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2026/7 Vol.129

装置製作:高山芳の
(多摩美術大学大学院美術研究科デザイン専攻 統合デザイン領域 在籍)
金属・磁石・モーターなどの単純なメカニズムを用いた装置は、重力や摩擦を受け入れながら、ある行為を繰り返します。その姿は、私たちが呼吸し、脈を打ちながら生きていることを思い出させます。本誌では、学部の卒業制作である 10 体の装置〈脈拍〉を中心に、全 12 体の作品を紹介します。

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談話室 きかい

身近な出来事と「バーチャル人体モデル」

小野 英一〔(株)豊田中央研究所〕

高齢者の転倒・骨折は要介護状態の主要な要因ともいわれており、自分もそろそろ注意しなければ、と思っていた矢先の出来事でした。2月の寒い夜、飲み会から急ぎ足で帰る道で縁石に足を取られて転倒してしまいました。左手の中指に痛みがあり、突き指かなと思いつつ、翌朝近くのクリニックを受診したところ、骨折していたことがわかりました。その後、地域の拠点病院で精密検査を受け、そのまま入院・手術という大事に至ったのです。

クリニックの医師からは、「どうしてこんなところの骨(左手中指の中節骨:図1)を折ったの?」と問われ、「(患者である)こっちが聞きたいよ」と思いつつ答えられないでいると「酩酊状態で転倒」とカルテに書かれてしまいました。後で冷静に考えてみると、医学の役割は傷害箇所の治療であって、傷害予測・解析は我々の携わる工学の役割だと気づき、会社の同僚の著書「人体損傷工学(1)(図2)」を入院中に熟読しました。この書籍では、交通事故による死者や負傷者を減らすことを願って研究開発された「バーチャル人体モデルとその応用」について丁寧に解説されています。機械工学の観点では、骨や脳、内臓などの異方性、粘弾性、引張・圧縮非対称性材料の有限要素モデル(材料力学・計算力学)と、ヒトが反射的に行う筋制御(制御工学)に医学的な知見を融合させた分野融合技術となっており、機械工学の幅を広げる一役を担う技術でもあります。書籍では、自動車事故の解析中心に紹介されており、衝突時に身構えを行うことで肋骨の骨折箇所が減少するという計算結果が示されています(図3)

図1 左中指中節骨

 

図2 人体損傷工学(書影提供:朝倉書店)

図3 バーチャル人体モデルによる計算

 

この結果を自身に当てはめて考えることで、自分としては「転倒時の受け身が骨折につながった」という結論を得ることができました。当時私は、左肩にショルダーバッグを下げて左手にベルトを握った状態で転倒しております。このため、何も持たない右手は開いた状態で地面に手の平をつくことができましたが、ベルトを握っていた左手は地面に猫パンチすることになり、いちばん圧力のかかる左手中指の中節骨を骨折したという推測です。

今回の骨折から得た教訓としては、歩行時にはなるべく両手を自由にしておく(ショルダーではなくリュック)こととなりますが、もう一つ、骨折を通して、日本機械学会が目指す一つのロールモデル(分野融合による学会の活動領域の拡大:分野の統合ではありません)の身近な存在に気付くことができたことも付記させていただきます。

談話室「き・か・い」は、気軽な話題を集めて提供するコラム欄です。本会理事が交代で一年間を通して執筆します。

参考文献

(1) 岩本正実[編著], 人体損傷工学,朝倉書店(2025). ISBN:978-4-254-23591-3


<2026年度 広報情報理事>

小野 英一

◎(株)豊田中央研究所 パーソナライズドモビリティ研究領域 理事

◎専門:制御工学、車両運動力学

 

 

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