一般社団法人 The Japan Society of Mechanical Engineers

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第91期会長就任のご挨拶

学会の知を活用し社会と共に活動する

矢部 彰[(独)産業技術総合研究所 理事]
Akira YABE


第91期の会長を務めさせていただきます矢部彰でございます.日本機械学会は,創立116年目を迎えておりますが,長い歴史と実績のある日本機械学会の会長という重要な役割を務めさせていただきますことは,身が引き締まる思いでございます.現在は,環境・エネルギー問題への社会をけん引する取り組みや,ものづくり・価値づくりの高度化革新など,日本や世界を取り巻く多くの重要課題を抱えております.また,技術に対する社会の信頼を一歩一歩回復させていくという大きな課題にも,着実に取り組むことが期待されております.日本機械学会は,その英知を結集して,イノベーション革新を実現するべく,社会と共に活動していきたいと思います.今年度,特に重点を置きたい活動として,以下の3点を挙げさせていただきます.

<学会の生み出す知を活用して社会と共に積極的に活動します>

―技術ニーズとシーズの交流強化による学会内外の連携強化と機械工学の役割強化―

(1)社会ニーズの学会への伝達機会の増大に努めます.現在の技術の特徴は,動的に変化し,しかも,世界的な競争状態にいつもさらされていることにあると思われます.このような状況において,解決されるべき重要な研究開発課題が何であるのか,何を解決してほしいのかを技術ニーズとして,日本機械学会会員に伝達する機会を増大させたいと思います.また,機械工学の最前線に関するレビュー講演等も実施し,この活動を,年次大会をより魅力的な内容に充実させる形で実現してゆきます.

(2)部門間の共同企画の斡旋,部門間協力の推進に努めます.部門の枠を越えていくつかの部門が協力することにより,より魅力的な企画の講演会等が生まれると期待できます.このような部門間の共同企画を斡旋すると共に,講演会のカップリングを促進し,部門間協力を推進します.

(3)産学官の英知を集めたプロジェクト作成活動を推進します.部門を越えた多くの専門家が集まって,秘密保持に該当しない範囲で,日本機械学会の英知を集め,学問的な見地から挑戦すべき技術課題にまとめ上げ,国プロの提案や外部資金の獲得を目指します.

<ものづくりの経験と知恵を未来につなぐ人と活動を大切にします>

―シニア世代の活躍の場の全国の支部への設置とシニア世代に期待される活動の明確化―

(1)講師としての活動を推進します.学生や若手世代,また,機械工学の基礎知識・専門技能を身につけたい人達への教育の実施.さらに,技術を社会にわかりやすく説明する役割や子供の理科離れを防ぐ活動,技術士を目指す人達への指導講座の実施を推進します.

(2)技術課題へのソリューション提供活動を推進します.中小企業の技術課題へのソリューシション提供活動を推進し,中小企業への貢献を図ります.また,中小企業との人材マッチング活動を通した斡旋,人材派遣戦略.さらには,多くの専門家のネットワークを活用するソリューション提供を目指します.

(3)国際標準や標準認定活動を推進します.国際標準推進活動,また,標準に基づく認定・認証事業活動への貢献を目指します.

<東日本大震災の教訓を新たな技術研究開発に生かします>

―東日本大震災の教訓を踏まえた活動の本格化―

(1)リスクを考慮しながら技術を受け入れる社会を目指し,リスクコミュニケーションを推進します.東日本大震災の教訓を生かし,社会に対する技術の信頼を一歩一歩回復する活動を推進します.そのためには,技術のメリット,デメリット等をわかりやすく説明し,社会に受け入れられる技術となりうるよう努力します.特に,あらゆる技術がリスクを持つことから,リスクを考慮しながら技術を受け入れる社会を目指し,リスクコミュニケーションを推進し,広い意味での広報活動を積極的に推進します.特に,ハードに関する議論だけでなく,ソフトに関する議論も推進します.

(2)技術を社会が受け入れるために整備する法律体系を議論する「法工学」の現状と課題について,講習会活動等を通して社会に情報発信します.技術の持つリスクの問題等も含めて,「法工学」に関する現状と課題を社会に発信する活動を,法工学専門会議の方々を中心に推進します.

(3)学会から社会にユニークボイスを発信することを目指します.東日本大震災に関する検討委員会等では,長い時間をかけて検討してきましたので,その結論部分等を学会からの社会への発信となるように,学会規定に従って手続きを進め,日本機械学会からのユニークボイスとして社会への発信を実現するべく努力します.これにより,学会から社会への発信を増やし,社会と共に活動する日本機械学会の姿勢を確立すると共に,理事会や部門協議会,支部協議会の議論を踏まえた一体感の醸成を図ります.

<日本機械学会のさらなる革新を実現するべく皆さんの英知を結集しましょう>

上記の3つの重点を置くべき活動と共に,今期には推進するべき重要な課題が数多く存在します.まず,新たに再編される英文・和文論文集を,実際に発行する活動が今期中に開始されます.世界を牽引する立派な論文集となるように,かつ,多くの方が投稿したくなるような魅力をより増すように,会員全体で作り上げていきたいと思います.

また,基盤となる活動として,学会の財政状況の改善に向けて,学会財政の分析をより詳細に実施すると共に,経費節約を意識して,多くの活動の見直しや改善提案を,事務職員や担当役員,活動に関連する学会員等で実施していきます.特に,学会全体の運営等に関して,以下の方策を検討し実施することを目指します.

(1)論文集の改革を通して,和文論文,英文論文共に,投稿数の増大を図ります.また,掲載料を上げることによる財政の改善を目指します.

(2)WEB広告,計測関係の広告などの拡大を図り,広告料の増大を図ります.

(3)新規出版物の価格設定の検討,また,本の販売強化,バックナンバーの販売方法の検討を通して,出版事業の収益事業化を目指します.

(4)会員のメリットをより明確にすることにより,企業会員を増大させる工夫を実施します.

(5)メールやWEBをより一層活用して,国際会議や講演会の参加者を増やす努力をします.

(6)社会ニーズを反映する課題への取り組みや学会の活動強化を通して,研究協力部会や受託事業の拡大を目指します.

最後に,金子成彦会長をはじめ,前期の理事会,支部,部門,また,多くの委員会の委員の皆様の多大なご努力に深く感謝申し上げます.今期も,皆様のお力をいただきながら渾身の努力をしてまいる覚悟でございますので,日本機械学会に対するますますのご指導・ご鞭撻・ご助力を賜りますよう,どうぞよろしくお願い申し上げます.

(2013年4月19日 定時社員総会あいさつより)