<材料力学,機械材料,材料加工>

鋼製支柱の疲労強度評価のための繰返し曲げねじり試験装置の開発

旭吉 雅健, 舞永 良太郎, 奥田 祥平, 何 磊, 伊藤 隆基

https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00047

鋼製支柱の疲労強度調査のために繰返し曲げ負荷試験が行われることが多いが,実使用環境では,負荷モードが単純な曲げのみならず,ねじりやそれらの混合負荷も考えられる.また,鋼製支柱の基底部はリブ溶接補強されるが,その応力集中部からのき裂発生状況の把握や疲労特性データの蓄積も不可欠であることから,実体に対して繰返し曲げねじり負荷試験が可能な装置を開発した.2つの油圧アクチュエーターの動作を制御することで,任意の負荷モードでの疲労強度特性調査を可能とした.鋼製支柱基底部の補強リブの形状が疲労強度に及ぼす影響について調査したが,U字形状リブが三角形状リブよりも長寿命であることを本試験装置でも確認した.

ボルトへの曲げ負荷を考慮したデジタル画像相関法によるボルト軸力計測

井上 剛志, 澤田 貴彦, 長埜 浩太, 竹田 憲生, 倉敷 哲生

https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00053

機械構造物におけるボルト締結部の製造・保守時では,利便性と精度を両立した軸力管理方法が求められている.本報では,ボルト頭部の撮影画像からDIC計測した頭部ひずみを用いて軸力を求める方法に関して,ボルトへの曲げ負荷を考慮した軸力計測方法を考案した. M20ボルトを対象としたボルト締付け試験において,考案した方法から求められた軸力は,ボルトゲージにより計測された軸力と良く一致し,全試験での両者の平均絶対差は4.9 kNであった.曲げ負荷比率が大きい試験結果に対しては,曲げ負荷の考慮前後で,求めた軸力の偏差が14%程度あり,考案した方法により,より厳密な軸力評価が可能となることを示した.

非フーリエ熱伝導方程式と連成された動熱弾性方程式による欠陥を有する二次元平板問題の数値解析

荒井 正行

https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00058

本研究では,平面応力状態における二次元平板問題に対して,非フーリエ熱伝導方程式と連成された動熱弾性方程式に基づいて,熱波と弾性波の伝播,反射挙動を調べたものである.本論文では,光音響顕微鏡の数値シミュレーションに焦点を当て,二次元平板端面近くに円形欠陥を想定し,欠陥サイズと深さの違いが板端面に沿った温度分布と粒子速度分布,平板内の応力分布に及ぼす影響を調べた.円形欠陥の存在により,熱波と弾性波が反射,合成されて,これらの分布は大きく変動することがわかった.特に,温度分布は欠陥の先端に温度,応力分布が集中することが観察され,欠陥形状が表面温度分布に強い影響を及ぼすことが確認された.

1軸負荷条件を用いてHCP多結晶金属のCRSS比を効率的に予測するシステムの開発

三上 颯太郎, 河野 義樹, 岩館 健司

https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00065

Critical resolved shear stress (CRSS)は金属の塑性に関わる重要なパラメータの一つであり,すべり系間のCRSS比は塑性異方性や加工性などを決定する.そのため,CRSS比を短時間で高精度に予測できることの価値は高く,CRSS比を予測するためのシステムの開発が行われている.しかし,従来のシステムでは予測に多大な時間を要した.本研究では,計算手法自体の工夫や,メタヒューリスティックスの一手法であるCovariance matrix adaptation evolution strategy(CMA-ES)を導入することで,この問題の解決を試みた.これらの手法を導入したシステムは,HCP金属のすべり系のCRSS比を数秒以内に予測することを可能とした.

<熱工学,内燃機関,動力エネルギーシステム>

SIエンジンにおける高EGR場の着火安定性の予測に向けた放電モデルの構築

安達 龍, 菅沼 邦彦, 小岩 賢司, 中谷 辰爾, 任 方思

https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00038

最近,内燃機関の熱効率を向上させるためにEGR(排ガス再循環)燃焼が使用されている.しかしながら,EGR燃焼は着火安定性の悪化を引き起こし,サイクルごとの燃焼変動や失火率の増加につながる.高EGR条件下における着火安定性を向上させるためには,着火メカニズムを解明し,このメカニズムを組み込んだ予測モデルを開発することが重要である.特に,火花の短絡と再放電は火炎核の形成に直接的な影響を与えるため,モデル化する上で重要な要素である.RCM(急速圧縮機)を使用した実験では,点火プラグ近傍の流速やEGR率の変化に伴い,着火安定性が変化することが明らかとなった.さらに,失火が発生するとき,火花の短絡により火炎核が細切れに形成され,その後消炎する.本研究で構築したモデルは,空間電位モデルと放電経路探索モデルを組み合わせたもので,前述した火炎核挙動やRCMおよび実エンジンのEGR限界を再現することができる.

<機械力学,計測,自動制御,ロボティクス,メカトロニクス>

半自律領域掘削のための作業進行時間軸を含む多重らせんアトラクタの設計

岡田 昌史, 塩田 和陽

https://doi.org/10.1299/transjsme.24-00239

これまでに,遠隔掘削の支援を目指した半自律制御系の設計を行ってきた.自律系には目標の軌道に引き込まれるようなベクトル場を用いたが,これは排土しながらある領域を掘削するような,同じ点を何度も通る軌道には適さない.そこで本論文では,作業の進行度合いを表すインデックス値を用いて次元を拡張し,一連の作業をらせんで表すことで領域掘削を可能とする自律系を設計する.また,掘削の失敗などでは人が介入して修正する必要がある.そこで,らせんを無限の数の多重らせんとすることで,多次元空間の中のある筒状の面上をらせんを描きながら移動するようなベクトル場を設計することで,人が介入可能な半自律制御系の設計を行う.

データ駆動型コマンドシェーピングを用いたねじりダンパのトルク制御精度向上

劉 勇, 南 裕樹

https://doi.org/10.1299/transjsme.24-00273

自動車用ねじりダンパは,エンジンによって発生するトルク変動を吸収し,後方にある部品に滑らかなトルクを伝えるように設計されている.これらのダンパのねじり評価試験では,回転しながらねじりトルクがダンパに繰り返し適用される.ねじりダンパは不感帯要素と多段スプリング要素で構成されているため,既存の制御器では性能改善に限界があった.本研究では,コマンドシェーピング法より目標値を修正するアプローチを採用した.そして,ベイズ最適化を用いて1パルスコマンドパラメータを最適化することで制御性能を改善した.最後に,シミュレーションと実機実験を通して,提案方法の有効性を確認した.

スコットラッセル機構を用いた人と協調する跳躍アシストデバイス

川上 巧真, 西島 悠喜, 矢木 啓介, 森 善一

https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00033

本研究では,人との協調動作により,人の跳躍力を最大限に活かすことのできる跳躍デバイスを提案する.本デバイスは,アクチュエータとしてエアシリンダを選択し,スコットラッセル機構を用いることにより,鉛直方向に推力を発生できるシンプルな跳躍デバイスとなる.実験の結果,ジャンプ高さは,デバイスを使用しない場合と比較して約0.8~35%(0.4~12.4 cm)向上した.また人の跳躍時に生じる揺らぎに対してロバストであり,安定した跳躍を実現できることが確認された.

分割された変形空間を有するダイアフラム型DEG伸縮装置とその解析・設計

佐野 巧実, 菊地 邦友, 長瀬 賢二

https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00061

本論文では,ダイアフラム型DEG伸縮装置の新たな枠組みとして,分割された変形空間を有するDEG伸縮装置の提案を行った.提案装置は,DEGを同じ形状の穴が複数開いた本体フレームと中空の下部フレームで挟み込む構造をしている.DEGは,上下面の圧力差により,穴に沿ってひだの様に変形するため,少ない変形空間で大きな面積変化比を実現できる.DEGの面積変化比は一般に穴の数(分割数)を増やすと増加するが,面積変化比を大きくしすぎると破断などの懸念がある.そこで,指定された値の範囲内で,面積変化比を最大化する分割数の決定方法についても合わせて考えた.提案装置の有効性と解析結果の妥当性は,実験により検証した.

<設計,機素・潤滑,情報・知能,製造,システム>

ボールエンドミルの突き出し長さに応じた切削条件補正システムの開発

児玉 紘幸, 守屋 祐輝, 盛元 達雄, 大橋 一仁

https://doi.org/10.1299/transjsme.24-00128

金型加工の分野において,工具形状,加工経路,被削材の特性,加工効率,仕上げ精度など,さまざまな要素を総合的に考した適切な切削条件の決定が重要である.しかしながら,現在の切削条件の決定方法は,熟練技術者の勘や経験に大きく依存しており,それに代わる知識ベースのシステムの構築が求められている.加工精度および加工効率に影響を与える重要な要因の一つが,工具の突出し長さであり,これは工具形状と密接に関連している.一方で,工具突出し長さを考慮して切削条件を決定するための明確な指針は存在していないのが現状である.先行研究では,データマイニング手法およびランダムフォレスト回帰(RFR)を工具カタログデータベースに適用することで,切削条件を迅速に導出するシステムを開発した.本研究では,既存のモデルを基盤として,工具突出し長さを考慮した新たな切削条件補正システムを構築した.高アスペクト比における突出し長さを適用した切削実験の結果,本システムが提案する補正係数が有意であることを確認した.

竹筒固有振動がエンドミル加工で抽出される自己接着成形体用のファイン竹繊維の形状に与える影響

田中 海翔, 北﨑 礼紘, 中原 裕太郎, 中川 正夫, 廣垣 俊樹, 青山 栄一, 野辺 弘道

https://doi.org/10.1299/transjsme.24-00189

環境問題と竹に関する諸問題を解決するため, 竹筒をエンドミル加工した際の切り屑である竹繊維のみを用いた自己接着成形体の作成を試みているが,竹繊維の形状ばらつきの成形体性能への影響が課題である.そこで,本報ではその一因である竹筒固有振動,とりわけ竹筒断面のだ円形に起因する長・短軸各方向への曲げのモードと,より高い振動数で開口部が開閉するモードに着目した.その結果,切削の進行に伴い竹筒の全高が低くなり曲げや開口モードの振動数や振動振幅が変化し,繊維形状に対する影響が減少することが判明した.さらに,工具の公転1回転中に異なる曲げモードの振動数で強制びびり振動が生じ繊維形状に影響することがわかった.

深層強化学習による連続変数と離散変数を有する補剛板の構造最適化

野波 諒太, 北村 充

https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00020

本研究では,大型構造物の板厚と補強材断面形状の同時最適化に深層強化学習の一手法であるDouble Deep Q-Network(DDQN)を適用した.離散的な設計変数を含む構造最適化には,遺伝的アルゴリズム(GA)が用いられることが多いが,設計変数が多い場合には膨大な数の設計案をFEAで評価するため多くの時間を必要とする課題がある.本提案手法では,DDQNを活用することで,GAが有するこれらの課題の解決を目指した.大型構造物を模したFEAモデルを作成し構造最適化を行った結果,GAと比較して提案手法では6%程度軽量設計案に到達し,FEAにより評価した設計案の数を約81%削減できた.この結果から,DDQNを応用した構造最適手法は有効であることを示した.

<生体工学,医工学,スポーツ工学,人間工学>

身体動作の特性を反映した敵対的生成ネットワークを用いた目標歩容の生成

大場 亮弥, 大澤 優輔, 綿貫 啓一, 楓 和憲

https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00003

本研究では,実際の地域高齢者と若年者の歩容特徴を参考に,個人の身体動作の特性を反映した目標歩容を生成することを研究の目的とした.目標歩容の生成手法として,敵対的生成ネットワークに着目し,理想的歩容と非理想的歩容の特徴を対応付けるために,CycleGANの損失関数を利用した.つまずきやすさの異なる2つの歩容データを提案モデルに適用した結果,各生成歩容は人間の歩行時の関節可動域に収まる妥当な値を示し,つまずきやすさの違いと身体的個人差に応じた目標歩容であることが確認された.以上から,目標歩容の生成に敵対的生成ネットワークが有用である可能性が示唆された.

<交通・物流>

軸非対称型ブリッジ回路と直交型重みづけ関数に基づく鉄道車両の脱線係数と車輪・レール接触位置の連続測定法

本堂 貴敏, 田中 隆之

https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00059

鉄道車両の走行安全性評価のための車輪・レール間作用力の測定を目的として,ひずみゲージを多数貼付してロードセル化した「PQ輪軸」が広く使用されている.近年,著者らは左右方向分力である横圧を測定するための新しいブリッジ回路の構成方法として「軸非対称ブリッジ回路」を提案した.この方式の回路の利点は,左右方向の接触点のシフトに起因する測定誤差を低減できることにある.本研究では,軸非対称ブリッジ回路の特性を利用した「直交型重みづけ関数」に基づく,脱線係数(左右分力と上下分力の比)の高精度な連続測定法,およびこの考え方を応用した接触位置の連続測定法を提案し,その妥当性を,1輪軸転走試験によって確認した.

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