法工学実務セミナー(第6回) シリーズ「安全・安心なものづくりと法律」(全4回) 第2回 機械設計と法律による規格・基準
安全・安心な機械を設計し,製造することは機械技術者が果たすべき当然の責任であろう.しかし,現実には,機械の使用に伴う事故が発生し,ときには,尊い命が失われることもある.このような場合に,誰がどのような法的な責任を問われるのだろうか.そもそも,法的な責任とは何だろうか.本来,機械の設計や製造に携わる技術者はこうした問題に無関心であってはならないはずである.また,機械技術者が設計や製造に携わるにあたって守るべき法律にはどのようなものがあるのだろうか.そのような法律はどのような考え方に基づいているのだろうか.人々に法律を守らせる仕組はどのようになっているのだろうか.機械技術者はこうした基本的なことを知らないままに,法律に従うことは所与の条件であると考えているのではないだろうか.今回の企画は機械技術者が法律に対して抱いているさまざまな疑問に答えることを目的としている.全4回で完結するが,各回のテーマは独立しているので,興味のあるテーマだけを聞いて頂いてもよい.
【講演要旨】
機械技術者が機械や構造物を設計する際,法律によって定められている規格や基準がある.機械技術者は,これらの規格・基準を設計にあたって守らなければならない所与の条件として認識している.規格・基準が時代遅れであったり,不合理な根拠に基づいていたりすると,設計の自由が制約され,合理的な設計が阻害されることもあり得る.また,設計者は,基準・規格を守ってさえいればよいという安易な気持ちになることもあり得る.しかし,規格・基準を守ることは,それ自体が目的ではない.法律が規格・基準を定めるのはなぜか,それらはどのようにして強制されているのか,基本的な考え方を理解すれば,機械技術者が規格・基準に対して持つ疑問や不満を解決する糸口がつかめるはずである.シリーズ第2回の講演は,規格・基準を定める法律の考え方を解説する.
【講師】
近藤惠嗣
弁護士・工学博士(福田・近藤法律事務所)
日本機械学会 法工学専門会議・前運営委員長