一般社団法人 The Japan Society of Mechanical Engineers

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第86期会長就任のご挨拶

社会の公器としての日本機械学会

白鳥正樹[横浜国立大学 教授]
Masaki SHIRATORI


はじめに

21世紀(日本機械学会としては第2世紀)に入って私たちをとりまく環境は激変しています.冷戦の終了とグローバル競争時代の幕開け.ものづくりが経済的価値の中心にあった社会から知財が重視される社会へ.また従来の学術の体系を超えた,バイオ,ナノ,IT等先端分野への集中的な研究開発投資等.これら先端分野における重要な知財を握った国が,次の時代のビジネスを有利に展開できるという考えのもとに厳しい国際競争が繰り広げられております.一方でIT技術の進歩は国の内外におけるコミュニケーション環境,さらにはビジネスの環境を一変させてしまいました.

このような激変の時代にあって,産業界も国も大学も,大きな変革を迫られております.それぞれが大変に苦労して,新しい時代に対応すべく生みの苦しみを続けております.そして産,官,学の構成メンバーからなる学会も例外ではありません.激変の時代を生き抜いていくために,抜本的な変革を迫られています.

改革の継続

このような環境の中にあって,日本機械学会は第2世紀将来構想の下に年毎に改革を重ねて参りました.その中で私が理事会メンバーとして参加した直近の2年間を振り返ってみたいと思います.

第84期は笠木会長のリーダーシップの下,(1)学会の足腰の強化,(2)人材育成への貢献,(3)技術者集団としてのプレゼンス の3つの旗を掲げて現状の問題点の分析を行うと共に様々な改革が行われました.学会本部事業を強化するための機構,センターの設置,英文ジャーナルの発行,和文論文集における学術と技術の乖離を埋めるための方策,田口前会長による中核人材育成プログラムの推進,「機械の日,機械週間」の設定等が行われました.

第85期は斉藤会長の下,第84期の諸改革を継承すると共に,(1)会員シニア活用の推進,(2)正会員漸減対策,(3)標準規格事業に対する学会の取り組みの見直し,(4)倫理規定の改定,(5)理事会緊急タスクフォースの設置,(6)医工連携の推進 等の様々な取り組みが行われました.特に会員の動向については詳細な分析を行い,30代前半に大きな落ち込みがあること,また団塊の世代が定年退職の時期を迎えており,この世代の活力を学会につなぎ止める必要があること等が指摘され,その対策が講じられて参りました.

第86期の方針

第86期においてもこれら前任者によって始められた改革の旗を降ろすことなく粛々と継続していき,改革の成果が出るよう尽力していくことが重要であると考えております.具体的には,

1. 本部組織・活動の課題

第84期に,能力開発推進機構,産官学連携センター,標準規格センター,出版センター の4つの組織が設置され,活動しているが,活性化の達成状況,学会財務への貢献等の観点から今一度見直す必要がある.

2. 標準規格事業の推進

標準規格事業については,第85期政策財務審議会の答申に基づいて,学会のガバナンスおよび財政の健全化を確保しつつ積極的に推進していくことが求められている.このうち学会の社会貢献という意味からも大きな事業となっている発電用設備規格事業は,関連の産業界との話し合いも順調に進展しており,新たな枠組みの下に事業を推進していきたい.

3. 健全な財政の確立

健全な財政への第一歩は会員の増強にある.斉藤前会長が始められた会員シニアへのアプローチ,また技術士養成講座等30代前半の技術者にとって魅力ある事業の展開等をさらに推し進めていきたい.
また従来はつくれば売れた機械工学便覧が,今回は販売が思わしくなく大きな在庫の山となっている.出版センターを中心に部門,支部等の協力を得て,販売促進に全力を挙げていきたい.

4.情報システムへの対応

第84期と第85期にかけて学会IT業務の抜本的見直しを行い,会員業務,会計システム,ホームページ等の一元化をはかってきたが,今後さらに各種会員サービス事業,出版事業等に拡大していくために,学会事務のあり方も含めて再検討をしたい.

5. 学会のプレゼンス

第84期に設定された「機械の日,機械週間」の事業は,第85期には部門・支部の全面的な支援の下に全国展開し,大きな事業に発展してきました.これをさらに継続すると共に他の機械系学協会の協力も得て,国民的な行事へと展開していきたい.
一方第85期に110周年記念事業として行った「機械遺産」および「技術ロードマップ」は,マスコミ等でも取り上げられ大きな反響を呼んだ.これらの事業を継承しさらに発展させていきたい.

6. 公益法人制度改革への対応

公益法人制度の抜本的改革に関する「非営利法人法」が2006年6月に可決された.新法は2008年12月から施行(5年の移行期間)され,非営利法人へ移行することになっている.これを受けて本会は公益社団法人を目指すのか,あるいは一般社団法人として留まるのか慎重な対応を迫られている.本件については政策財務審議会において検討を行っていきたい.

7. 国際展開戦略

第84期から検討されてきた国際交流強化のための国際支部立ち上げに向けて,アジア地域内にある機械系学会と協力関係を強化しつつ,その第一歩を踏み出したい

おわりに

以上,第86期の方針について事業の継承という観点から個別に議論して参りました.これまでの歴代会長,理事会,部門,支部,そして事務局の尽力の下に学会のアクティビティが格段と増してきております.特に従来からの部門・支部活動に加えて標準規格事業,中核人材育成等の受託事業,JABEE,計算力学,状態監視等の資格認証事業,さらには「機械の日・機械週間」,「機械遺産」,「技術ロードマップ」等の事業は,学会の枠を超えて一般の社会からも高く評価される事業として育ってきております.

日本機械学会は当初機械工学を志す人たちの情報交換の場としてスタート致しました.したがってこれまでは機械の研究者・技術者が相互に交流する閉じた集団として,社会に発信する機能が比較的弱かったようにおもいます.第2世紀に入って以降の一連の改革は,学会の社会に果たす役割を自覚して,これまでより一層社会に発信していこうとの試みであったということもできましょう.学会の果たす役割が社会から評価されてこそ学会のステータスも上がり,学会員であることの誇りと名誉が満たされ,ひいては給与にまで反映される日も来るのではないでしょうか.そのような日が来ることを夢見て今期は表題のような大きな旗を掲げさせていただきました.