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2023/1 Vol.126

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特集 学会横断テーマ「機械・インフラの保守・保全、信頼性強化」

企画チーム活動記

井上 裕嗣(東京工業大学)

はじめに

本稿では、学会横断テーマ「機械・インフラの保守・保全、信頼性強化」の企画チームの活動について、執筆者の個人的感想を中心に紹介する。

ことのはじめ

2018年の11月初旬に、当時の常勤理事の久保田裕二氏から電子メールをいただいた。2019年度年次大会(秋田)では、従来の部門提案の積上げ方式からの脱却を図るために理事会企画のOSを設定する方向であり、そのうちの1テーマ案として「インフラの健全性評価(仮題)」が挙がっているので相談したいとのことであった。自分一人では大変だと直感したので、有力な方々にご協力いただいてしっかりとしたチームを結成することが必要だと身勝手に主張して、当時の信濃町の事務局で久保田氏とともに候補者をリストアップした。

まず、理事会企画OSというからには、最近の理事経験者に先導していただくことがよいと考え、中でもこのテーマに最も適した井原郁夫氏にお願いすることを考えた。次に、JSME全体の協力体制を築くのがよさそうだと考えて、このテーマに関連のある部門や委員会からそれぞれお一人ずつに参画いただくことを考えた。さらに、国内の多くの学協会において学協会間の連携の必要性が認識され始めていたことから、日本非破壊検査協会に協力を依頼することを考えた。

各方面に打診したところすべての方から早々にご快諾いただき、ゼロからの出発にもかかわらず、わずか1カ月で9名(日本非破壊検査協会と土木学会からの委員各1名を含む)の企画チームが構成できたのは大変な幸運であった。これは、「インフラの健全性評価」というテーマに対して多くの部門や学協会が高い関心を持っていたからだと思う。さらに幸運なことに、この企画チームメンバーは幸いにも有力かつ熱心な方ばかりであって、その後の「学会横断テーマ」も同じメンバーで活動が継続されている。

2019年度年次大会

2019年度年次大会(秋田)では、理事会企画OS「機械・インフラの健全性評価」と公開パネルディスカッション「機械・インフラの健全性評価、その現状と展開」を企画した。詳細は、2020年2月の本誌特集(1)にまとめられているとおりである。

企画チームとしては行事の成否について少なからず不安を抱いていたが、優れたパネリストの方々のおかげで全くの杞憂に終わった。具体的には、OSの講演件数が53件にも達するとともに、パネルディスカッションにも想定をはるかに超える多数の参加者を得て活発な意見交換が行われ、3日間を通じたビッグイベントとなった。個人的には、他の企画に参加する余裕がないくらい盛況であったと思っている。

学会横断テーマの設定

2020年2月の本誌特集が発行されて安心していたところ、2020年度から新たに4つの学会横断テーマが設定され(2)、その一つとして井原氏をリーダーとする企画チームが2020年8月から活動を開始した。あいにくコロナ禍のために打合せはすべてオンラインで実施されたが、先の経験のおかげでメンバー間の協力体制が確立されていたため、議論はスムーズに進んだ。

まず、リーダーの井原氏から実にしっかりとした活動の狙いや3年間の全体計画が提案されるとともに、メンバーの中から年次大会と各部門行事との間の“キャッチボール”という秀逸なアイデアが提案された。それらは早速2020年12月の本誌(3)で報告された。特に、情報・知能・精密機器部門と生産システム部門では、“キャッチボール”の最初の試みとして、年次大会に先立つ部門講演会において関連企画が実施された。

2021年度年次大会

2021年度年次大会(千葉)については、議論が発散しないようにスコープを絞るのが効果的だと考えて、キーワードとして「DX」を選定するとともに、機械学会への要望を挙げていただくこととして、公開ワークショップ「機械・インフラの保守・保全、信頼性強化~DX社会は機械学会に何を望む?~」を企画した(4)

実際のところは、DXというキーワードが社会全体から広く注目を集めるものだったため、多種多様な話題がでてきた結果、当初の目論見に反して議論が発散してしまった感があった。それでも、どの部門もIoTやAIなどの技術の活用には大いに期待していること、とはいえ機械学会全体としてこの種の技術の活用を推進させるような取組みが不足していることなどが明らかとなった。なお、オンライン方式でのパネルディスカッションでは議論の活性化が難しく、進行役としてパネリストの方々には申し訳なく思った。

年次大会後は、前述の“キャッチボール”の一環として、複数の部門で関連企画を実施していただいた。この方法は、学会横断テーマや部門間連携の活動のための一手段として今後の発展の可能性が期待できるように感じた。

2022年度年次大会

2022年度年次大会(富山)では、機械学会において部門間連携の推進が望まれていることを踏まえて、この学会横断テーマを中心とした部門・学協会間の連携可能性を探ることを目標に掲げ、公開ワークショップ「機械・インフラの保守・保全、信頼性強化~部門連携・学会連携への期待~」を企画した。

幸いにも前年度よりも多くの部門・学協会の協力を得て、他の記事で紹介されているように充実した内容となった。それぞれの部門や学会ではこの学会横断テーマに関連のあるさまざまな活動が行われているものの、これまでは相互に具体的に知る機会は少なかったようで、この機会に相互理解が得られたことによって今後の連携推進への期待が膨らんだようである。パネルディスカッションにおいて活発にご発言くださったパネリストの方々には、この場を借りて厚く御礼申し上げる。

おわりに

以上に述べた活動を通じて、学会横断テーマ「機械・インフラの保守・保全と信頼性強化」については、多くの部門が強い関心を持っていること、および今後の連携が期待されていることが確認された。一方で、個々の部門はそれぞれが既に多くの行事を抱えており、連携を推進するためには何らかの工夫や新たな枠組みの構築が必要であることも認識された。また、他の学会(土木学会と日本非破壊検査協会)とは、テーマは共通であってもそれぞれの守備範囲が異なるからこそ、互いに刺激になるところが大きかった。

企画チームとしてはそろそろ2023年度年次大会に向けて検討を開始するべきところであるが、この学会横断テーマ活動をきっかけに新たな試みにチャレンジすることによって部門間連携が進み、ひいては機械学会全体がさらに発展することを期待する次第である。


参考文献

(1) 井原郁夫ほか,特集 機械・インフラの健全性評価の現状と展開, 日本機械学会誌, Vol.123, No.1215 (2020), pp.4-31.

(2) 新会長座談会「学会横断テーマ」が導く新しい学会の姿, 日本機械学会誌, Vol.123, No.1218 (2020), pp.2-4.

(3) 井原郁夫, 2020年度「学会横断テーマ」③機械・インフラの保守・保全と信頼性強化, 日本機械学会誌, Vol.123, No.1225 (2020), p.4.

(4) 井原郁夫, 2021年度「学会横断テーマ」機械・インフラの保守・保全と信頼性強化, 日本機械学会誌, Vol.124, No.1233 (2021), pp.18-19.


<フェロー>

井上 裕嗣

◎東京工業大学 工学院 機械系 教授

◎専門:材料力学、非破壊検査工学

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