法工学実務セミナー(第7回) シリーズ「安全・安心なものづくりと法律」(全4回) 第3回 安全・安心の技術に向けた法律の仕組
【趣 旨】
安全・安心な機械を設計し,製造することは機械技術者が果たすべき当然の責任であろう.しかし,現実には,機械の使用に伴う事故が発生し,ときには,尊い命が失われることもある.このような場合に,誰がどのような法的な責任を問われるのだろうか.そもそも,法的な責任とは何だろうか.本来,機械の設計や製造に携わる技術者はこうした問題に無関心であってはならないはずである.また,機械技術者が設計や製造に携わるにあたって守るべき法律にはどのようなものがあるのだろうか.そのような法律はどのような考え方に基づいているのだろうか.人々に法律を守らせる仕組はどのようになっているのだろうか.機械技術者はこうした基本的なことを知らないままに,法律に従うことは所与の条件であると考えているのではないだろうか.今回の企画は機械技術者が法律に対して抱いているさまざまな疑問に答えることを目的としている.全4回で完結するが,各回のテーマは独立しているので,興味のあるテーマだけを聞いて頂いてもよい.
【講演要旨】
機械や構造物の安全性を確保するために,法律はどのようなアプローチをとっているのだろうか.企業や技術者の良心によって安全・安心が確保できるのであれば,法律は技術の生み出す危険に無関心であっても不都合はない.しかし,経験は現実の社会がそのようなユートピアではないことを教えている.企業の社会的責任(CSR)や技術者倫理の重要性が叫ばれる昨今であるが,残念ながら,法律の関与がなくても人々が技術の生み出す機械や構造物が安全・安心であることが自然に保証されるという理想社会は到来していない.したがって,法律の持つ強制力を利用して,企業や技術者の行動を規制して技術を安全・安心な方向にし向ける必要性が存在する.シリーズ第3回の講演は,法律が技術の安全・安心に関与する場合の考え方を整理することにより,法律と技術の望ましい関係を考える基礎を提供する.
【講 師】
近藤惠嗣
弁護士・工学博士(福田・近藤法律事務所)
日本機械学会 法工学専門会議・前運営委員長